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ロナウド




「すっごいでっかい街…」

「私も来るのは初めてだ」


 門の中に入ると、そこは巨大なロータリーになっていて、たくさんの屋台がならんでいる。


 街の中に入ると、外が砂漠だと思えない程に豊かなイメージを受ける。


 道端は緑に染まり、花壇には花が咲いていた。


(思っていたより普通の田舎町みたい…西洋風の建物が並んでるね)


「どうだ?花凜の住んでいた街とは違うかな?」

「違うけど、これはこれで好きだよ」

「そうか…良かったな」


(リオン、ありがとう)


 リオンにはいつも感謝している…私の寂しさを埋めるように、リオンなりに気遣ってくれているのだ。


 私は視線を並ぶ屋台に移すと、端から端まで見渡していく。


 見た事も無い料理の数々に、私は興味を引かれていた。


「かわいいじょうちゃん達だ!1つ食っていかないか?」(屋台のおじさん)


 まだ街について間もないのに、私達はすぐに話しかけられた。


 こんな事は初めての経験だ!きっとこれが俗に言う【ナンパ】というものであろう。


 素早くリオンの後ろに隠れるが、完全に隠れるのは無理がある。


 頬に冷や汗が流れるが、そんな機能付けてないのに…おかしい…


「あいにく今は金がない…これから素材の換金をしに行くところだ、その煮詰めているものは何なのだ?」


 リオンがお金が無い事を説明して、そのついでに屋台のおじさんが売ってるスープが何なのか質問をした。


 屋台のおじさんはにっこりすると、寸胴の大きな鍋をかき混ぜる。


「さっきの衛兵とのやり取りを見ていたよ!金が無いのは知っているさ…これはトマトクラムスープだ、お代はいいから食って行きな」


 気の良い屋台のおじさんにホッとして、私はリオンの影から体を出す。


 私達は使い捨てのカップに入れられたトマトクラムスープを受け取ると、屋台後ろが芝生になっているのを見つけ、そこに腰を下ろす。


 初めてのまともな食事に、私は嬉しくなっていた。


 この屋台のおじさんの見た目は身長180センチくらいで、痩せ型だがしっかりとついた筋肉に、水色の瞳が綺麗だ。


 金髪で短めだが癖毛で頭はボサボサ、40歳過ぎの渋いおじさんに見える。


「これ美味しい!食べたことない味〜♪」


 私はこの世界で、初めて知らない料理を食べて、とても感動している。


 少し酸味があり、貝の旨みがたっぷり出ているようだ…舌もちゃんと再現出来ているみたいでホッとする。


 しかしこの貝の形は見た事がない…


「ああ、まあまあ上手いな、私も食べたことない味だ」(リオン)

「ここいらでは定番な家庭料理なんだが、冒険者が仕事行く前に食ってくれたりするんだよ。

ここは街の出入口だからな!はっはっは!

外から来たが、君達2人は冒険者なのか?」(屋台のおじさん)

「いや…私達は田舎から出てきたばかりで、色々と常識に疎い…実は身分証も最初から持ってはいないのだ」(リオン)

「あはは、不思議な2人だ…衛兵にあれだけ啖呵をきっておいて、身分証を持ってないとはな!

田舎でも身分証は作ってもらえるだろう?

誰もがほっておかないような美人で、護衛も居ないなんて危険じゃないか?

しかも魔物のいる砂漠からやって来て、実は相当な腕前の冒険者かと思ったんだが」(屋台のおじさん)


 おじさんが不思議がるのはもっともだろう。


 砂漠で何度魔物に襲われたかわからない…


 普通の人なら…いや、普通の人が何処まで戦えるのかを見た事がないので、私達と比べる基準がないのだけど…


「リオンがいれば大丈夫♪」(花凜)


 そう!この答えに尽きる。


「護衛などいらない…私は氷の魔法を使えて、花凜は回復魔法の天才だ」(リオン)

「そうか、回復魔法…いや、しかし…」(屋台のおじさん)


 ここまで楽しそうに話をしていたが、急に屋台のおじさんの表情が曇る…そして一瞬悲しげな顔になったが、すぐに優しい顔に戻った。


(どうしたのかな?)


「何かあったのか?」(リオン)

「ああ、気にしないでくれ…良くある話だしな」(屋台のおじさん)

「誰か怪我でもしたの?」(花凜)

「怪我ではないのだ…呪いのような病気でな、聞いたことあるだろう?

黒炭病だ…体の末端から黒くなり炭のように手足から崩れていく…」(屋台のおじさん)


 黒炭病、この世界では有名な病気なのだろうか?


