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第一話 アルタイル・至宝の在処を求めて②

 魔導十二至宝。それは魔術の世界に伝わる奇跡。

 十二の属性の至宝を一括りにしたときの名称だ。

 それらを全て手にした者はどのような願いも叶えられるほどの莫大な力を与えられるという説もあるが、実例もなく結局のところは不明。

 そんな伝説的なものを俺たちはある理由から追っているのだ。その理由はただひとつ。フィリアを救うためだ。とそれだけ言うと訳が分からないだろう。

 言い換えると至宝という聖遺物の驚異からフィリアを守るためにある。

 能力者はいずれ至宝に取り込まれる、即ち生贄にされる運命にある。

 と能力者であるフィリアの知識がそう語るのだった。

 スヴェンさんや俺が調べた過去の伝承からしても可能性がゼロとは言いきれない。むしろ可能性は高いと言えよう。

 そう思うのも、この二つが俺自身が過去に経験した事象と一致したからだ。

 であるならば、俺はこの恩人に何としてでも生きて幸せになってほしかったのだ。


「……はあ」

「どうしたんです、そのつまらなさそうな反応は。半年ぶりの活動なんです。もっと喜んでくれてもいいのですよ」


 そんなスヴェンさんにフィリアは言う。


「スヴェン。その言葉、また言っちゃう? 前も聞いたよ。ガセネタだった」


 フィリアの呆れたような仕草にスヴェンは力なく笑い、頬を掻く。


「その時は申し訳ありません。ですが今回はそうはいきませんよ。この情報が正しいと確信に至るまで二ヶ月、街の雑貨屋として潜入して時には得意の変装も駆使して街中で日々調査をしていたのですから」


 様々な雑貨が並べられた店内を見渡す。

 改めて見ても、これはプロと比較しても見劣りしないのではないだろうかと思えるほどの出来上がりだった。


「二ヶ月ね。その二ヶ月、力の入れどころを間違ってないよな……」

「ははは、売上げは順風満帆です。意外なくらいにね。活動資金の問題は一切なし、とまではいきませんがそれなりの稼ぎはできています。それにですよ。その甲斐あってアルタイルの研究員のひとりと友人になれましたから。そして巡り巡ってアルタイルの所長にアーネストくんを臨時研究員候補として推薦状を出してもらえたんです。ほら、頑張ったんですよ私」


 そう聞くと確かに信頼できそうな気がしなくもない。

 今の言葉に至宝の情報が一切含まれていなかったのはさておきだが。


「今までみたいに無駄な時間だったなーってことにならない根拠はあるの?」


 とフィリアは問い詰める。


「フィリアさん。この話題についてイライラしてしまうのもわかりますが、せめてもう少しだけでも柔らかな表現を。でないと私、泣いてしまいますよ」


 とスヴェンさんは微笑む。


「さてさて、ここに来てもらう前に連絡はしましたが、この地ウルクスに至宝が眠っていることは間違いないでしょう」

「その根拠は?」

「魔導十二至宝、それは魔術という人工物よりは土地という自然そのものに大きな関わりを持っていること。それが前回の失敗から見つけた私の考えです。このウルクスの地中には街全体を覆いつくすような魔力の脈があります。そしていくつかの魔力の溜まり場があり、さらに巨大な魔力の貯蔵庫が存在していました。それを詳しく調査していましたら、その脈の形がまるで水瓶座のような形状をしていることが分かったのです」

「水瓶座の形状? それがどうつながってくるの?」

「結論から言いますと、魔導十二至宝は天に輝く黄道十二星座の形状と密接な関わりがあったということです。私はウルクスに辿り着く直前にこの時代で唯一至宝が解放された現場を見ることができました。無属性の至宝が解放されたレイベルという街ですね。そこの魔力はもはや枯れ切っていましたが、慎重に魔力の痕跡を辿ってみたところ、あら不思議。なんとその魔力の脈はまるで黄道十二星座の一つ、双子座の形状だったのです。その中で最も魔力が溜まっていたであろう場所に向かいますと、そこには明らかに異質な神殿がありました。おそらく至宝はその場所に眠っていたのでしょう。そして話はこのウルクスに戻りますが、この地で最も魔力が溜まっている場所はどこか。それは魔術研究施設『アルタイル』の地中だったのです。そこに何か重要なものがあるとは思えませんか。期待大ですね。属性までは分かりませんでしたが、対応する星座が水瓶座であることと年中雪の季節ということを鑑みると水属性であることが期待できるのではないでしょうか」

「水属性、か」


 スヴェンさんが話している属性は十二種類ある。

 基本六属性である火、水、風、土、光、闇。高位四属性である幻、滅、毒、無。そして禁断二属性の空、時。そのうちの水属性。それがフィリアの能力者としての属性だ。


「フィリアはここにきて何か気配とか感じたか?」

「ううん。何にも」

「それは至宝が封印されているからでしょうね。レイベルから至宝を持ち出した何者かはおそらく至宝の封印を何かしらの方法で解除したのでしょう。これは調べても結局わかりませんでした」


