仮面を脱いだ瞳と迫る魔力の兆し 5
ギルド《銀月の帳》の集会室。
カルドの呼びかけで、各チームの代表者が顔を揃えていた。
「では、今回の事件の総括および、パーティ再編の通達をする。異論がある者は、正当に意見しろ」
カルドの静かな声に、空気が一瞬ピリッと引き締まる。
――今回の事件、それはリールとヴァルの魔法暴走と、フィリアたちへの執拗な嫌がらせ。
ギルド内で再発があってはならない“内部からの腐敗”だった。
静寂の中で、数名が頷く。誰もがこの事件を重く受け止めているのだ。
「まず、チーム〈月影〉――エリオン、フィリア、ジーク、リリィ、レイの5名」
カルドの声が響く。
「全会一致で昇格決定。Bランクに引き上げる」
どよめきが広がった。
「⋯⋯まじか」
「新人チームだったはず⋯⋯」
「まあ⋯⋯仕方ないわね。実力は本物だったし」
そんなざわめきが走る中、レイがニヤリと笑って耳打ちしてきた。
「Bランクってことは、給料上がるよな? な?エリオン」
「俺に言われても知らん」
静かに返すエリオンの声に、フィリアがクスクスと笑う。
「いいじゃん、レイ。ご飯奢ってよ~。昇格祝い♪」
「へいへい、女子には弱い俺様ですよっと!」
――その明るさの裏で。
ひとつの影が、静かに蠢いていた。
ギルドの裏手、小さな倉庫にふたりの男が身を寄せていた。
「⋯⋯追放されたヴァルとリールの代わりに、俺たちが“動く”」
ギリウの低い声に、メロウがニタリと笑う。
「へぇ、兄ちゃん⋯⋯やっと本気出すわけ?」
「バロスは雑だった。ヴァルもリールもやりすぎた。⋯⋯俺たちは、“潰す”んじゃない、“壊す”んだ」
兄ギリウは、冷えた瞳で倉庫の奥を見つめる。
「見てろよ、ラミア野郎も、仮面の女も――
“優しさ”なんて、ギルドには似合わねぇって、思い知らせてやる」
メロウがその言葉に合わせて、魔道具の封を解く。
赤く滲む瘴気が、わずかに漏れ出す。
「さて、次の狩場は⋯⋯“夜”だな」
一方――
その夜。
フィリアは、ギルドの屋上で銀月を見上げていた。
隣にはエリオン。
「ねえ、エリオン。あたし、本当に“変われた”かな?」
「⋯⋯ああ。仮面を外したお前は⋯⋯ずっと、綺麗だ」
言葉を飲み込んで、彼女はふふっと笑う。
「⋯⋯じゃあ、あたしはエリオンの“本能”も、受け止めてみようかな」
尾が、そっと彼女の腰に巻かれる。
温かく、強く。
「⋯⋯本気で言うなよ。もう離せなくなる」
「⋯⋯それでもいいよ?」
ふたりの距離が、静かに縮まった――その瞬間。
フィリアの感覚が、ピリッと揺れた。
「⋯⋯エリオン。なんか⋯空気、変わった」
彼もまた、夜の風に目を細める。
「⋯⋯感じる。何かが、“蠢いてる”」
そして銀月の光が、うっすらと暗雲に覆われた。
――新たな火種が、また静かに近づいていた。




