番外編 その想い読めちゃうからこそ 2
夜――。
村の周囲に簡易結界を張り、魔物の接近に備えたパーティは、交代制で見回りに入っていた。
「⋯⋯静かね」
リリィがぽつりと呟く。
薄く張られた魔力の網に、かすかな振動が走ったのはその直後だった。
「来るよ、東側。3体――いや、もう1体、後ろに隠れてる」
フィリアの感知能力が冴えわたる。
エリオンは無言で頷くと、瞬時に尾をうねらせて前衛へ。
「さすが、鋭いな」
「でしょ?」と笑うフィリア。
しかし──そのとき。
「エリオンさーん!?」
場違いな高い声が響いた。
「ヒルダ!?」
慌てて振り向くフィリアとリリィ。
ヒルダが、夜の闇の中を――結界の外へ、エリオンを追って飛び出していたのだ。
(なんでこのタイミングでぇええ!?)
「だめ、戻って!外は危ないの!」
フィリアが叫ぶも、ヒルダは聞こえていないのか、ただエリオンの姿を見つけて笑顔を浮かべていた。
「すごい⋯⋯本当に、戦ってる⋯⋯かっこいい⋯⋯」
その時だった。
「――ッ!?」
闇の中から、魔物の一体が咆哮を上げてヒルダに跳びかかる。
「ッ危ない!!」
誰よりも早く飛び出したのは、レイだった。
「どけどけーい!こちとらまだ死にたくねぇっつーの!」
軽口を叫びながら、魔力を爆ぜさせる。
「【爆焔の槍】ッ!」
閃光が走り、魔物が爆発四散する。
その火花の向こう、ヒルダは転んで座り込んだまま、ぽかんとレイを見上げていた。
「⋯⋯ひゃ、ヒ⋯⋯っ、ヒルダさん!?無事かよ!?バカじゃん!!」
「⋯⋯かっこいい⋯⋯」
「今じゃねぇええ!?」
ぱたん、と倒れそうになりながら、レイはヒルダの前に両手を広げる。
「⋯⋯ちょ、お前今、俺に惚れた!?まじで!?」
事件は無事収束した。
魔物は退けられ、村に被害はなかった。
翌朝。
村の井戸端では、ヒルダがぽわんとした顔でレイを見つめていた。
「レイさん⋯⋯昨日の、すごく素敵でした⋯⋯」
「お、おう⋯⋯あ、ありがと⋯⋯?」
レイは明らかに目を泳がせていた。
横を通りかかったフィリアとエリオンは、その光景を遠巻きに見ていた。
「⋯⋯ふふっ」
フィリアがくすっと笑う。
「なんだ?」
エリオンが問うと、彼女はそっとエリオンの尾に手を添えて、囁いた。
「やっと⋯⋯あたしだけを見てくれるって、確信できたかも」
「⋯⋯最初から、他に目なんてない」
低く、静かな声。
でもそこに宿る確かな熱に、フィリアの胸はきゅんと高鳴る。
(ああもう、ほんとこの人、ずるい)
「フィリア」
「ん?」
「嫉妬してたのか?」
「う⋯⋯ちょっと、ね」
「かわいいな」
「ッ⋯⋯っ!?」
顔を真っ赤にして言葉を詰まらせるフィリアの肩に、エリオンの尾がそっと巻きついた。
「巻きついたら、もう離さないって⋯⋯言っただろ?」
「⋯⋯あー、もー、ずるい⋯⋯っ」
嬉しさと照れがこみ上げて、彼女はエリオンの胸に顔を埋めた。
そのすぐ近くでは、レイがヒルダの熱視線を全力で避けつつ、ジークに助けを求めていた。
「なぁジーク⋯⋯どうしたらいいと思う⋯⋯?」
「……死ぬなよ」
「無責任ぃいい!!」
そんな騒ぎを背景に、今日もチームは平和に(?)出発していくのだった──
――完――