 そして、スヴェンさんは一息つくと俺たちに訊ねる。

「どうですか? 不明点はいくつかあるものの、さすがに今回は無駄足にならなさそうでしょ?」


 自信ありげなスヴェンさんの言葉に俺たちは頷いた。


「ああ、今回はやりがいがありそうに思えてきたよ」

「ふふ、そうだね。スヴェン、お疲れ様」

「ありがとうございます二人とも。そんな反応をしてくれて、今まで頑張った甲斐がありましたよ。それでは――」


 とスヴェンさんはこほんと咳ばらいをしてから宣言する。


「改めて言わせていただきましょう。これからあなたたちは魔術研究施設『アルタイル』の臨時研究員として潜入していただきます。そこで至宝にまつわる情報を手に入れ、あなたたちの夢を叶えてください」



          ◇



 その後、俺たち三人で他愛もないやり取りをしていた時にチリンチリンと扉に付けられたベルが鳴り響く。


「――あの、失礼してもいいかしら。ていうか休業日に勝手に入ってよかったのかしら……」


 そこには正面の扉から恐る恐る入ってくる金色の髪の女性がいた。

 それに気付いたスヴェンさんが女性に話しかける。


「コルトちゃんじゃないですか。いらっしゃい」

「あら、いらしたのですね。こんにちはスヴェンさん」


 と手を振ってきたコルトと呼ばれた白衣の彼女。もしかしてこの人が俺たちを迎えに来た魔術研究施設『アルタイル』の研究者なのだろうか。

 彼女のことを知っているわけじゃないが、スヴェンさんが親しそうに話をしているのだ。少なくとも悪い人じゃないのだろう。


「いらっしゃいませー」


 と何故か店員さんみたいにフィリアも挨拶をする。


「ええ、おじゃまします」


 と何故か彼女も自然に返した。


「コルトちゃん。今日は休業日ですよ。どうしたんですか?」

「え? どうしたんですかって、スヴェンさんにも頼んでおいたあの件のことですよ」

「頼んでいた? ……ああ、あの事ですか。迎えに来てくれる人って君だったんですね。てっきり別に運転手を雇ってアーネストくんたちを連れていくものかと思っていましたよ」

「御冗談を。そんなことをするくらいなら、その資金は別の用途に回しますよ。ちなみにわたし、免許持ってますからね」


 ふふ、と笑うコルトさん。


「なあ。この人、スヴェンさんの知り合いか?」


 と俺はスヴェンさんに耳打ちした。


「ええ、そうですよ。先程話題に出させていただきましたウルクスでできた友人が彼女、コルト・パーシスさんです。ちょっとしたお得意さんでね。いろいろな品を買ってもらっているんですよ」

「いつもお世話になってます。スヴェンさん」


 笑顔で答えるコルトさんは続けて俺に向かって話しかけてくる。


「ところであなたがアーネスト・マーベルさん? わたしたちアルタイルからの招待状はちゃんと読んでくれたかしら?」

「もちろんですよ。しっかりと読ませてもらいました。隅々まで丁寧に、ね」

「それじゃあ話が早いわ。それで受けてくれるの? 受けてくれないの? まあ、ここにいる時点で承諾はしてくれているのよね」


 なんか強引だな、この人。きっと相手のことを気にせずにずかずか踏み込んでくるタイプだ。苦手だなぁ。


「承諾はしますよ。一ヶ月間この街に拘束されるのは厳しいけど、報酬もそれなりのものを貰えますしね。ですけど、協力する前に最低限この二つだけは確認をさせてください」


 そう言うと、コルトさんは目を細め不審がる。

 しかし結局は大したことでもないのだろうと考えがいたったのか俺の質問を認めてくれた。


「いいわよ。何についてです?」

「まず一つ目。名目は臨時研究員ですけど、主な役割は対立組織『ベガ』からの護衛だそうですね。『ベガ』とはいったい何なんですか。護衛が必要なほど危険な組織であるのなら、そもそも俺たちで対応しきれるのでしょうか? そして二つ目。俺が護衛するあなたたち『アルタイル』の研究内容、異能力開発計画の詳細を教えてください」


 俺が提示した質問はこの二つだった。

 コルトさんは了解と頷くと、そのままスヴェンさんの方へ向く。


「ではスヴェンさん、とりあえずマーベルさんにはテストを受けてもらいますので、そのおつもりで」


 ――え? 俺の質問、飛ばされた?


「ええ、ビシビシしごいてやってください。彼の戦闘技術はお墨付きですよ。素手での戦闘も問題ありませんから」

「もちろんです。手加減はしませんよ」


 そう答えるとコルトさんは「では行きましょうか」と言いながら店を出ようとする。


「おい、待ってくれよ。まだ質問に――」

「分かってるわよ、ちゃんと。ちょっと長くなりそうだから車の中でさせてもらえると助かるわ」


 その後、俺とフィリア、そしてコルトさんはスヴェンさんとの別れを済ませ雑貨屋を出発した。

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