■90 七芒星
今日は、アスタロト公爵家の屋敷に赴いていた。
「ありがとうございました、ランディさん」
「いいや、こんな事は朝飯前だよ」
以前、頼みごとをしていたのだ。貴族になりたての私には、この手のものは全然分からない状態だったので、本当に助かった。
「それで、何があったんだ」
何があったか、それは聖夜祭のパーティーの事だ。聖宮で、紫の光を放つ陣を展開していたあの人物。錬成陣強制解除が出来なかった。
「七芒星でした」
「えっ……!?」
基本的には、錬成陣は六芒星で魔法陣は五芒星。七芒星なんて見たことがない。
それに、〝彼〟は自身の事を〝兄弟子〟と言った。兄弟子だなんて存在自体が知らなかったから、私がお師匠様に出会う前にいた人物だという事か。
そしたら、錬金術に対しての腕は立つはず。なのに、あれは錬金術ではなかった。私の知らないジャンルのものか、それかもしかしたら自分で作り出したか。長い長い年月を掛ければ、そんなに凄い人なら可能かもしれない。
何とも、興味を引くものだ。彼が発したあの言葉も私の知らない言語だったし……
私達は、ガイアの加護があるからこそ錬金術を使うことが出来る。じゃあ、あの力の使用条件は何なのだろうか。
彼が去ったあと、あの空間は何かが変わっていた。私が入った時に感じた……自然エネルギーとでも言っておこうか。それを感じられなかったのだ。どうやってエネルギーを吸収させたのだろうか。あぁいや、これは仮定でしかないが。
……あれ、そういえば……あの時感じたものは何だったのだろうか。
聖宮で何かが起きていると、感じたアレは……
それに、結界が張られていた為最初は入れなかったのにいきなり入ることが出来た。私、何もしてなかったはずなのに……?
あの人物が私を呼んだのか? じゃあ何で?
謎が多すぎるな……全然情報が足りなくて仮定しか立てられない。
その時、大賢者であるメルディアースさんとのあの会話を思い出した。
『これって……』
『____憎悪』
『ぞう、お……』
『ちと、最近悪戯がすぎる狐がいてのぅ。後でお灸を据えてやらねばな。全く、押し付けられて困っているというのに、あの狸め』
__最近悪戯がすぎる狐。
__憎悪。
ふと、とある名前が浮かび上がった。
〝アズライト〟
あの憎悪の塊である水晶を作り出し、ジョシュに強制的に錬成をさせる陣を刻んだ。
あの兄弟子と名乗った男が、アズライトだとしたら……いや、まだ断定はできない。
それに、彼と会った時憎悪を感じなかった。
「ステファニー殿?」
「え? あぁ、いえ」
何か気になった? と聞かれて、いいえと答えた。これは憶測でしかないからだ。それに、きっとアスタロト家当主であるランディさんならこの事は知っているはずだ。
「__紫?」
「ん?」
紫……紫……どこかで見た様な……駄目だ、思い出せないな。こう750年も生きてると忘れる事も沢山あるな。全部紙に書いて本にしてしまおうか。錬金術に関してはほぼ全部覚えているのだけれど……他がどうにもならない。
「……やばいな、ボケが始まったか」
「ククッ、ステファニー殿?」
「あっ……」
やば、口に出てた。
そんな時、この部屋にスティーブンが入ってきて私に近づいてきた。何かあったの? と聞くと、一言。
「始まりました」
「……え、ほんと!?」
「はい」
まじか、え、あと数日後だって言ってたよね!?
「す、すみません急用が出来てしまったので失礼しますね!!」
「気にしないさ、早く彼女の元へ行ってあげなさい」
あはは、流石です。まぁ、私も色々話してしまったし。
「じゃあ、次は陛下主催のパーティーで」
「あぁ、また」
私は、アスタロト邸を後にして一足先にルシルで自分の領地に急いだのだった。
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