表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/53

染み渡る味



【ロウ】





 とてもとても長い廊下…ランタンの灯りに似たオレンジ色の光が、優しく行く先を照らしている。


 この道を通る者に反応して、天井から等間隔で生える琥珀色の鉱石が、周囲の魔力を吸収して明滅している。


 オスカーの家は無駄に広く、知らない者が迷い込めば、白骨化するまで見つからないかもしれない。


 やっとの事で廊下を抜けると、縦約10メートル、横6メートル程の、青銅で造られた両開きの扉が見えてきた。


 この扉は、オスカーが拘って作った扉で、ウォーターハウンドの姿が格好良く描かれている。


「やっぱり恥ずかしいよな…」


 自分の部屋に入る扉に、自分の顔を彫り込んでる奴がいるだろうか…答えはNOだろう。


「これさえ無ければね」


 扉にはドアノブのような物はなく、押せば開く仕組みになっている。


「せーの!」


 今は腕が使えないので、背中で扉を押し開く事にした。


 重い扉が軋みをあげて、金管楽器の重低音のような音が鳴り響いた。


 ここまで薄暗い通路を歩いてきたので、扉の隙間から溢れた光が、目を細めてしまう程に眩しい。


 眩しさの原因…扉の向こう側の天井には、巨大なクリスタルが1本生えていた。


 クリスタルの中心が白く発光していて、まるで太陽の光のようにすら思える。


 この部屋は、部屋と呼ぶにはとても広く、広大な草原に大きく澄んだ湖が設置されていた。


 他にも小型の動物が生息していて、林檎の木や桜の木が生えていた。


 そのお陰で、この空間が地上から800メートルも下にあるというのに、閉塞感をまるで感じさせない。


 湖のほとりには、木造の白い館が建っていて、田舎の豪邸をイメージした造りになっている。


 館は2階建てで、大き過ぎる訳では無く丁度いい。


「やっと帰って来たな」


 そよ風が草原を吹き抜けて、サラサラと心地良い音を奏でている。


 胸に抱く少女の耳には、葉が擦れ合う音で、今の言葉は聞こえなかっただろう。


 どちらにせよ気を失っているのだ…聞かせるつもりで口を開いた訳では無い。


 回復系の魔法を全く使えないので、寝室にあるポーションでもふりかけてみようと思う。


 館の屋根には、風見鶏型の魔道具が設置されていて、これがこの地下の部屋に微風を作り出してくれている。


 湖には20メートル程の桟橋があり、2人乗り用の手漕ぎボートが1艘浮かんでいた。


 さっきまではこの少女に気を割いていたが、何年もこの部屋を出たきり戻れなかったので、懐かしい気持ちが込み上げてくる。


(ほんと…やっとだよ…)