 話を聞く限りでは、かなり酷い症状が出るようだ。


 生きながら手足が無くなる恐怖…考えただけでも恐ろしい…


 しかし、目の前の屋台のおじさんは、見るからに健康そうに見えた。


 もしかしたら、身内や知り合いの誰かがその病気になったのだろう…


「どうにかならないの?」


 私が質問すると、屋台のおじさんは残念そうに首を横に振る。


「絆の宿で、最上級の回復魔法を使えるナンバー持ちの冒険者に依頼を出したり、協会に頼んで病気を見てもらったりしたさ…

だけど黒炭病は不治の病だ…痛みを和らげてやる事しか出来ない」(屋台のおじさん)


 屋台のおじさんは涙を浮かべて、自分の不甲斐なさを噛み殺していた。


 よく見たら服のあちこちが継ぎ接ぎしてあり、お金を稼ぐために自分の出来ることを何でもしてきたのだろう…


 家庭環境は全然違うが、私はお父さんの事を思い出し、自然と涙が出てきてしまった…


(お父さん、お母さん…今何してるかな)


「息子がな、もういいよ…もう大丈夫だよ!って言うんだ、俺はまだ諦めていない…

母ちゃんに託された一人息子なんだ…

この世に1人しかいない俺の大切な家族なんだ…

頑張ればきっとどうにか出来ると信じている!

…あ…すまんな暗い話しちまってよ」


 屋台のおじさんは、私が涙を流しているのに気づいて、慌てて笑顔を作った。


「おじさんに聞きたい事があるの」

「ん?なんだお嬢ちゃん」

「もし息子さんが死んでしまったら、おじさんはどうするの?」


 屋台のおじさんは、私の顔を見る。


 もし…だとしても、息子が死ぬなんて話を聞くのは、とっても空気を読めない行為だろう…頑張って頑張って、どうにかするためにお金を稼いでいるところへ、こんな質問をするべきで無いのはわかっている。


 それでも私は真剣な表情で聞いた…同情や悪意で聞いている訳ではないのだ。


 屋台のおじさんは、私の真剣な顔を見て、質問に答える事にしたらしい。


「もし…か、そうだな…それこそ今更だ!

元気いっぱいに生きて、商会を再び立ち上げて、幸せいっぱいに生きなきゃ天国で息子に殴られちまうよ」


 そう言って屋台のおじさんは微笑んだ…私はおじさんの答えを聞いて、再び涙が流れてくる。


 目の前のおじさん越しに、お父さんから貰った言葉のように、私の心に染み込んだのだ。


 リオンは私の気持ちを察して、私の頭に手を置いて、ガシガシっとする。


「お父さんと呼んでもいいですか?」

「は?」


 屋台のおじさんは、予想外の言葉に目を開いて驚いている。


「じゃあパパ!」

「…」


 私は今までの事を話す事にした。


 死ぬ間際の事や、転生してから人に追われている事など…もちろん世界樹だとは言わずに、追っ手の人がグラシアン王国の騎士団だと言うことも秘密にした。


 リオンの正体も秘密…しかし私は、1つも嘘は言わずにどうにか説明した。


「…さっぱりわからんことばっかりだ…」

「パパ…」

「パパじゃない!俺はロナウドだ」

「ロナパパ!」


 ロナウドは困った顔をしていて、リオンはこの変な状況に笑っている。


 ロナウドは私の話を信じれないものの、どう接したらいいのかもわからずに戸惑っているみたいだ…


 私は人見知りだが、慣れたらとても甘えたいのだ…


 不整脈が無くなったせいかもしれないが、私は以前より前のめりな性格になったかもしれない。


 私は、暫定パパであるロナウドの腕をとった。


「おおお!」


 ロナウドはよろめいてしまい、転びそうになったが、何とか踏みとどまる…


(あれ?)


