1-5
「カルネミアはもともと漁場が集まる港町なんです。なので船乗りのためのホテルがたくさんあって。ホテル業も盛り上がっていたんです」
「だった、って今は違うの? 外では資源が豊富で漁業も盛んだって聞いてきたけど」
歩きながらぽつぽつと語るナズナは先ほどまでの威勢はどこへ行ったのか、静かに絞り出すかのように言葉を紡いでいた。区切りがつくところでカルムは自分の言葉を返す。
「いえ、いまでも一部のホテルはかなりの儲けを出しているみたいです。港に近いサンナミホテルなんかは、いつも満室で。立地もいいですし、大道芸人や旅人に対してのフォローもいいらしくて。ただ、町外れにサーカス団の野営地が出来た影響で、そこにホテル建設の計画が立って。この町まで人が流れなくなったんです」
「へぇ。随分詳しいんだね?」
「……着きました」
ナズナが足を止めた先にそびえるのは、ツタが張り巡らされ窓ガラスは曇りを残す四階建ての不気味という言葉が似合う建物。数室、窓から光が漏れているがそれでも暗さが勝っている。
「ここは……」
「私の実家であり、私の父である支配人ダズリンが所有している……ホテルマジェスティックです」
入口である大きなガラス戸を前にナズナはカルムへと向き直り、にっこりとした作り物の笑顔を向ける。
「ようこそ、お越しくださいました」