 湖面が揺らぎ、何かがこちらへ向かってきた。


 用心深く、こちらの姿と魔力を探っているのがわかる。


 ゆっくりと姿を現したのは、高さ3メートルくらいになるレインボーフロッグで、ペットのケロンちゃんだ。


 昔人間に無抵抗のまま討伐されそうになっていたところを助け、手当てのためにここへ連れ帰ったが、そのまま居着いてしまった。


「ろ……ろろう…ろうろろ…にゃん」

「ケロンちゃんただいまー」

「にゃん、にゃん」


 ケロンは、今日はルビーの様に鮮やかな赤い色をしている。


 甘えたいようで、目を閉じながら頭を体に擦り付けてきた。


 体は大きいが、ケロンの声は女性のように高い。


「あはは、ごめんよー…今両手が塞がってるから、ちょっと待っててね」

「にゃん…」


 少ししょんぼりした姿も可愛い…語尾ににゃんを言ってしまうのは、言葉を教えている人に問題がある…


「おかえり~なさいにゃーん」

「ああ、ただいまロッカさん」


 背後から声をかけられて振り返った。


 ケロンがにゃんを言ってしまう原因で、オスカーの部下であり、この部屋全体の管理をしてくれているロッカさん。


 彼女は猫系の亜人ですらなく、エルフだったりするのだけども…何故にゃんと言うのかは謎だ。


 金色の長い髪、エメラルドのような瞳、白い肌、黒いワンピースを着ていて、赤い下着…みす。そこまでは確認していない。


 オスカーの配下で、この部屋全体の掃除や管理をしてくれているのだ。


「寝室にこの子を寝かせるから、ロッカさんご飯作ってきてちょーだい」

「了解ですにゃーん」


 ロッカは本来使用人では無い…弓と風系の魔法の達人で、戦えば苦戦は免れないだろう。


「御冗談をー…私ではロウ様に~傷1つ付ける事は叶いませんー。下着の柄は水玉ですにゃーん」

「あ!…ごめんなさい…」


 ロッカが読心術を使えた事を忘れていた…ごめんなさい…水玉かー…あ、ごめんなさい!


 人の心が読めるというのは、戦闘ではかなり有利になるはずだ。


「私が〜、ロウ様の心を読めるのは偶然ですよー。この能力には欠点がありまして~…うふふ。実力が私以下の場合じゃないとー、心の中が探れないのですぅ~。人間の男性は例外でー、無条件で理解出来るのですがー…ロウ様が元々~人間だったからですにゃーん」


 頬から冷や汗が流れる…昔から顔に出やすい性格で、幼なじみには考えてる事がバレバレだったのだ。


 あの頃の事を思い出すと、ロッカは幼なじみにそっくりで、最愛の人が目の前に蘇ったのかと錯覚させられる事がある。


「人間だった頃もあったな…まあかなーり昔の話だけどね」

「うふふ。私はロウ様が大好きですにゃん」

「な、なにさ!いきなり!」


 ロッカが正面から近ずいてくる…


 花凜を挟んでギリギリの位置で止まり、踵を上げて白い柔らかな腕を首に回してきた。


 顔が、唇が触れそうな程に近い…考えちゃダメだ!考えちゃダメー!


