決戦準備(4)
34話まで書き直し完了致しました(*^^*)
少しずつですが、書けば書く程気付く事が増えて、足りない部分が減ってきている気がします。
頑張って成長していきたいと思いますので、最後まで応援してもらえたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
私が過去の真実を伝え終えると、リグルートはリオンに頭を下げた。
すまなかった…リグルートの言ったその言葉が、人間を代表しての謝罪のように聞こえた…リグルートがどんな思いで、口に出した言葉かなのかはわからない。
ここは大作戦会議室、夜も遅い時間だが、沢山の人が集まっていた。
リグルートからの緊急連絡で、貴族達にクラーケンの接近が伝えられる。
今はまだ内陸の住民や兵士には、クラーケンの接近を伝えられていないが、混乱を避けるために、対策の方針が決まってから連絡するのだろう…
転移の魔道具や高速移動出来る乗り物で、国中の貴族が、この大作戦会議室に集まって来ている。
城全体が殺気を放っているかのように、重々しい空気が立ち込めていた。
「まだ集まらんのか!早くしろ!」(クラウド)
クラウドはいつもの剣呑とした表情では無く、軍事の最高責任者としての顔を見せた。
彼は武闘派では無いと聞いていたのだが、この会議には青銅の鎧を着て望むらしい。
今は一刻の猶予も無いと言うように、緊張感に満ちた空気が、周りへと伝染していく。
そんな空気を作り出しているのが、まさにクラウドなわけだけど、普段とのギャップがある事が、予想以上に効果を発揮しているのかもしれない。
(クラウドさんは絶対怒らせちゃいけない人だ…)
大作戦会議室は、オペラホールを少し小さくしたような部屋だった。
オペラホールのまま説明させてもらうと、観客席側に扉が3つあり、通路が3本真っ直ぐステージ方向へ通っている。
声が反響しやすく、隅々まで聞き取れるように、配慮された造りになっているようだ。
一度に入れる人数は200人程度だが、それでも大きな部屋には違いない。
ステージにあたる場所には、長いテーブルが2つと、壁にこの大陸の地図だと思える絵が描かれていた。
その絵は少し凹凸があり、油絵のように力強い。
観客席側から見ると、テーブルはハの字にセットされていて、代表者6名が座れるように、黄金の椅子が3つずつ設置されている。
座席と背もたれには、赤いクッションのような物がついているので、意外と座り心地も悪くない。
正面の壁の少し高い位置に、王様が座る椅子があり、大作戦会議室全体を見渡せるようになっている。
こちら側から王様の椅子へ向かう道は無く、椅子の奥に王様専用の出入り口があるのだろう。
定員数に限りがあるので、会議室に入る人数を絞る必要があった。
なので私達は、妖精王の4人だけで、この会議に参加するつもりでいる。
私は代表の椅子を1つもらい、大貴族達の並ぶ1番端っこに座らせられていた。
(知らない人がいっぱいだよ…まだ会議始まらないよね?)
私の座る隣には、獅子のような顔をした貴族がいた。
何故か私をずっと凝視しているようで、私は必死に顔を背けている。
(気まずい…)
黒い鎧を普段着のように着こなしていて、ミミックと同じくらいの大男である。
(私…何かやっちゃったかな?この人怒ってる?)