 私はロナウドにどういう事なの?というような顔を向けてみる。


 そんなに強く掴んだつもりはなかったからだ…


 ロナウドは苦笑いを浮かべると、屋台の隅に手を置いた。


「金が足りなくてな…とりあえず手っ取り早く稼ぐために、冒険者をやってみたんだ…

その時魔物にやられた傷で、右足をダメにしちまったんだよ…ゆっくり歩くのは問題ないが、力が入らない」

「パパ、ちょっと見せてね」


 ロナウドの前に跪くと、目を閉じ右足をさする。


 屋台の裏側だが、人前で跪かれて、ロナウドは何とも言えない顔になる。


「うん、治ったよー」

「はは、治るわけないだろう?何日間協会に通ったとおも…て、ん?あれ?」

「パパ、治ってない?」


 私はロナウドを見上げながら聞いた。


 ロナウドは足の感覚を確かめるように、ジャンプや屈伸をしている。


「な、何をしたんだ?」

「ん?回復魔法?」

「呪文詠唱などしていなかったじゃないか!」


 私がリオンに顔を向けると、リオンは私の顔を見てから、ロナウドに顔を向ける…そして、ゆっくりと口を開いた。


「…………………気のせいだろう?」

「そう、気のせい」

「…な…………さっきの話に戻るが、人から追われているのは、そういう事なのか?」


 気のせいとは便利な言葉だ。


 ロナウドは目を閉じて、1人で勝手に納得してくれたようだ。


 わからない事は多いだろうが、私もこの世界の事はまだよくわからない…


「ありがとう、これでもっとたくさん働く事が出来る!

希望が見えてきたよ、俺に出来ることがあれば、何でも言ってくれ」


 ロナウドは笑顔になり、些細な事は気にしないと決めたようだ。


 そんな風に言われたら答えは1つしかない。


「「おかわり」」(花凜、リオン)

「あいよ」(ロナウド)


 ロナウドは再び微笑むと、私達のカップにたっぷりスープを入れてくれた。


 黙々と食べる私達、久しぶりのまともな食事が嬉しくて、私は自然と笑顔になる。


「そろそろ行く?」


 私はリオンに尋ねた。


「ん?そうだな、行こう」


 リオンは私の気持ちがわかるようで、すぐに立ち上がる。


「ああ、ありがとな!よかったらまたいつでも来てくれ!

素材を売るなら絆の宿だろうが、この道を真っ直ぐ進めばオレンジ色のでかい建物が見えてくる」


 ロナウドが絆の宿とかいう場所を教えてくれている。


 素材を買い取ってくれるらしいので、これからお世話になるだろう。


 私達はスープを食べる時、芝生の上に直で座っていたので、お尻をポンポンと手で払った。


 何をしてもリオンからは気品を感じる事が出来る。


 私はロナウドに近づき、今度こそ腕を組んだ。


「パパの家だよ?早く行こう?」(花凜)

「早く行くぞ」(リオン)

「え?本当に娘になるつもりか?

うちは一軒家だが、平屋で狭いんだぞ?」(ロナウド)

「パパは私じゃ嫌だ?」(花凜)


 ロナウドは、どこから突っ込めばいいのかわからない様子…


 私はあまり冗談は言わないのだが、会ったばかりでそこまでわかるわけはないだろう。


「ちょっと待ってくれ…まだ早朝で人も少ない…客が来ないように見えるかもしれないが、これからが稼ぎ時なんだ。

金を稼がなきゃいけない理由は、知っているだろう?」


 お金を稼ぐ事は大事だと思うが、今優先するべきは息子の病気を治す事だ。


「だから早く息子を治すんじゃないか」(リオン)

「な!治せるのか?」(ロナウド)


 リオンの言葉を聞いて、ロナウドはオーバーなリアクションをする。


「死んでたって身体さえあれば、花凜なら治せるんじゃないか?

私なんかは下半身が吹き飛び、魔力だけで生命を維持していたところを助けられたのだ」(リオン)

「ええ〜〜!リオンそんなに重症だったの?」(花凜)

「そうだ…私も馬鹿だったのだ…花凜は気を使って何も聞かないが、いつか話してやるよ…」(リオン)


 リオンと出会った時は、私はまだちゃんとした目がなかったのだ…弱ったリオンを助けたいと思い、加減すらわからずにリオンの生命力を強化したのである。


 ロナウドは私の事を、まだ信じられないかもしれない。


 息子さんを助けてあげたいけど、どうやって説得したらいいかわからずに悩んでいた。


「た、頼む!息子を!息子を助けてくれ!」(ロナウド)

「見てみないとわからないけど頑張るよパパ」(花凜)

「家族は大切にしないとな…」(リオン)


