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「いただきます。」
2人揃って、1日の始まりの食事を食べる。
(なんと、幸せなことだろうね。)
「美味しい。和真君のお味噌汁最高だよ。卵焼きもふんわりして甘くて美味しい。」
(幸せだ。)
和真はコクンと頷いた。
美百合の好きな食べ物、味つけ等は常に観察し把握しているのだ。
どれを食べたら、より良い「美味しい!」が聞けるのか抜かりなく日々観察しているのである。
そして、それを記録している。和真のチート級の能力の一つで、目の前に写し出されるスクリーンに保存しているのだ。
今日の最強の美味しいは、卵焼き……かな。
星五つだ。
フム、苺と同等だ。上出来だな。今日この日の卵焼きをいつでも再現出来るようにしよう。隠し味に蜂蜜を忘れてはならない。
チラリと美百合を見ると、和真の作った朝食を本当に美味しそうに幸せそうに食べてくれるのだ。
クスッ…。「可愛い。」
美百合が綺麗な青い瞳を真ん丸にさせてこちらを見てきた。
(あっ…。声に出てたか。)
にこりと微笑み青い瞳を見返すと、白い肌がみるみると、赤く染まっていく。
「もう…。和真君たらっ。もう……。」
いちいち甘い、甘すぎるんだよ。色気も凄いしさ。
心臓の音がうるさい。
真っ赤になりながらも、パクパクと食べた。
朝食を終え、洗い物や、部屋の掃除などを2人で手分けしてする。
掃除後、家の外に出る。畑を作り植物の種を撒いた。
2人で相談しながら少しずつ完成させていく。
無駄に魔法は使わずに、じっくりと作り上げていくのだ。
少しばかり植物の生育を助ける魔法だけかけておいた。
2人で作り上げていくものが、少しずつ増えていくのは良いことだ。
充実した時間である。穏やかで心地よい日常だ。
♢
美百合はふと、最近までのとんでもない日常を思い出した。
今とは全く違う生活であった。とても豪華で煌びやかな世界ではあったが、毎日のように婚約者の王子と浮気相手の聖女には因縁を付けられたり、嫌がらせをされたりして嫌な目に合わせられていた。
小さな嫌みも沢山言われた。
例えば、挨拶をすれば何かを企んでいると言われ、面倒くさくなって挨拶をしなかったら、礼儀知らずだの、冷たくて人を馬鹿にしたお高く止まった奴め!!
なんて言われたりしたっけな。
アイシャは、美しい金髪の巻き毛に、透き通るような白い肌。そして、少しつり目だが、綺麗な青い瞳だ。
THE・悪役令嬢と言う感じだが、とんでもなく美しい。
こんなに美しい人に、憎悪混じりの蔑んだ眼差しで嫌みや嫌がらせを毎日のようにするなんてさ。
私が転移する前もアイシャは、ずっとそのような仕打ちをされていたのだろう。
あんな2人に好き勝手やられてすごく嫌だっただろう。
そう……。逃げ出したい位には。
(私はトラックの事故がきっかけで、この世界に来てアイシャに転移してしまったのだが……。
元のアイシャは、馬車の事故に遭う瞬間だった。
アイシャの魂はそれがきっかけで、どこかにいってしまったのだろうか?)
(……元の世界の私はどうなってしまったのだろうか?和真君は、身体ごとこちらの世界に来たけれど、なぜ私は魂だけこちらに来てしまったのだろう。)
色々な考えが頭に次々と浮かんできたが、美百合は首をすくめ、小さく横に振った。
そんな美百合の姿を和真は横目でしっかりと見つめていた。
「お嬢様、休憩しよう。」
「うん、和真君。」
「何だかすごい良い畑になったね。和真君沢山耕してくれたもんね。ありがとう。」
「そお?良かった。」
2人でにこりと微笑み合う。
ルンルンと鼻歌交じりで、部屋に入っていく。
いつの間にかテーブルには、美百合の大好きな抹茶ラテとアップルパイが置いてあった。
「わー!和真君。いつの間に!ありがとう。
すごく美味しそう。私の大好物の最強のコラボレーションだよ。わーい。」
鼻をクンクンとし、目を爛々とさせルンルンと言いながら手を洗い、和真のエスコートにより椅子を引いてもらい席に着いた。
「お嬢様、待って。髪の毛整えるね。」
えっ。
返事をする間もなく、アイシャの髪の毛を手早く、しかしとても丁寧にとかす。
どぎまぎしながらも「あ、あ、あありがとう。」
「どういたしまして、お嬢様。」
低い声で耳元で囁く。
(あー、耳元で。恥ずかしい。そして、なんか指!和真君の指に、さりげなく私の髪の毛絡ませてなかった?)