流石にずっと顔を逸らしているわけにはいかないので、私は見つめ返してみた。
「こ…こんばんゎぁ…」(花凜)
「…………」(獅子顔の大男)
(何も喋ってくれない…)
私はひとまず諦めて、獅子顔の大男の事は考えないように努力する。
リオンとドクとミーは、会議を見守る側の席に座らせられていて、ドクは眠そうな顔を頬杖で支えていた。
3人は横一列に並んでいるので、こちらから見ると少し楽しそうで羨ましい。
大事な作戦会議ではあるが、リオンが素直に従っていたのが意外だと思う…
『今失礼な事考えなかったか?』(リオン)
念話で言ってくる徹底ぶりである。
(ちょっとみんなのとこ行こっかな…)
私は席を立つと、リオン達の側へ駆け寄った。
獅子顔の大男はまだ私を凝視している。
「良いのか?花凜」(リオン)
「んー…あそこは居心地が悪くてね…もらった椅子は持って帰るよ」(花凜)
「そういう意味でくれた訳じゃないと思うけどな…」(リオン)
「ご飯食べたら眠くなっちゃったよ…ふぁー」(ドク)
ドクが盛大に欠伸をする。
それにつられてミーも大きな欠伸をした。
「私もだよ…もし私達が寝ちゃったら起こしてー…ししょー」(ミー)
「寝ても大丈夫だぞ?」(リオン)
「いや、ダメだろ」(リーファウス)
いつの間にか、リーファウスが私達の近くへやって来た。
なんだかいつもとは違った服装で、なんと言えば良いのだろうか…
「あ、リーファウス王子様っぽいよ?」(花凜)
「ほんとだな!まるで王子様みたいだ」(リオン)
「お前らな…っぽいとかまるでとかは付けなくていいのに…」(リーファウス)
リーファウスが少し拗ねた顔をする。
「あはは、ごめんね」(花凜)
服装は白と金と青の3色で統一されていて、急所の場所だけに金属のプレートがついた革鎧になっていた。
腰にはショートソードが2本も装備されていて、もしかしたらリーファウスは2刀流なのではないだろうか…
素直に褒めても良かったのだが、いつも通り接してあげる事にしたのだ。
これから会議なので、リーファウスはそれに向けた正装をしているのだろう。
「かっこいいよリーファウス」(花凜)
「……うむ」(リーファウス)
機嫌が治ったようで良かったと思う…私がリーファウスの頬を突っつくと、少し赤くなってきた。
すぐに顔が赤くなるのは、リーファウスの体質なのかもしれない。
私は周りの状況を確認する。
(だいたい8割くらい集まってるね…そろそろ席に戻った方がいいかな?)
リーファウスも私と同じように、周りを見渡していた。
「王の後ろに立つ故、先に行くな」(リーファウス)
「あ、うん!わかった」(花凜)
リーファウスは、まだ準備する事があるのだろう。
リグルートの後ろに立つと言う事は、それと同時に注目も集まってしまうはずだ。
しばらく自由に動けないと思うので、リーファウスも大変だと思う。
私はお姉さんとして、リーファウスの面倒を見る必要があるはずだ。
「ちゃんとトイレ行っとくのよ?」(花凜)
「大丈夫だ…また後でな」(リーファウス)
(あら?素直ね…)
少し言い返されるかと思ったが、思いの外素直な返事が返ってきた。。
(やっぱり緊張してるのかも?)
王子として、リーファウスはこの大作戦会議室に来ているのだ。
リーファウスに気づいた貴族達は、頭を下げて道を譲っていた。
「Zzzz…」(ドク)
「ドク起きて!寝るのは会議が始まってからだよ」(ミー)
「あ…ごめん…そうだった」(ドク)
「ごめんね…もう少し起きててドクちゃん」(花凜)
こんな大事になるとは、正直思っていなかったのだ。
戦うのは私達で、リグルートには避難誘導などをしてもらうつもりだった。
しかし、私がパンメイラの出来事と、5つの法則の真実を伝えた事で、リグルートはそれを重く受け止める。
そして…リグルートは、リオンに頭を下げたのだった…
「ねぇリオン…なんだか凄い事になっちゃったよね…」(花凜)
「そうだな…生きてるうちにこんな事になるとは思わなかったぞ」(リオン)
「ここの人達全員が、目指す目的は違っても、みんなリオンのために動いてくれる」(花凜)
「考え方によってはそうだな…人々を守るためだとしても、クラーケンと戦う事には違いない」(リオン)
「自分達の大切な場所を守りたい…花凜ちゃん」(ドク)
「ドク…」(ミー)
「なーに?」(花凜)
ドクは真剣な表情になった…普段は見せないような大人の顔に、私は少し同様する。
「ソルの街には、絶対に守りたい場所があるんだ…」(ドク)
「私達、その場所が守れるのなら何でもするよ」(ミー)
2人からは、堅い決意に満ちた言葉を受け取った。
私もソルが大事だ…ソルには沢山の思い出がある。
ドクとミーに出会い、家族と呼べる人達に囲まれて、生まれて初めての経験を沢山させてもらったのだ…
「……わかった!私もソルを戦いに巻き込むつもりは無いよ」(花凜)
