一緒に戦う覚悟もう離さない尾 2
遺跡《カダルの顎》は、名の通り、大地に大きく口を開けたような峡谷の奥に眠っていた。
石の門は既に朽ち、岩壁は黒ずんだ苔と血のような赤い蔦に覆われている。
「うわ⋯⋯雰囲気、最悪」
レイが肩をすくめる。
「空気が、重い」
リリィが呟き、指先で簡易の結界を張る。魔力が周囲に溶けていく速度が、尋常ではなかった。
「⋯⋯嫌な感じだな」
ジークが斧を構える。
その時、エリオンが立ち止まった。
「⋯⋯“気配”が変わった」
その言葉に、全員が静止する。
エリオンの瞳がスッと縦に細くなり、足元の尾が地面を叩くように動いた。
「封印種⋯⋯もう目覚めている可能性がある」
「じゃあ、時間ないってことか」
レイが魔導具のロックを外す。
「行こう」
フィリアが短剣を抜き、静かに前を見据えた。
遺跡内部は想像以上に広く、歪だった。
床は崩れ、天井には牙のように尖った鉱石が生え、奥からは鼓動のような地響きがかすかに響いてくる。
「まるで、遺跡そのものが生きてるみたい」
フィリアが言った。
「⋯⋯それは、封印種が“中で蠢いている”証拠かもな」
エリオンの声が低くなる。
そして彼は、ふとフィリアの手首をそっと掴んだ。
「離れるな」
「⋯⋯うん」
ぴたりと寄り添ったふたりを見て、レイが小声でボヤく。
「やっぱこわ⋯⋯ラブラブすぎてなんか⋯⋯こわ」
「巻き付き魔法、かもしれないわよ」
リリィの皮肉に、レイは「やめろ本当にありそうで嫌だ」と額を押さえる。
遺跡の最奥に近づいた時、それは唐突に起きた。
バキィン!と空間が割れたような音とともに、前方の岩盤が弾け飛ぶ。
そこから現れたのは、異様な魔力に満ちた“蛇のような”巨大な魔物だった。
「⋯⋯封印種!」
カルドから聞いていた名が、ジークの口から飛び出す。
それは蛇の体に、無数の腕と目が生えた異形。
瞳は全てが金色に輝き、その動きに合わせて空気すら震える。
「くるぞ!!」
ジークが前に出て、斧を振りかぶる。
「後衛、展開!!」
フィリアの号令でリリィとレイが左右に別れ、魔法陣を展開。
「エリオン!後ろに回って!」
「いや⋯⋯前に出る」
エリオンの声が静かに響いた。
彼の尾が地面にうねり、体の鱗が光を帯び始める。
「フィリアを、後ろに下げたくない。⋯⋯一緒に戦うって、決めたからな」
フィリアの目が、大きく見開かれる。
「⋯⋯ばか」
だけど、その声は優しい。
「なら、巻き付いてでも隣に立ってなさいよ」
「了解だ」
巻き付き、守り、共に斬る。
ラミアの本能が、もう恐れるべきものではなくなった。
フィリアの刃とエリオンの牙が、巨大な異形に向かって放たれる――!