 ちょっかい出しすのは好きだが、出されるのには免疫が無い…


 だいたいロッカさんは彼女の生まれ変わりなどでは無く、彼女が息を引き取った時には、すでにこの世に生を受けていたのだ。


 見た目は20歳くらいでとても美人だが、実年齢はおおよそ…


「…けほん」


 今まで感じた事がないような殺気が放たれ、背筋に冷たいものがはしる。


 年齢に触れるのはダメらしい…


 ケロンも殺気を感じて表情が強ばった。


「ふふ…では~作ってきますにゃーん」


 殺気はそのままに、満面の笑みを作るロッカさん…


 思い起こしてみれば、ロッカさんにはいつも遊ばれっぱなしだった…


 心臓に悪いから勘弁して欲しい。


「あ…ありがとー」


 絡めた腕をゆっくり解いて、館へ歩きだしたロッカを見て、安堵の溜め息を吐く…しかし、ロッカは再びこちらへ振り返った。


「下着…見たいのですかにゃーん?」

「うん…あ、じゃなくて…あー…早く行って下さい…お願いします…」


 ロッカはまた少し微笑むと、館の中へ入って行った。


「ろう…ろろ…にゃん」


 ケロンに声をかけられて、自分が放心していた事に気付き、ハッとした。


 傍から離れようとしないケロンには悪いが、花凜をベットに寝かせるために、1度館の中へ入ろうと思う…それに今のやりとりで、どっと疲れが出たようだ。


「そんな目で見るなよ…また後で」

「にゃーん…」


 人化さえ出来るようになれば、ケロンも家の中で生活する事が出来るだろう。


 言葉もだいたい伝わるようになってきたので、そろそろ練習を初めても良い頃合いだと思う。


 ケロンの寂しそうな顔に、後ろ髪を引かれながら、花凜を抱きなおして館の中へ入った。


 中に入ると、ちょっとしたパーティーが出来る程大きなリビングになっていて、右に進むとキッチンがあるのだ。


 寝室は2階なので、今は1階に用事はない…入口を入ってすぐ左側に、少しお洒落な螺旋階段があるので、そこから2階へ移動する。


 螺旋階段を登りきると、左右に続く廊下が現れて、正面には湖が一望出来るバルコニーがある。


 一望出来ると言っても2階建てなので、そこまでの高さは無い。


 窓から入った光が、赤い絨毯を半分照らしていた。


 廊下を右へ進むと、書庫とロッカさんの部屋があり、左へ進むと、自分の寝室と空き部屋があるのだ。


 寝室はかなり広く、薄緑色の壁紙が、優しく気持ちを和ませてくれる。


 花凜と一緒に、そのままベットになだれ込みたい気分だ。


「まだ意識が戻らなそうだな…」


 そっと花凜が羽織っていたシャツを剥いで、ベットに寝かせた。


 傍らに、戦闘でとれてしまったらしい右腕を置く。


 後でロッカに花凜の服を用意してもらおう。


 窓を5センチくらい押し開くと、気持ち良いそよ風が入ってくる。


「花凜ちゃんの体ってポーション効くのかな?」


 オスカーの岩の体には、ポーションを使っても意味が無いと、昔本人が言っていた…花凜はどうだろうか?


 ロッカがちゃんと毎日掃除してくれているようで、何処も彼処も綺麗に磨き上げられている。


 ベットの脇にあるアンティーク調の小さな棚の中には、とても高価なポーションが数種類入っていた。


「これ使ってみるか」


 選んだのは魔力の回復を助けるポーションで、少し特殊なアイテムだったりする。


 胸の傷口から注いでみたが、飲み込めるなら飲んだ方がいい筈だ。


 同じポーションがまだ2本あるので、意識さえ戻れば後で飲ませる事が出来るだろう。


 花凜の閉じた目から、涙が滲み出てきていた。


「大丈夫だよ。あれだけ戦えてたんだから」


 きっと悔しかったんだろう…ハンカチを取り出して、涙を拭ってあげる。


 元々花凜とオスカーの実力は、何倍もの差があるように見えたので、戦闘にすらならないと思っていたのだ。


 それが間違いだったとは思わないが…


(それにしてもびっくりしたよ…頭の中がお花畑な奴って言い回しはあるけど、頭の上がお花畑になるのは、洒落にならないよね…あはは)


 艶やかなパールシルクで出来た薄布を、花凜の体にかけてあげた。


「良く頑張ったね…今はお休み」


 ベットの淵に腰掛けて、花凜の左頬を右手で撫でてあげた。


 早く回復してくれたら良いけど…


(花凜ちゃん、数時間は目覚めないだろうな〜。早くお話もしてみたいんだけどね)


 そよ風を感じながら、クラーケンとの戦いを脳内でシミュレーションする。


 クラーケンに守られて、全てを捧げた彼等との戦闘は避けられないだろう…


 みんな必死なんだ…大陸が破壊され、何千万人の人間が死のうが、彼等はクラーケンの命を優先する筈だ。


「はぁ~、戦いたく無いな…」


 花凜の左手が動いて、花凜の頬を撫でていた右手が捕まってしまった。


 無意識に動いたんだと思うけど、もの凄い力だ。


「…はむ」

「へ?」


 人差し指が花凜の口へ運ばれてしまう…口の中は生暖かく、ねっとりと絡みついてくるようだ…


「それ、おしゃぶりじゃないんだよ~」


 洒落にならない力を除けば、赤ん坊のそれと変わらない。


 なんか少しエロい気もするが、役得だと思う事にしよう。


 微笑んでいられたのもここまで!花凜の手に更に力が入ってきた…


「痛たたた!痛いって!折れちゃうよー」


 右手を捕まえている花凜の手を、自由な左手でタップした。


「花凜ちゃん?花凜ちゃーん」


 花凜はやっぱり無意識のようで、人差し指を吸い始めた。


(力が抜け…え?)


 人差し指からギュンギュン魔力が吸われていく…抵抗しようにも魔力の流出が止まらない。


「だ、駄目だよ!これ以上は!待ってー、待って~あぁぁあああ~吸わないで~……あふ…」


 疲労困憊の体に、ロッカによる精神的な披露も重なり、花凜のドレインにトドメをさされる…


 階段を駆け上がる音が聞こえ、すぐにロッカが部屋に飛び込んできた。


「あとは…任せ…た…(ガクッ)」

「あらあら…」





ーーーーーーーーーーーーーーーー





 数時間気を失っていたらしい…室内に風が吹いていた。


 ベットに仰向けで寝ていたらしく、視界に天井の板の継ぎ目がぼんやり見えてきた。


(あ…生きてた…)


