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王城では多くの従者達が忙しなく、しかし細やかにパーティーの準備をしていた。
何せ今日は、ここサルベニア王国の友好国。
自国よりも格上の大国。ニルス大国の王族達たのパーティーがあるのだ。些細な事でも気を遣い準備をしなければならない。
会場に所々に飾られた花の産地は二国の花だ。様々な花が融合し美しく華やかに彩っている。
隅から隅まで些細なことにも気を配る。失敗があっては事と次第によってはこの国の将来を揺らがす事にもなるだろう。
特にニルス大国は、ある国と戦争中だ。
こんな時こそ友好国である我が国との確固たる関係性を確かめる意味では、今日のパーティーは重大なものの一つであろう。
♢♢♢
フフフ~ン。マントルが鏡の前で上機嫌だ。
この日のためにあつらえた衣装を身に纏うと自然と鼻歌も出るものだ。
燃えるようなまっ赤な上質なシルクの衣装。婚約者の聖女ラーナと揃いだ。
誰もが思わず振り返る。注目するとても華やかな衣装だ。
赤は良い。この赤は特に。内から涌き出る闘争心を感じる。
このパーティーを機に次期国王という地位を確固たるものにするのだ。
「ハハハハハハ。」鏡の前でのけぞり笑う。
サプライズで密かにワインも用意した。完璧だ。
舞台は全て整ったのだ。満足げに高らかに笑うのであった。
刻一刻と破滅に近づいているとも知らずに…。
♢♢♢
錚々たる面々が揃い煌びやかで厳かではあるが和やかなパーティーが開催されていた。
もてなしの意味もありニルス大国の王子は主催者側の女性達と次々とダンスを踊っていた。
そして…。マントルがニルス大国の王と話している時、ラーナは大国の王子とダンスを踊っていた。
ここぞととばかりに王子にあらゆる女の武器を使う。
艶かしい目線に必要以上に王子に体を密着させる。特に赤いドレスから覗く豊満な胸を強調させて…。
「ウフフ。あなたの事も。あなたの国も癒して差し上げますわよ。」この国の、この世界の貴重な聖女からの申し出に気を悪くする者はいないだろう。むしろ感謝し、すぐにでも妃に迎える程。それほどありがたい言葉なの。
相手の王子が瞳の奥で冷ややかな侮蔑の籠った眼差しを送っているとも気付かずに…。
ダンスが終了し、あろう事か当然のように2曲目のダンスも王子と踊ろうとした。
2曲以上のダンスは、妻や婚約者などの親しい間柄でなければ決して踊ることはない常識的なことである。
王子は優雅な所作でさらりとダンスの申し出を断った。
♢♢
それと同じ頃。…ラーナが身の程知らずにも王子に言い寄った挙げ句断られた頃。
マントルは父王に大叱責されていた。
今までは第一王子である為、ある程度目を瞑ってきた父王も今回の失態は到底許せれるものでなかった。
大国相手になんて事を…。いくら友好国であろうともとんでもない事をすればいつだって潰されるのだ。
父王は怒りのあまり手をワナワナさせた。
♢♢♢♢♢♢
ニルス大国は、数年前から戦争をしていた。隣国のユータラス国と。
その国のワインを。身に纏ったシルクを。自慢気に大国の王に見せびらかすように話し出した。「この国は豊かで素晴らしい技術を持った国です!!」とね。
しかも追い討ちをかけるように、マントルがパチンと指を鳴らすと1本のワインが現れそれを勧め出したのだ。
♢♢♢♢♢♢
父王は相手の王達に深く謝罪した。
そこからは早かった。
あまりにも不勉強で身勝手な2人は、今までの行いいもあり拘束され処罰を受けることとなった。
第一王子マントルは、廃嫡され薄暗く高くそびえ立つ薄気味悪い塔へと幽閉された。
一方、聖女ラーナは…。
拘束されたときには、ほとんど神聖力は残っていなかった。王はそれを知っていたが、今までの功績、特に荒ぶるドラゴンを封印したこともあり見逃していたのだ。…が、あまりにも素行が悪く、遂には大国の王子、婚約者のいる王子を色仕掛けで唆そうとする。
今回ばかりは、許されることではなかった。
ラーナは、娼館送りとなった。
逃げ出すことが決してできぬように足の腱を切られて…。四六時中男の相手をさせられる。聖女が嫌っていた男であろうとも。
力がほぼない聖女は、無論切られた腱を治すことも出来ず、一生を娼館で暮らすことになるであろう。
2人ともどんなに叫んでも、もがいても、そこからは一生出られないのだ。
♢♢♢♢♢♢
パーティーの日。一連の騒動を遠巻きで見ていたのはこの国の第二王子アリストであった。
とうとう兄上達は堕ちる所まで堕ちたようだ。人を蹴落とすことをいとわず、努力もせず高い位置に居座ろうとする、そんな2人だ。いつか破滅していくだろうと予想していたが…。
思ったよりもその時が早くきたようだ。
……しかし、一つ引っ掛かることがある。
あの不勉強で物の価値を理解していない兄が、どうしてあの国の物に目を付けたのであろうか?しかもよりによって、このタイミングで。一番触れてはならない相手に披露するという最悪の事をしてしまった。
あまりにもタイミングが良すぎやしないだろうか?
