一緒に戦う覚悟もう離さない尾 1
ギルド《銀月の帳》にて。
カルドの部屋に、フィリア、エリオン、ジーク、リリィ、そしてレイが呼び出されていた。
「⋯⋯お前たちに、Sランクの任務を一つ預けたい」
カルドの声は重く、いつになく真剣だった。
レイが「うへぇ」と小さく呻いた。
「⋯⋯俺、こういう空気苦手なんだよな」
「黙って聞け」
リリィが鋭く一喝。
カルドは壁に掛けられた古地図を示す。
「北東の廃遺跡《カダルの顎》で、魔物の異常繁殖が確認された。だが問題はそれだけじゃない」
地図に指を走らせながら、カルドは続けた。
「⋯⋯目撃された魔物の中に、“封印種”が混じっていた」
「⋯⋯封印種?」
フィリアが息を呑んだ。
「本来、古代の結界で封じられたはずの魔獣どもだ。
結界が壊れかけている可能性がある。調査と鎮圧、両方だ」
ジークが真っ先に頷いた。
「やるべきことは分かりました。行きます」
リリィも、「必要ならば」と短く返す。
レイは軽く肩をすくめて、「あー⋯⋯うん、ま、行くか。死ななきゃ儲けもん」とヘラッと笑った。
フィリアがエリオンを見ると、彼はゆっくりと目を伏せたあと、小さく頷いた。
「⋯⋯守るべきものが、できたからな」
その言葉に、フィリアの胸が熱くなる。
任務の準備を進める中、フィリアとエリオンは一度だけ、ギルド裏庭に立っていた。
「⋯⋯本当に、来てくれるんだね」
フィリアがぽつりとつぶやいた。
「もちろんだ。⋯⋯もう逃げない」
エリオンの瞳が真っ直ぐに彼女を見つめる。
尾がするりと地面を這い、彼女の足首にそっと巻き付いた。
軽く、でもぴったりと――“離さない”意思そのもののように。
「危険な任務だよ。エリオンが、暴走する可能性だって⋯⋯」
「それでも行く。お前と一緒にいると決めたから」
フィリアは微笑んだ。
「なら、あたしも⋯⋯暴走する時は、止めるから。何度だって、正気に戻してやる」
その言葉が、どれほどエリオンの心を救ったか。
彼の尾が、もう一段、彼女の脚に絡まったのが、その証拠だった。
(⋯⋯怖くない)
フィリアの心には、もはやあの日の迷いはない。
そして――旅立ちの日。
五人の影が、ギルドの門を越えた。
陽の光を背に、冒険者の背中はどれも力強く見えた。
その後ろで、カルドがひとりつぶやく。
「⋯⋯巻き付く、か。まったく、手のかかる奴らだ」
隣にいたティナが、くすっと笑った。
「でもね、マスター。⋯⋯彼らなら、大丈夫だと思うよ」
「⋯⋯そうかもな」
カルドは小さく目を細めた。
“蛇は一度噛んだら離さない”
その意味を、あのラミアはきっと、ようやく理解したのだろう。