 何かがゴソっと動いたので、そちらへ顔を向けてみる。


 傍らには、肌がつやつやな花凜が気持ち良さそうに眠っていた。


 右腕は花凜に完全に拘束されていて、腕枕をさせられている。


 傷が治り、腕もくっついているようだ。


「…地獄を見たよ…リアルで…」


 花凜の温もりと、柔らかい肌の感触が伝わってきて、成熟した体では無いが、意識しない方が難しい…


(平常心…平常心…)

 

「お目覚めですかにゃん?」

「ひぃ!」


 反対側から声がしたので振り向くと、ロッカが隣で添い寝している…びっくりして変な声が出てしまった。


(え?これどんな状況?)


 キングベットでスペースに余裕がある筈なのに、いや…問題はそこではなく、ロッカがぴったりとくっついていた。


「ロッカさん?何してるのかな?」


 これ以上ロッカが近ずかないように、左手を顔の前まで上げてガードする。


「ろう…にゃん」


 次は足元の方から声が聞こえたので、首を少し上げると、大きなケロンがベットを覗き込んでいた。


(どうやって中に?…あー…はいはい)


 寝室の1部の壁が破壊されていて、もはやそよ風じゃない風が室内に入ってきている。


「…はむ」


 左手の中指が、ロッカの口に咥えられた。


 ガードのつもりで出した手が、ロッカの餌食になってしまったのだ。


「ちょ!ちょっと…ロッカさん!そんな物舐めちゃだめだよー」

「ずるいです。私にもロー様を下さいにゃん」

「ろうにゃん、ケロン…も、にゃん」


 ケロンが軽く飛び上がった。


「待ってー!ケロンちゃーん!」


 ズシンという音と共に、全員がケロンの下敷きになる。


「うぅ…」


 身動き1つとれない…


(ん?)


 下腹部から服の中へ何かが侵入してきた。


 そこは絶対に触っちゃいけない場所!どさくさに紛れたロッカの仕業だろう。


「もごも!んむんんー!」


 ケロンのせいで声が出ない…


(あぁ…本当に…帰ってきたんだなー…)





ーーーーーーーーーーーーーーーー



【オスカー】




 俺は花凜との戦いの後、その場に残り、座禅をして精神統一をしていた。


『オスカー様、緊急事態かもしれません…』


 この声はアドモス…北の大陸で、魔族全体の動きを監視してもらっている。


『どうしたんだ?』

『魔王が何かを始めるみたいで、ちょっとまずいかも…』


 魔王は唯一宝珠の力を取り込んだ後も、自由に動く事が出来ていた。


 彼の魔法は服従の言霊…条件を満たす事で、どんな命令でも可能になってしまう。


 1:1で戦えば、勝率は半々といったところだろうか…


 だがそれは宝珠を取り込む前の話で、今の戦闘能力はわからない。


 魔王の事を彼と言ったのには理由があり、誰も彼の名前を知らないからだ。


『まったく…こんな時によー…痛ってー!』

『どうされたのですか?』

『いや、こっちの事はいい』


 頭をガリガリ掻いたら、花を傷つけてしまったらしい…


 ちょっと自分自身が情けなくて、目の端に涙が溜まる。


『で?何があった?』

『情報によれば、宝珠の複製を作ろうとしているとか』

『そんな事が可能なのか…?』

『わかりません。また何かわかれば連絡します』

『ああ、頼む。無理はするなよ』


 今度レイブに会ったら、宝珠の作り方を聞いてみよう。


 問題は増える一方だ…


 まずは目先の問題から片付けていこう。


(何とか体の中のイバラは除去出来たな…しかし…)


 頭から生える花には痛覚があり、斬っても抜いても生えてくる。


(あぁ…勘弁してくれよな)


