#021
自分に合う武器を探し始めて五分、アンジェが手に取ったのはジルから借りている剣と同じくらいのサイズの剣だった。
アンジェは剣を軽く数回振って感触を確かめる。
アンジェは少し違和感があるように感じているようだが、他に良さそうなものもなくその剣で妥協する。
アンジェは剣を持ってモーリスの元に戻ると一つ訊ねる。
「剣術と魔術の技量をそれぞれ別で見るって話だけど剣術を見る時って、時身体強化は使っていいんですか?」
「使用禁止だ、最後に総合での実力を見せてもらうから、その時なら他の魔術も使ってもいいぞ」
「わかりました」
アンジェは頷くと身体強化を解除し一礼して剣を構える。
モーリスはアンジェの準備が整ったのを確認すると剣を構え掛かって来るように言う。
アンジェは慎重に間合いを詰めていく、普段なら身体強化で一気に距離を詰めるのだが、今回は久しぶりの身体強化抜きでの戦闘だ。
普段通りの戦いができないのでいつも以上に念入りに相手の動きを予想する。
「掛かって来ないのか? それなら私から行かせてもらうとするか」
モーリスが一歩大きく前に出てアンジェとの距離を詰め剣を横に振る。
アンジェは予想していた動きの内の一つだったのでバックステップでギリギリに躱し、直後に前に出てモーリスの下から腕を狙う。
モーリスはアンジェのその年からは想像もできない程精練された動きに驚きながらも剣から片手を放しアンジェの剣を避ける。
アンジェはモーリスが避けた直後にさらに一歩前に出て剣の軌道を変え首にあたる瞬間に止める。
「私の負けだ」
モーリスがそう告げると、アンジェは剣を鞘に納める。
「試験中手を抜いていましたよね、本気を出せば避けられたはずですが何故避けなかったんですか?」
「これは試験だからね本気は出さないよ、でも本気を出してもあれを避けたらまた次が来るだろうから全て避けるのは厳しいだろうね」
「そうですか……」
モーリスはアンジェに休憩が必要か訊ねるがアンジェは必要ないと返す。
モーリスはアンジェの返事を聞くと壁まで行き、何か操作した。
すると訓練所に丸い的が十個やって来た。
「今度はあの的に向かって魔術を放ってくれ」
「使うのは何でも良いんですか?」
「ああ、自分が使える最高の魔術を見せてくれ」
「わかりました……それと口調が素に戻ってるけど良いんですか?」
「あ~、丁寧な口調と今の口調どっちがいい」
「今の口調で」
アンジェがそう答えると、モーリスは今までの丁寧な口調を止め、素の口調でアンジェに試験をやるように促した。
アンジェは水の槍を十個作り出し一斉に的へ向けて飛ばす。
その水の槍は、前ジルに斬り捨てられた時よりもしっかりと魔力が錬られており威力も速度も段違いに上がっていた。
水の槍は全ての的に同時に当たり砂が舞った。
砂が晴れるとそこには傷一つ付いていない的が十個あった。
「あの的って結構頑丈なんですね」
「いちいち壊されていたら試験に時間が掛かってしまって面倒だから、かなり頑丈に作られているんだ、因みに今年の新入生にあの的に傷を付けた者が二人いたぞ」
「二人も……凄いですね」
(お前も十分凄いんだがな……十個同時に当てるなんてそこまで魔力を制御できてる奴は新入生の中でお前だけだぞ、それに傷付けたと言っても一つ一つ順番に魔術を放って十個中二個傷付いただけなんだよなぁ)
モーリスがそんな事を思っている事など露知らずアンジェはもっと頑張らなきゃと自らを鼓舞していた。
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