支倉凍砂「ワールドエンドエコノミカ」
これほど完成された、金融経済を題材にしたライトノベルは存在するだろうか――?
それは、月面という最先端を行く摩天楼の街で、人々がさらなる繁栄を目指す時代。
少年、ハルもまた、さらなる最先端を夢見て、魔の領域「株式市場」へと足を踏み入れていた。
大金が常に動き回り、その流れで端金が大金に、あるいは大金が塵のようにすりつぶされる。
欲望が渦巻く世界で、彼は貪欲に金を稼いでいたが、寝床にしていたネットカフェを追い出され、店員の紹介である教会に身を寄せることとなる。一人の女性が切り盛りする、孤児院のような教会。
そこにいたのは、長い黒髪の天才少女、ハガナ――。
彼女が紐解く数学の神秘と、ハルの株式市場の知識が共鳴するとき、月面株式市場を揺るがす出来事へと繋がっていく――。
「狼と香辛料」シリーズや「マグダラに眠れ」シリーズで有名な支倉凍砂氏。
著者は金で金を生み、金を増やす交易や市場――いわば、錬金術に関しての造詣が深く、またそれらを分かりやすく描写する。この作品は、金融経済における作品である。
素直になれない少年少女の気持ち。月面都市での生活や世俗、風俗。人と人との思いやり、出会い。
それらを通じて、少年ハルは成長しながら、徐々に信念を以て、金融経済の海に挑んでいくようになる。
初心者にも分かりやすい、金融の流れを説明し、落とし穴なども物語の流れに沿って解説する。
ここまで分かりやすい、経済小説はあるのだろうか? そう思えるほどに、親切だ。
そして、ハルたちは金を失い、挫折しかけることもあるが、それでも彼らはやめられない。
仮に、世界が終わるとしても、彼らは金勘定をやめることはできないだろう。
これは、そんな経済ジャンキーたちの、栄枯盛衰の物語だ。
余談ではあるが、この小説、かなり分厚い。
鈍器までは行かないが、持ち運ぶ際はくれぐれもご注意願いたい。




