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美由利は息を静かに吐いた。
「私は、和真君には幸せでいてほしい。」
そこに私がいなくても…。
「公爵達の話からすると、私の家の魂が原因でこの世界に転移してしまって転移する時にたまたま傍にいた和真君を巻き込んでこの世界に来たということだよね。」
「勝手に巻きこんでおいて挙げ句、散々助けてもらうというね。」呟くように淡々と話した。
「…申し訳なさしかないよ、ホントにごめんね。私のせいだよ。大変な思いをさせてしまって…。」
「更に、私にはこの家と縛られている制約印まであるんだよ!」鎖骨下の制約印をトントンと触る。
「ここから自由に出ることも出来ない。そんな縛られた生活を。大切な人も一緒に縛ってしまうのは嫌なんだよ!不自由な生活を強いるのは辛い。」
(…。きちんと伝わったかな。私だって本音を言えば離れたくない…。)
同じ目線で眼鏡の奥の黒い瞳をジィッと見つめる。
すると、そぉっと…、心なしかおそるおそる手を伸ばしてきた。
制約印に触れている手に大きな手を重ねてきた。
手が熱い…、重ね合わされた部分が熱くパアッと輝いた。
手に指が絡み合い、そのまま下に下ろされた。
…!!!。先程まであった制約印が跡形もなく消えている。
何故、すごい…。この国の高位神官が決して解くことの出来ない印を厳重に施した筈なのに。
えー、、とじゃっさっきまでの話はなし?帳消し?ずっと悩んでいて一大決心して伝えた別れ話は?
「えっ?これっ。こんなに簡単に?制約印を解いてくれたの?」
和真君は何故だか少しシュンとし、コクンと頷いた。
なんだかよくわからないけれどすごい事をしてくれたね!
あっ、驚きすぎて忘れていたけれど印を解いてくれたのだ、きちんとお礼は言わなくちゃ。
「和真君!ありがとう。すごく嬉しい!ありがとう。」
♢♢
また、いつもの屈託のないなんの疑いもない、人を責めることもしない、花が満開に咲いたような笑顔が降り注ぐ。
こんなに簡単に解けるのなら何故すぐに解かなかった?などとは言わないんだろうね、絶対に責めない…。こんなに本人を苦しませ悩ませた元凶を今の今まで取り除かなかったのに…。
小さな世界に閉じ込めて、頼れるのは俺だけと。束の間でも酔いしれたかった。
その間に彼女を苦ませ自分を責めさせた。
その結果、彼女抜きの俺の最善の幸せを考えていたのだ。一番幸せとはかけ離れた決断をしていた。
制約印を解かなかったのは、俺のただのエゴだ。ここまで引き伸ばしてしまっていたのに。
俺の邪な心には全く気付かないだろう、とても優しい人だから。
自分の事よりも俺の幸せを考える人だから。
目を反らし謝罪する。「ごめんね…。」
(…、何故謝るの?凄いことしてくれたのに。)
「これだけは言わせて。お嬢様が気にしてた、この世界に俺を道連れにしたって事。」
「そもそもは、俺の体調不良で肩を貸してくれた。そこにトラックが突っ込んできたんだ。だから、巻き込んだのは……。俺だよ。もしその時お嬢様といなかったら俺は…。トラックにひかれ死んでいたと思う。」
「むしろ、転移し命を与えてくれたんだよ。万能な力と共にね。」
「俺は…。お嬢様抜きでの幸せなんて考えられない…、ないよ、そんなもの。」
顔を上げ公爵子息が身に付けていたブローチのような綺麗なサファイアブルーの瞳をすがるように見つめた。
少しでも自分達の意に反する事をすると見放す両親の顔が脳裏に浮かぶ。
俺を突き放さないで…。
俺がつまらない男だと気付いたとしても。
♢♢
公爵の話を反芻し必死に訴える。繋ぎ止めるために。すごく必死に。「そもそも、中条さんに好意的でなければ、ここにはついて来られなかった…。」
俺が話している時一字一句を受け止め考えながら聞いてくれている。
♢♢♢
一通り話し終えると…。
強くしっかりと「和真君…いいの?」
私で?見知らぬ世界に来させてしまって。
♢♢♢
黒髪に眼鏡の美しい彼が、コクンと頷くのを確認すると、私は壁に付いていた男らしい手をそっと外し、頭に自らの手をおき、そーっと床に和真を寝かした。我ながら素早く力強い力が出た。火事場のくそ力か。
『壁ドンから、床ドン』に切り替えたのだ。
「そんなに言って。一生…離さないよ?」
いいの?私で。あなたは望んで私と共にいるということを、そんなに私に必死に訴えてくるものだから。
和真君…。私は心の思うままに普段はされるばかりのキスを自分からした。耳まで赤くなっている私の大切な人にいつもより長く深いキスをした。
♢♢♢♢♢
その日の残りの時間…。和真君は一時も私を離そうとしなかった。ひょいと、軽々しく私を抱き上げ食堂に行き、私に温かい食事を食べさせてくれた…。
流石にお風呂は一人で入らせてもらった。チラチラと私を何度も見て、残念そうにしていたけれど。
その後は私の部屋の小さなベッドで2人で寝た。
寝る前に、左の薬指にキスを落とされる、
和真君は眼鏡を外し前髪も下ろしている。色気がダイレクトにこちらに向かってきた。
「大丈夫。結婚するまでは我慢します。」
ベッドの上できっちりと正座をしてそう言っていた。
だから、行為はなかった…。けど。
逆に行為以外の事は全てされてしまったかもしれない。
和真君も初めてって、言っていたのに。あんな事やこんな事まで。なんであんなに器用に。なんで私の感じてしまう箇所を私よりも知っているの?
あらゆる箇所にキスをされた。吸われたり舐められたり。あんまりにも沢山するので、私も反撃とばかりに思わず首筋をチュッとした。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
小さな家の小さなベッドで寄り添うように…2人で。
辺りは明るくなり鳥のさえずりが聞こえてくる。
隣で眠る金髪に透き通るような白い肌の可愛らしい人を見つめる。
すやすやと寝ている。今日は、悪夢を見てないようだ。ホッと胸を撫で下ろす。昨夜は今までの募りに募った想いを、つい出し過ぎてしまったから。
首筋に…。胸に…。俺の付けた紅い印がいくつもあった。そこを愛おしそうに優しく確かめるように指で触っていく。
自分の首筋をそっと触り、愛する人が付けてくれた印に触れた。
♢♢♢♢♢
それから数日後。
サルベニア王国では大国の王族を招いたパーティーが始まろうとしていた。
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