表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/56

夜を這うもの兄弟の罠 3

 巻き付く尾が、鋭い音を立ててギリウの腕を絡め取る。


 


 「ぐっ⋯⋯!」


 


 思わず呻いたギリウの足元、結界の魔力が乱れ、バランスを崩す。


 


 「メロウ!!」


 


 ギリウの叫びに応じて、暗がりから滑るように現れたもう一つの影。


 


 「ヘイヘイ、待ってましたぁ!」


 


 メロウの刃がフィリアに向かって飛ぶ。

 だがその間に立ち塞がったのは――


 


 「お前らの薄汚い偏見⋯⋯ここで終わりだ!」


 


 ジークの盾が突き上がり、メロウの攻撃を受け止めた。


 


 「う、うそ⋯⋯」


 


 攻撃を逸らされたメロウの目が見開かれた瞬間、

 後方から、レイの放った魔法が降り注ぐ。


 


 「さぁ、踊れよ、【雷刃槍ライアスピア】!」


 


 雷の槍がメロウの足元を撃ち抜き、魔力を封じる。


 


 「兄ちゃん、魔術がッ⋯⋯!」


 


 「⋯⋯クソが!!」


 


 ギリウが、咆哮のように魔力を爆発させる。


 


 瘴気が渦巻き、地下全体が軋む。

 制御を失った魔術陣が暴走し、壁が崩れ始めた。


 


 「エリオン、もう下がって! こいつ、自爆覚悟だよ!」


 


 リリィが叫ぶ。だが――


 


 エリオンは動かない。


 


 「⋯⋯逃げていいなら、もう逃げてる」


 


 その声は、静かで、冷たくて、そして――


 あたたかかった。


 


 「フィリアを⋯⋯俺の大切なものを、踏みにじろうとした奴を、俺は許さない」


 


 その瞬間――


 彼の身体に、黄金の紋様が浮かび上がった。


 


 鱗。尾。瞳。牙。


 半蛇化。


 


 「お前たちが“化け物”と呼んだこの力で、俺は“守る”」


 


 ギリウの眼前、獣のごとき咆哮が響いた。


 


 蛇が地を這う。尾が風を裂き、鎖のように絡み、ギリウの全身を締め上げる。


 


 「がっ、あ⋯⋯!!」


 


 骨が砕ける音が、淡く響いた。


 


 







 


 ――そして、静寂。


 


 崩れかけた天井の下。

 フィリアは、巻き付いていた尾にそっと手を重ねた。


 


 「終わった、ね」


 


 エリオンは、かすかに頷いた。


 


 「⋯⋯本能のままに怒った。でも⋯⋯暴走はしてない。できなかった」


 


 「⋯⋯ふふっ。じゃあそれって――“理性が勝った”ってこと?」


 


 「違う」


 


 彼は、フィリアの手を取り、ぎゅっと包んだ。


 


 「“愛したから、壊せなかった”んだ」


 


 その言葉に、フィリアはほんの少しだけ頬を赤らめ、そっと笑った。


 


 「巻き付かれても、もう怖くないよ。

 ⋯⋯だって、あんたの尾は“優しい”って知ってるから」


 


 仲間たちが駆け寄る中、エリオンの尾が自然とフィリアの腰に触れる。


 


 決して離れない。

 だが、束縛ではない。


 


 それは――


 誓いだった。


 


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