まるで誰かが裏で糸を引いていたかのようだ。
チラリと横目で、わが側近。ヘルズマン公爵子息ネリスを見た。
一瞬ではあったが、確かに口の端をあげニヤリと笑っていたのだ。
その瞬間、アリストの背筋がゾクリとした。
ネリスの後ろに恐ろしいとぐろを巻いた蛇が見えた気がした。
…。
ネリスが何らかの形で関わっていたのを確信した。
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パーティーから数か月が経ったある日のこと。
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制約印から解き放たれた美由利だが、2人で話し合いここでの豊かな暮らしを選び森の奥の小さな家に住んでいる。
♢♢
清々しい青空が広がっている。
今日は、この小さな家で、小さな結婚式が開かれる。
和真君と私の結婚式だ。
本当は式は挙げないつもりだったのだが、公爵夫妻の物凄い圧もあり式を挙げる事となったのだ。
今となっては式を挙げる事にしてとても良かったと思っている。
本当にこじんまりとした式なので招待したのは、公爵一家と物語の影響をほとんど受けなかった、所謂モブの令嬢達だけである。
結婚式というのは、今までお世話になった人たちに感謝の気持ちを伝えて心を込めてもてなすことが出来る良い機会だ。
朝早くから、私と和真君、それとヘルズマン公爵家から数人の従者が手伝いに来てくれて、結婚式の準備をしていた。
家で育てた野菜を使って作った料理、花の飾り付け等、着々としていく。大変だけれど楽しい一時だ。
「そろそろお嬢様。」と強制的にメイド達に花嫁支度をする為、連れ去られた。
メイド達がウェディングドレスの着替えを手伝ってくれる。
このウェディングドレスは代々公爵家で受け継がれているそうだ。綺麗に手入れされ手直しもされている。とても真心が伝わってくる。
着替えやメイク等完成すると、ドアのノックの音がし和真が入ってきた。
美由利を見た途端。あまりの幸せ、美しさに感動が押し寄せ、涙が流れる。
「生まれてきてくれてありがとう。」手をぎゅっと握られる。「和真君こそ生まれてきてくれてありがとう。」
式が始まる前というのに涙が出た。
♢♢
…ありがとう。かわいい。大好きだ、このまま式はやめてしまって一日中眺めていたい位だよ。
「和真君たら、フフ。」
あっ、声に出てたか。
「半分、本気です。」
♢♢
控え室を出る時に、さりげなく腕に青色のブレスレットを付けた。サムシングブルーだ、白く細い腕に良く似合う。高価なものではないが手作りしたブレスレットだ、気持ちはとてもこもっている。
そっと美由利を見ると、いつもの花が咲いたような満面の笑顔だ。
「和真君たら。もう、いつもやることが本当に。私を喜ばせ過ぎなんだよ。…。ありがとう。」
すごく喜んでくれた。
♢♢♢♢♢♢♢♢
式はアットホームで温かい物だった。
サンドイッチや、和真君の好きなハンバーグ、ヘルズマン公爵家伝統のアップルパイや、苺たっぷりのケーキ等。飲み物も幾つか用意した。勿論抹茶ラテも用意した。
この国の貴族の人の口に合うか心配だったけれど皆美味しそうに食べてくれた。
公爵夫婦は泣いてお祝いしてくれた。
驚いたのは公爵子息ネリスがそれを上回って泣いていた事だ。
それを見た周りの令嬢達がドキマギしていた。
普段は第二王子の冷酷な側近と称されている公爵子息が、妹の結婚式で人目をはばからず背景に薔薇の花が見える位に、麗しい姿で涙を流す。
そんな姿を目にすれば、キュンとするのも仕方のない事なのだ。
最後にサプライズで日本の歌を皆で歌ってくれた時は嬉しかった。この日の為に皆練習してくれたんだね…。
和真君は私の涙をハンカチで拭いてくれたけど、私も和真君の涙をハンカチで拭いた。
とても良い結婚式であった。
♢♢
式が終わり、皆を見送った後。
小さな家の前でベンチに座り、満面の星空を見ていた。
「和真君、今日はありがとう。とても良い式だったよ。」「それはこっちのセリフだよ。ありがとう。」
「それでね…。和真君、こんなにやってもらって何だけれど。」
「うん?」
「…。もう一つ和真君にしてもらいたいことがあるの!」私は思いきって言ってみた。ぎゅぅーっと大きな手に自分の手を重ねて力をいれた。
「うん、何でもやるよ。」キッパリと言う。この命有る限り俺の出来る全ての力で。
「じゃー、」
「名前で呼んで。」えっ…、思わぬ言葉にたじろく。
「いや、さすがに。さすがにさ。お嬢様はないと思うよ。」
「…。」
「今日から和真君の妻なんだからさ。」
ズキューンと心に響く。
「もう一度お願いします。」「えっ?」さっきの『妻』とても良かったです。
「今日から和真君の妻何だから…。」
「うん。」コクンと頷きモジモジと小さな声で「みぬ…、みゆ」あっ、噛んだかわいい。格好良くて、かわいくて最高だねっ。
和真君が真っ赤な顔でこちらを見る。
あ、声に出てたみたい、和真君の時々声に出してしまうのが移ったようだ。
普段攻めてくる人はこちらが攻めると弱いのだね。
「美由利…、さん。」
「愛してます。一生あなたの側にいます。」
辺りは暗いというのに、顔が赤くなっているのがわかる。
「和真君。」
美由利のいつもの花の咲いたような美しい笑顔だ。
いてもたってもいられなくなり、愛しい人を抱き上げた。
「今日の夜は特別だから……。覚悟してね。」
そういうと小さな家の中に入りパタンとドアを閉めた。
空には幾つかの流れ星が流れる…
♢♢♢♢♢♢
物語が終わった悪役令嬢は…。
森の奥の小さな家でで幸せを紡いでいくのであった。
お読み頂きありがとうございます!
全7話!いつもは短編執筆しておりますので短い連載ですがとても長く感じました。
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