 後で花凜に治してもらうしかないだろう。


 やる事があるので、あまりのんびりもしてられないのだ。


 溜め息を吐き出してから、項垂れる頭を左手で支えた。


「これも後回しだな」


 座った状態のまま、人間の姿の時に使う衣装部屋まで、直通トンネルを開く。


 ほとんど真下に部屋があるので、落ちて行けば良いだけだ。


「よっと」


 部屋にはすぐに着いた。


 頭の花が隠せればそれで良いので、手頃な帽子を探してみる。


 色んな帽子をかぶってみるが、花がひしゃげると、何だか落ち着かない…


「似合わないな…」


 最後に行き着いたのが、魔道士のようなとんがり帽子だった。


「仕方ないか」


 赤い長袖シャツと、黒い皮のベストを着込んで、すぐにロウのいる部屋の前へ転移した。


「やっぱり良いなーこの扉は!ロウの部屋って感じがしてよ」


 この城の中では、基本的に転移して出る事も入る事も出来ない。


 魔法による遠視も出来ないようになっているので、この城の中は何処よりも安全だ。


 数箇所だけ転移が可能な場所があるのだが、そんなのを無視して転移して来る奴が1人だけいる。


 元妖精王のレイブ・チム・ユメライだ。


 他の例外は俺と親父だけ…親父はこの城の最下層で、厳重な封印を施された部屋の中に居る。


 少し考え事をしている間に、俺の足は自然とロウの館の前に辿り着いていたようだ。


「おーい、ちょっといいか?」


 館の入口を開けると、リビングのソファーにロウが座っていた。


「お~…オスカー…」

「おい、そんなにやつれてどうしたんだよ?」


 今にも死にそうという勢いで、ロウの顔に生気が無い。


「オスカー様、いらっしゃいませですにゃーん」


 ロッカがキッチンの方から顔を出した。


 料理を作っていたらしく、美味しそうな匂いが漂っている。


 ロッカの方は逆に、いつもより肌がつやつやしているようにも見えた。


 カートに沢山の料理が乗っていて、後はテーブルに並べるだけらしい。


 深い一礼をして、こちらに笑顔を向けてくる。


「いや…まあ…いつもの事さ~…ただ、搾り取られ過ぎちゃって…ね…心も魔力も…色々とさ」


 だいたい何があったのかは想像が出来る…出来るが、何故魔力まで?それに心って…


「…そ…そうか…お疲れ様だな…疲れてるとこ悪いんだが、ちょっと動いてもらいたいんだ」

「んー?何すればいいのー?」

「1度花凜の家に行ってくれないか?その時が来るまで、俺は花凜を鍛えたいと思うんだ」

「ずいぶん花凜ちゃんを当てにしてるんだね…そんなに強かったの?」

「いや、花凜はまだ素人だ…でも鍛えれば化けるかもしれない。何を考えてるのかわからないところが気に入った。俺は花凜が回復するまでに、海底でやる事があるから、一旦城を出なきゃならないんだよ…だからそっちはロウに任せたぞ」


 ロウもロッカも少しびっくりしたようだ。


「おーけー…オスカーにそこまで言わせるなんて意外だったよ。あ、ご飯食べていく?」

「俺は~…遠慮しておくよ」

「ロッカさんのご飯は本当に美味しいんだよ。何か体に染み渡る~っていうかさ」


 カートの上の料理を見てみると、赤沼スッポン鍋、ベヒーモスの黒焼き、マムシ濃縮ドリンクetc…上手くカモフラージュされているが、眠のポーションに麻痺の小瓶まで…


 きっとこの後も搾り取られるのだろう…そんな予感のするメニューだった…


 当の本人は気づいていないらしく、ただただ料理が楽しみらしい。


(ロウならきっと大丈夫だ。元最強の人間…剣聖ロウマリオス・ベイリー・モーガンならな)


 要件は伝えたので、すぐにでも仕事に移るとしよう。


 あれは見なかったのだ!そうだ!俺は知らないさ。


 少しでも戦闘を有利にするために、大規模な要塞を海底に建てようと思う。


「久しぶりに帰ってきたんだし、ゆっくりみんなで料理を楽しむと良いさ。落ち着いたら出発してくれ。それじゃあまたなロウ、ロッカ」(オスカー)

「行ってらっしゃいオスカー。気をつけて」(ロウ)

「あぁ…お互いにな」(オスカー)

「行ってらっしゃいませにゃーん」(ロッカ)


(本当に大丈夫か?)


 少し不安になったが、気を取り直して館を出る。


 ロッカに頼んだのが間違いだったのかもしれない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