 ロナウドは私の肩を掴み、深く頭を下げた。


 信じてもらえたかどうかわからないが、可能性があるなら藁をも掴む思いなのだろう…


 ロナウドの後をついて行く私とリオン。


 ロナウドは自然と速足になり、気が急いているのがわかる。


 まだ早朝なので、人が少なくはぐれる事はない…


 屋台は片付けもそこそこに置いてきてしまった。


「この家だ」


 ロナウドの家は確かに小さいようである。


 庭はかなり広いが、雑草が伸び放題だった。


 平屋で家の窓は割れていて、変わりに木の板が、内側からはめこまれていた。


 ロナウドは家のドアノブに手をかけたが、何かに気付き開く事を躊躇っている様子…


――――うう、うぐ、ああぁ、うう――――


 中から響いてくる呻き声を聞いて、ロナウドは顔を顰めると、小声で私達に状況を伝えてくれる。


「普段は心配させないように、痛くないフリをしているんだ…俺が仕事に行ったから、聞かれるとは思ってないんだろう」


 そう言ってロナウドはドアから離れて、少し大きな声で家の中の息子に声をかけた。


「エルー、帰ったぞ〜」


 ドアを開くと、息子の側まで行くロナウド。


 私達はドアの外で待機しながら、中の話を聞いている。


「親父!早かったじゃないか…さっき出ていった所だろう?」(息子)


 息子の名前はエルと言うらしい。


 平静を装うエルは、ロナウドの足が治った事にすら気が付かないみたいだ。


 ちらりと中を覗き込むと、エルの額には汗が滲んでいて、顔色も悪いかもしれない…


 見た目は流石に親子のようで、金髪に癖毛頭だ。


 瞳は水色で少し鋭い、ナチュラルなイケメンである…爆発すればいいのに…ミス


「今日は、エルを治せるのかもしれない人を連れてきたぞ」


 ロナウドの言葉を聞いて、エルの表情はガラリと変わる。


「ふざけるな!また幾ら金を払ったんだよ!俺の病気は治るようなもんじゃない!」

「わからないじゃないか、もう外まで来ているからな…入ってきてくれ!」


 ロナウドに呼ばれて、私達は中に入った。


 もの凄い美少女のリオンに、エルは何かを言おうとしたが、言葉が出て来ない様子…


 私は前に進み出ると、エルのベットに腰掛けた。


「辛かったね、大切な人を置いていってしまう気持ちは、よく分かるから…しばらくじっとしててね」


 私はエルの布団を剥がす。


 末端から崩れていく、この世界の黒炭病…


 両腕は既に肩の先で無くなっていて、両足は太ももまで無くなっている。


 話に聞いていた通りの症状だが、新しく崩れた部分に血が滲んでいる。


(なんて酷い病気なの…)


「できるわけないだろう…この病気になった時点で、もう終わりなんだよ!

親父も無駄な事してないで、また商人の仕事に戻ってくれ!

世界を旅してくれよ!」


 エルの瞳に、少し涙が浮かんでいる。


 足枷にしかならない自分の存在のせいで、痩せていく父親…もううんざりだったのだ…


「こんなことなら自分で死ねる時に死んでおけばっ(ゴン!!)痛っーーー!何すんだ!」


 私はエルをグーパンチした。


「気持ちはわかるよ…でも文句は治療が終わってからね!まずは全部見るから脱がせます」


 とりあえずエルの身ぐるみを全て剥ぎ取る。


 エルは抵抗出来ない…


「ちょ、ちょっとまっ(ゴツ!)…」(エル)

「静かにして」(花凜)


 私は全身くまなく撫でてチェックする。


 黒炭病がどういうものなのか確認する必要があるのだ。


(不治の病…ね…なんだかよくわからないな…でも治せそう)


 抵抗を諦めたエルは、私にされるがままになっている。


「はぅ!」(エル)

「ここも黒くなってる…」(花凜)

「はうぁ…」(エル)

「大きくなってきた!なぜ?」(花凜)

「………あ、その、息子の息子は勘弁してあげてくれないか?

それで正常なんだ…」(ロナウド)


 何やらわからないが、仕方なく私は納得した…


「リオン、少し大きく力を使いたいんだけど、結界頼める?」

「それはいいのだが…どれくらい力を出すのだ?」

「んー…1割くらい?お腹の中でドリちゃん癒し中だから、少しだけ解放したいの…」

「わかった」


 回復魔法に結界が必要だと言う私達のやり取りに、なんだか理由がわからない様子のロナウドとエル…


 リオンは魔力の遮断を少しずつ解いていく。


 まるで魔力の桁がどんどん跳ね上がっていくようだ。


 私は少しだけ圧迫されるような魔力を感じたが、ロナウドとエルの冷や汗が尋常ではない…


 結界を張った方がいいと思ったのは、ロナウドとエルの今の反応を見れば明らかだ。


 この街に来てからわかった事ではあるのだが、人間の魔力はとても少なく生命力も小さく感じた。


 魔獣の森の魔物と比べると、人間の魔力量というものは、平均で1割にも満たないかもしれない…


 リオンの魔力と比べると、その差は計り知れないくらいあるのだ。


 それでもリオンは気にせず、ぐんぐん魔力を上げる。


 でも一気に魔力遮断を解除しないので、2人に気を使っているのは明白だ。


「こ、こんな…馬鹿な…」(エル)

