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仮面のカルム  作者: 晴埜あこ
仮面のカルムは宵闇に踊る

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3/9

1-3

 港町であるカルネミアはここジャムアルータ大陸の南に位置した小さな町だ。海と山に面した土地は資源が豊富で、少し行くと魔法石が採れると有名なプフー採掘場にたどり着く。

 カルネミアを統治しているのはミナメリアという大陸内では比較的新しい国だった。国土は小さくとも観光業が盛んで、大道芸人たちはこぞって訪れ賑わいを見せている。


 カルムがプフー採掘場からカルネミアに入ったころには辺りはすっかり暗くなっていた。にもかかわらず、路上には何かしらの催しをしている人々や、不可思議な装いの路面店が点在していて賑やかだ。

 

 少し気分も高揚していたカルムは鼻歌まじりに散策をすることにした。見たこともないものから、見知ったものまで、すべてがカルムの感性を刺激する。

 

「ん……?」

 

 大きな通りに差し掛かった時、カルムは路地裏でなにやら揉めている声を捉えた。少し建物の影を見やると、大柄な男二人組とそこに似つかわしくない少女の姿があった。少女はなにやら腕に抱えて、男二人組に睨みを利かせている。

 

「やめてください! それ以上近づくと……」

「近づくと何だいお嬢ちゃん?」

「この時間帯は警備もいないよ? その手にあるものを渡してくれたらいいんだ」

「だめです! これはうちの……大事な商品です!」

 

 その大柄な男二人が近づくと、少女はすっぽり陰に隠れてしまい聞こえるのは若干震えた声だけだ。どうやら男二人はしつこく少女に迫っているようで、少女に危害が加えられるのも時間の問題に見える。

 しばらく傍観していたカルムだったが、一瞬男二人の隙間から見えた少女の腕の中に輝く物を見つけ、踵を返して駆け寄ることにした。

 

「やぁやぁ、お二人さん。こんなところで悪趣味な声掛けしてどうしたの?」

「あぁ⁉︎ なんだテメェは!」

「ここはガキの出てくるところじゃねぇぞ!」

「はは、お手本みたいな返答だね」


 へらへらとにやつくカルムに、男二人は苛立ちを隠せない様子で食って掛かる。

 そんな様子を気にもせず、カルムは少女へと目線を向けた。こんな時間に出歩くのには不釣り合いな、まだあどけなさが残る顔立ちの少女はカルムに対しても不信感を向けている。

 

「や! 君、困ってる?」

「……!」


 いきなり話しかけてきたカルムにさらに怪訝そうな顔をする少女。一瞬呼吸を飲み込んだ彼女は、もう一度今度は真っ直ぐにカルムを凝視した。それを確認してから、サングラスの奥の瞳をキューっと細めて再度カルムは問いかけた。


「ね、困ってる?」

「……っ。困ってます! 助けてください!」

「よしきた」


 少女が叫び返すと同時に、カルムの左脚が空を舞って大柄な男の一人をなぎ倒した。呆然と見ていたもう一人の男を、左脚を回し蹴りした反動に任せて役割を引き継いだ右脚がこちらもなぎ倒した。男たち二人は声にならない音を喉から吐き出して地面に伏す形となった。

 カルムの両脚は男二人それぞれの喉仏を的確に狙って落としていたので、一気に呼吸がしにくくなった男二人は悶絶して地面を掻いている。


「さぁて、逃げるよ!」

「えっ、ちょ、ちょっと!」


 悶絶する男二人を横目に、カルムは少女をひょいと抱き上げてすたこらと走り出した。少女は抵抗するも腕に抱えた物たちのおかげでうまく動きが取れない。それなりに何かを抱えている少女だったが、カルムにとってそれはとても軽すぎた。



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