一緒に戦う覚悟もう離さない尾 5
遺跡から帰還した夜、エリオンとフィリアは、
ギルド宿舎の離れ――滅多に使われない小部屋にいた。
灯りは小さな魔道ランプひとつ。
窓の外には、銀色の月が浮かんでいた。
「⋯⋯落ち着くね。ここ」
フィリアがぽつりと呟いた。
「騒がしい連中もいないしな」
エリオンの声は、どこか穏やかだった。
フィリアは笑う。
「⋯⋯誰のこと?」
「⋯⋯あの金髪魔法使いとか」
わずかに口元を緩める。
「ふふ、レイは“怖いけどいい奴”って言ってたよ、エリオンのこと」
エリオンは視線を逸らす。
「⋯⋯知らん」
窓辺に座るふたり。
静かに、時間が流れていた。
「ねぇ、エリオン」
フィリアが声を落とす。
「あなた、いつから⋯⋯あたしのこと、好きだったの?」
不意の問いに、エリオンの尾がぴくりと揺れた。
「⋯⋯最初から。たぶん」
「え⋯⋯っ」
「最初に目が合ったときから、“この人間は違う”と思った。
でも⋯⋯それが“恋”だと気づいたのは、お前が“怖くない”って言ったときだ」
その瞬間を、フィリアも覚えている。
あの夜の川辺、静かな水音と、ふたりの距離。
「⋯⋯そっか。あたし、先に言っちゃったんだね」
「何を?」
「“好き”って言わなかったけど⋯⋯“怖くない”って、
あれ、あたしの“告白”だったんだよ?」
エリオンの目が、やわらかく細まる。
「⋯⋯知ってた」
尾が、そっとフィリアの腰をなぞるように巻かれる。
「けど、お前は優しすぎるから。
本気かどうか、確かめるのが⋯⋯怖かった」
「だから拒んだの?」
「ああ。⋯⋯けど、もう無理だ。お前に触れて、守って、
それで離れるなんて、俺には⋯⋯できない」
フィリアはそっと彼の胸に額を預ける。
「うん。⋯⋯じゃあ、あたしも言うね」
「好きだよ、エリオン。⋯⋯ちゃんと、本気で」
抱き寄せられる感覚と、鱗が肌に触れる感触。
だけどそれはもう、恐怖ではなかった。
あたたかさと、心地よさ。
「⋯⋯離さない」
エリオンが囁いた。
「うん。離れないよ」
フィリアも答えた。
月明かりが静かに差し込む部屋で、
ふたりの心が、確かにひとつになった――。
翌朝。
リリィが紅茶を飲みながらぽつりとつぶやいた。
「⋯⋯絡まれたら、最後」
隣でジークが吹き出す。
「誰のことだ?」
「さあね。ただ⋯⋯蛇は1度噛んだら離さないものよ」
そう言って、リリィはふわりと微笑んだ。