「…」(ロナウド)

「………よし!いいぞ花凜」(リオン)


 リオンが準備完了を告げたので、私は腰掛けたベットから立ち上がった。


 リオンは天井に向かって右手を掲げると、波紋のように広がった魔力が家の中を乱反射している。


「あまり力を出すと外に伝わるからな、出しても2割までだぞ?」

「ありがとうリオン」


私は少し魔力を解放する…さっきのリオンの解放した魔力より10倍くらいはあるかもしれない…


エルとロナウドは、理解が出来ない程の魔力を感じて、身動ぎ一つせずに口を開いている。


私の体は青白い魔力の光を放つと、結界が悲鳴をあげるように軋んでいるのがわかった。


 生命力の活性化や強化出来る創造生命魔法は、人間が数百人力を合わせても発動する事すら困難かもしれない…


 エルとロナウドは、呼吸や瞬きすらも忘れたように私の行動を見守っている。


(早く終わらせないと…パパも倒れちゃいそう)


 私はエルの胸に両手を置いた。


 ゆっくりゆっくり慎重にエルの体に魔力を流していく。


 エルの弱った生命力は、瞬く間に力強さを取り戻し、黒ずんで崩れてしまいそうだった肩や太股に赤みがさした。


 顔色も良くなり、これで心配はいらないだろう…私は魔力をすぐに遮断する。


「痛みが…引いていく…?」(エル)

「よし!おしまい♪」(花凜)

「「え?」」(エル、ロナウド)

「リオンもういいよ、ありがとう」(花凜)


 私が魔力を抑えたところで、リオンは結界を解いた。


 エルは自分の身体全体から、溢れ出る力にびっくりしている様子…


 私はエルの生命力を爆発的に強化したので、不思議な顔をしているのもしょうがない事だろう。


 手足はまだ無いが、体の黒ずみは無くなり健康体になったのがわかった。


 リオンを治した時もそうだったのだが、体を治す創造生命魔法には副作用があるのかもしれない…


 強烈な睡魔に逆らえずに、エルは意識を手放して眠ってしまった。


「とりあえずこれで安心だよパパ」(花凜)

「ありがとう、ありがとう…ありがとう」(ロナウド)

「それにしても狭い家だな…」(リオン)


 ロナウドは泣き崩れてしまったので、私はロナウドをあやすように頭を抱きしめてあげた。


 リオンは食べ物を探して調理場を物色している。


 すやすや全裸で眠るエル、何とも言えない微妙な空間だ。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




 エルの治療が終わり、私の格好を気にしたロナウドから、昔奥さんが着ていた服を頂いた。


 ほとんどの服は売ってしまったらしいが、思い出の品らしく手放せなかったらしい…


「いいの?」

「エルの命の恩人だ、使ってくれたら俺も嬉しい」


 私は白いワンピースを貰い、他にも下着やら下着やら下着やら…


 下着が多いと思ったが、偶然だろう…全部貰った。


 そろそろお昼ご飯の時間なので、私が料理を作ろうと思う。


 見たことない野菜が多いので、私は食材を味見しながら作っていった。


 食卓に並べ食べ始めると、エルが少し動くのが見えたので、意識が戻ったのだろう。


「エル、起きたか?」


 ロナウドが少し遠くから話しかける。


「ああ、おはよう親父…俺はいつの間にか寝ていたみたいだ…なんだか変な夢だったな…」


 溜め息を吐くエル…しっかりと寝れたようで、すっきりとした顔をしている。


「パパ、その卵焼き美味しい?」(花凜)

「食べたことない味だが…うん!美味しいな」(ロナウド)

「花凜の作るものはなんでも美味いぞ」(リオン)

「親父…俺まだ夢の中らしい…天使がうちのテーブルで飯を食っているのが見える…それに俺…え?裸?」(エル)


 私はエルに近付くとエルの両目を見た。


 エルにおかしな所がないかをチェックする。


「っん、大丈夫そう」(花凜)

「とりあえず…服を着させてくれ…」(エル)

「わかった」(花凜)

「あ、いや、親父頼む」(エル)

「そうだな」(ロナウド)

「今服着るなら半袖短パンにして、ご飯食べた後で手足を作るからね♪」(花凜)


 どんな手足を作ろうか考えると楽しみだ!


 エルとロナウドは、頭にハテナを浮かべていた。


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