♢♢
「どうぞ、食べて。」
美百合は、コクンと頷き充分冷めているであろう抹茶ラテをふーふーと更に冷ました。
そんな姿を見て和真はクスリッと笑った。それを見て美百合はまた恥ずかしくなった。
抹茶ラテをゴクリと一口飲む。甘くて美味しい抹茶の味だ。
「美味しい!」アップルパイも食べると、いつもの味だ。リンゴとシナモンの味が丁度良くとても美味しい。
中条家のアップルパイの味だ。元いた世界でもよく食べた。そしてこの世界に来て公爵家でも、よく食べていたスウィーツだ。
公爵家での暮らしは意外に心地の良いものであった。
反面、アイシャの家族とは、ゲームの効力か何かはわからないが、常にある一定の距離を取られていた気がする。
すごく冷たい態度を取られたわけてはないが、かといって美百合の両親のような感じでもなかった。
♢♢
休憩後は、各々やりたい事をすることにした。
和真は、魔法の特訓をするとの事で、美百合は読書をすることにした。
魔力量が非常に多く、既に数多もの魔法を自在に操れるというのに更に特訓をするとは、「頑張り屋さんだね、和真君は…。」
元いた世界でも非常に頭が良く生徒会長もしていた。
「すごいね。」
「いや、すごいのはお嬢様の方だよ。」
「え!私?」
自分を指差し、青い瞳を真ん丸にさせた。
和真が頷く。「今だって、こんな分厚い本。これは、この国の歴史書だね。」
「これは、好きだから読むだけだよ。」
「ふうん、そっか。」
「すごいね。」
じっと見つめる。
「すごいよ。」
美由利の頭をポンポンと撫でた。
♢
美百合は、語学や歴史に興味があり、それについてはとことん探究し学ぶのであった。
また、暗記も得意であった。
元いた世界でも文系は得意で学年のトップであった。
しかし、理系はそこそこ頑張って平均程度の成績であった。
一方の和真は何に対しても、ただひたすらに己の能力以上に頑張っていたのであった。
その為、学年総合で常にトップ集団にいたのだ。
2人は全く違うタイプであった。それ故に互いに尊敬し合うのである。
♢
和真は、また微笑み頭をポンポンと優しく撫でる。
♢
いくらゲームの補正があるといっても突然、アイシャに転移したにも関わらず立派にアイシャの役割を全うできたのは、美百合の優れた頭脳もあったからであろう。
(俺とは違ってね。俺は、転移した時にたまたまチート級の能力を得たから、何とか今まで乗り越えることが出来た。
愛しい人を守り抜くことが出来た。それだけの事だ。美百合のような自分自身の能力とは違うのだ。)
「お嬢様はすごいよ。」
「私は和真君のがすごい思うよ。前の世界の時から、ずっとすごい!」
美百合は真っ赤になりながらも、真っ直ぐに和真を見た。
「フフッありがとう。」
(可愛い、好きだ。)
♢♢
2人が穏やかな日常を過ごしていたある日の昼下がりの出来事であった。
おやつの時間である。
おやつは、抹茶ラテとアップルパイで、また美由百合は抹茶ラテをこれでもかという程フーフーと冷まし、それを愛おしそうに和真が見守っていた時であった。
(ん?)
和真が何かの異変に気がついた。
家の周りに張り巡らしてある魔方陣が反応したのだ。
(これは……。さほど悪い者達ではないが、一体何をしに来たんだ?)
和真はじっと玄関のドアを見つめた。
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