第四話 元弟子、空から降ってくる
第四話です。
魔王の次は古龍です。
この作品、
世界最強クラスほど師匠への情緒がおかしくなっています。
あとレインはまだ
「みんなちょっと大袈裟だなぁ」
くらいに思っています。
よろしくお願いします。
朝。
森に鳥の声が響いていた。
平和だった。
少なくとも。
レイン以外にとっては。
「師匠、あーんしてください」
「しない」
「どうしてですか?」
「恥ずかしいから」
魔王エルセリアが、
露骨にしょんぼりしていた。
世界最強が。
朝から。
しょんぼりしていた。
勇者アレスは頭を抱えたくなる。
(なんで魔王がこんな生き物になってるんだ……)
しかも。
エルセリアはレインの隣から一歩も離れない。
完全に護衛。
いや。
大型犬。
リリアが小声で呟く。
「……魔王って、もっとこう……」
「恐ろしい存在だと思ってました……」
ミリアも遠い目をしていた。
だが。
恐ろしいのは、
むしろこれからだった。
ヒュオオオオオオ――!!
突然。
空から轟音が響く。
「!?」
全員が空を見上げた。
雲を突き破り。
巨大な黒い影が降下してくる。
竜。
いや。
古龍。
伝説級。
国が滅ぶ災害そのもの。
「う、嘘だろ……」
アレスの顔から血の気が引く。
しかも。
その古龍は一直線にこちらへ突っ込んできていた。
「総員――」
叫ぼうとした瞬間。
ドォォォォォン!!!!
古龍が着地した。
地面が揺れる。
森が吹き飛ぶ。
暴風が荒れ狂う。
そして。
古龍は。
ズザァァァァッ!!
レインの前で土下座した。
「師匠おおおおおおおお!!!」
絶叫だった。
「会いたかったですぞぉぉぉぉぉ!!!」
アレスの思考が止まる。
「……は?」
古龍が。
泣いていた。
巨大な龍の顔面から、
ボロボロ涙が落ちている。
レインが目を丸くした。
「あれ、ガルド?」
「はいぃぃぃぃ!!」
尻尾がブンブン揺れている。
木が折れている。
危ない。
「師匠が消えたと聞いて!!
我、空を三日探しましたぞ!!」
「三日!?」
「山脈も二つほど壊しました!!」
「ダメだろ!?」
エルセリアが不機嫌そうに目を細めた。
「……相変わらず脳筋ですね、ガルド」
「む?」
古龍ガルドがエルセリアを見る。
「なんだエルセリアか」
「なんだとは?」
空気がピリつく。
魔王と古龍。
世界災害級が二体。
睨み合っている。
アレスたちはもう逃げたかった。
「師匠」
ガルドが真剣な顔になる。
「なぜこんな弱そうな連中と?」
「仲間だったから?」
その瞬間。
ガルドの目が細くなった。
「……ほう」
圧。
空気が沈む。
古龍の黄金の瞳が、
勇者パーティを射抜く。
「貴様ら」
低い声。
「まさか師匠を雑用扱いしておらんかっただろうな?」
誰も答えられない。
ガルドの額に青筋が浮かぶ。
「師匠はなぁ!!」
ドゴォォォォン!!
咆哮だけで木々が吹き飛んだ。
「我に飛び方を教えてくださった方だぞ!!」
「飛び方?」
リリアが呆然と呟く。
「うむ!」
ガルドが誇らしげに頷く。
「昔の我は飛べなかった!!」
「古龍なのに!?」
「師匠が毎日崖から投げてくださった!!」
「教育がスパルタすぎる!?」
「おかげで飛べた!!」
ガルドは満面の笑みだった。
レインは青ざめている。
「え、あれ死にかけてたから訓練だったの!?」
「愛ですぞ!!」
「解釈が怖い!」
アレスは頭を抱えた。
もうダメだ。
この人。
本当に世界最強側の存在だ。
読んでいただきありがとうございます!
ガルドは脳筋系弟子です。
多分考える前に飛びます。
そして勇者パーティ、
少しずつ理解してきました。
「この人、世界を滅ぼせる側だ」
と。
次回、
勇者アレスの胃が本格的に死にます。




