仮面を脱いだ瞳と迫る魔力の兆し 2
赤黒い魔法陣が静かに光を帯びる。
リールの指先から滴るのは、自らの血。ヴァルはその中心で目を閉じていた。
「⋯⋯これで、始まる」
リールが囁くように呟くと、陣の輪郭がぐにゃりと歪んだ。魔力が揺れ、空気が重たく沈む。
フィリアを――“元の場所”に連れ戻す儀式が。
一方その頃、ギルド「銀月の帳」では緊急会議が開かれていた。
「――近郊の森にて、未知の魔力反応が検出された」
カルドが低い声で告げた。ギルド内に漂う緊張に、誰も口を開かない。
「フィリア。お前に関係している可能性が高い」
カルドの言葉に、フィリアは頷いた。背筋を伸ばし、視線は揺れない。
「はい。⋯⋯恐らく、リールたちです」
フィリアの声には、かつての迷いがなかった。
リリィが口を開く。
「結界の波形からして、これまでにない種類の魔術。召喚でもなく、転送でもない。⋯⋯“引きずり込む”系統だと思う」
「つまり、誰かをどこかに引きずり下ろす魔法⋯⋯?」
ジークの問いに、レイが呟いた。
「――で、対象はフィリア、ってか。マジでタチが悪いな」
エリオンは黙ったまま、ただ机の上の地図を見つめていた。
指先が、魔力反応の地点をなぞる。
――今度こそ、守らなければ。
ただ巻き付くんじゃない。本能で“奪う”んじゃない。
俺の意志で、彼女と繋がるために戦うんだ。
その夜、チームは現場へ向けて出発する。
目的地は、かつてフィリアが訓練していた森――彼女の記憶の底に眠る、“始まりの場所”。
「レイ、準備はいい?」
「もちろん。火力とテンションはいつでもMAX。⋯⋯ま、死ぬわけにはいかないけどな」
冗談めかして笑うレイの隣で、ジークが頷く。
「エリオン、頼むぞ。あいつらの狙いがフィリアなら⋯⋯“手段を選ばない”だろう」
「わかってる」
静かに、だが確かな決意がその声には宿っていた。
エリオンの尾が、無意識にフィリアの足元へ向かう――が、触れずに止まる。
「⋯。巻き付きたい?」
フィリアが、笑いながら囁いた。
エリオンは、かすかに目を細めた。
「違う。⋯⋯守りたいだけだ」
“本能”じゃない。
それは、もうすぐ言葉になる。
そして、彼らは魔法陣の中心地へと足を踏み入れた。
待っていたのは――赤い陣と、リールの狂気。
「来たわね、フィリア。お帰りなさい。⋯⋯ここが、あんたの“居場所”よ」
リールの目は焦点の定まらない光を宿していた。
その隣に立つヴァルもまた、剣を握り締めて唸るように言う。
「フィリア⋯⋯お前は、俺のものだ」
その瞬間――陣が炸裂した。
空間が裂けるような轟音と共に、魔法が暴走を始める。
チームは即座に展開。ジークが前に出て盾を構え、リリィが結界を張る。
レイの魔法が夜空を裂き、エリオンの尾が一閃する――!
そして、フィリアはリールと対峙する。
過去と、決着をつけるために。




