表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/56

仮面を脱いだ瞳と迫る魔力の兆し 3

 リールの魔力が、暴風のように吹き荒れていた。


 


「フィリアァ⋯⋯!あんたはあたしの下にいるのが一番幸せなのよッ!」


 


 リールの叫びは、まるで呪いのようだった。


 


 フィリアは、剣を構えたまま微動だにしない。


 その瞳にはもう、怯えも、戸惑いもない。


 


「違うよ、リール。⋯⋯私は“選ぶ”側だよ」


 


 ――私はもう、誰かの下に屈するつもりなんか、ない。


 


 バチィンと魔力が弾け、リールが魔法陣の上に舞い上がる。


 


「またあたしを否定するの!?またあんたは“かわいそうなフリ”をするのね!!」


 


「⋯⋯かわいそうだったよ、あたし。でも、今は違う」


 


 フィリアの言葉はまっすぐだった。仮面も、笑顔もない。


 


「私は、仲間と一緒に笑って、泣いて、迷って⋯⋯そして今、ここで“決める”んだ」


 


 剣が鳴った。風が吹いた。


 


「リール――もう、終わりにしよう」


 


 


 その瞬間、リールの魔法がフィリアを貫こうと走った――


 が、それより速く、黒紫の尾が空を切った。


 


 「そこまでだ」


 


 冷たい声が落ちた。


 


 エリオンだった。


 


 フィリアに迫る魔法を、尾で叩き落とし、そのまま地面に巻き付けて封じる。


 


 「⋯⋯エリオン」


 


 「俺が先に、言うべきだった」


 


 フィリアが小さく息を呑む。


 


「“俺は、お前を守りたい”――それはもう、理屈じゃない。本能でもない。⋯⋯俺の、選んだ意思だ」


 


 言葉とともに、彼の瞳が柔らかく光った。蛇のように冷たい黄金が、今は温もりを宿している。


 


 「それでも⋯⋯俺と一緒に、いてくれるか?」


 


 


 静寂の中で、フィリアは笑った。


 


 仮面じゃない。心からの、笑顔だった。


 


 「⋯⋯やっと言ってくれたね、巻き付き男」


 


 


 その言葉とともに、彼女の剣がリールの魔法陣を一刀両断した。


 


 術式が砕け、リールの悲鳴が闇に消える。


 


 ヴァルがその場に膝をつく。



「⋯⋯クソが⋯⋯ッ!」


 


 そこへ、遅れてジークとレイが到着。


 


 「っとと、間に合った?」


 


 「いや⋯⋯もう終わってるみたいだな」


 


 ジークが唸るように言い、レイは肩をすくめる。


 


 「ったく、あの二人⋯⋯もう完全に夫婦かよ」


 


 リリィは溜め息をつきながらも言った。


 


 「⋯⋯やっと、仮面も本能も、捨てられたのね」


 


 


 空はすでに夜明け前。


 


 フィリアは、そっとエリオンの尾に触れる。


 


 「エリオン、あたし⋯⋯あなたに噛まれてもいいよ」


 


 その言葉に、エリオンは驚き、照れ……そしてゆっくり尾を彼女の腰に巻いた。


 


 「⋯⋯じゃあ、もう離さない」


 


 


 


 そして夜が明けていく。


 “仮面を捨てた少女”と、“本能を超えたラミア”は――共に歩き始めた。


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