私も真剣に言葉を返した。
「ありがとう花凜ちゃん」(ミー)
「花凜ちゃんになら、俺達の命を預ける事が出来る」(ドク)
ドクの表情は柔らかくなり、私に頷いてくれる。
私も笑顔を返したが、1つ忘れていた事があったのだ。
「うん!帰ったらお仕置きするからね♪」(花凜)
2人の顔が苦笑いに変わった。
「私も、これ以上何も失いたくはない…花凜を巻き込みたくは無いのだが…止めても無駄なんだろうな」(リオン)
「無駄だね!」(花凜)
そう、いくら止めても私は止まらないだろう。
今リオンが変な事を言えば、私はデコピンをお見舞いしたかもしれない。
「私そろそろ戻るね」(花凜)
「わかった」(リオン)
席に向かって歩き出すと、沢山の視線が私に集中しているのがわかった。
急に話し声は遠くなり、殺気のこもった魔力で、威圧してくる者もいる。
全て無視したが、緊張もあり自分の足音が嫌に大きく感じた。
代表の大貴族達が、既に5人席に着いている。
全員独特な雰囲気を纏っていて、明らかに強者の風格が板についていた。
「こんな所に何故娘や子供が居るのかと思ったが、お前が噂になっている花凜なのか?」(灰色の髪の男)
「はい…花凜です」(花凜)
灰色の髪をポニーテールにした40代前半の男性に話しかけられた。
(この人達…多分みんな強い…)
「彼女が困っているでしょう?自己紹介からしてあげないとね」(長い金髪のやさ男)
次に喋った男は、見た目が細身のやさ男で、喋り方はとても丁寧だった。
長いストレートの金髪で、20代後半に見える。
「わーったよ…俺はジョゼフ・マーティンだ!バリエントの領主をしている。領地はずっと南で、うちもお前のとこと同じ海岸沿いの土地だ」
グレーの髪の男はジョゼフ・マーティンと名乗った。
地名を言われても私にはわからないが、海岸沿いと言う事でイメージはしやすい。
ジョゼフの言葉使いは少し荒い…しかし、見た目からは知的な印象を受ける。
黄土色の瞳に、手首まである丈夫そうな革のコート、白い手袋と、懐に銃のような物を装備している。
「よ…よろしくお願いします」(花凜)
「私はジェム・クラーク、霊峰の近くのミーシーリアを領地としている。来る事があれば歓迎するよ」(ジェム)
長い金髪の男はジェム・クラークと名乗る。
(覚えれるかな?…うぅ…ジョゼフさんがバリエント…ジェムさんがミーシーリア?)
ジェムはいかにも貴族らしい格好をしていた。
羽根付き帽子にヒラヒラした服装で、腰にレイピアを下げている。
戦闘なんて不向きに見えるが、鬼よりも強い生命力を感じた。
「よろしくお願いします」
私はジェムに軽く頭を下げる。
「私はアシュリー・ガルシア」(アシュリー)
この大貴族達の中で、私を除けば唯一の女性だ。
髪は赤茶色で、お団子ヘアにしてある。
年齢は25くらいに見えて、身長は多分170センチ近くあるだろう。
「ここから南東のミルフリークを領地に持っている。クレイに行く事があれば、私の領地を通る筈だ」(アシュリー)
クレイに行く予定はあるので、アシュリーにはいつかお世話になるかもしれない。
話し方は武人のように力強いが、透き通った声が荒々しさを感じさせない。
銀色の甲冑に身を包んでいるが、細身なので圧迫感は無い。
私と同じひんぬ…やはりそこは伏せておこう。
「よろしくお願いします」
一言言わせてもらうなら同士だ。
武器は持ってきていないようだが、何かの達人で間違い無いだろう。
「そもそも成り立て伯爵のお前が、なんでここに座ってるんだ?」(ジョゼフ)
「彼女がクラーケンの接近を告げたらしい…本当かどうなのか怪しいな」(低い声の男)
この低い声の男は、紺色の髪にねっとりとしたウェーブがかかっていた。
「私はダニー・トレス、コークアを領地に持っている。鉱山の採掘をしていて、場所はラグホームとミーシーリアの中間だ…」(ダニー)
「よろし…」(花凜)
「そもそもだ…」(ダニー)
私が挨拶を返そうとしたら、ダニーは更に言葉で遮った。
「ここは、お前のような子供が座って良い場所じゃない…うちの領地にも来なくていい…早く帰って子供は寝ていろ」(ダニー)
「えーと…」(花凜)
これはどう返事をしたら良いのだろうか?
偉い人が沢山集まっているこの場所に、私が何故同席しているのかを、疑問を感じていない訳では無い。
私のコミュ力で、この言葉をどう扱ったら良いのだろうか…
「ダニーさんは花凜さんの事を心配しているだけさ」(ジェム)
私がダニーの対応に苦心していると、ジェムが割り込んで来てくれた。
ジェムがまるで救いの天使のように感じられる。
「ふん…余計な事を言うな」(ダニー)
ダニーはジェムに威圧をかけ始める。
それに対して、ジェムは涼しい顔をしていた。
「彼は領民からの信頼も厚い。勘違いされやすいが、花凜伯爵を心配しているだけなのさ。ダニーさんの領地は、霧に覆われた山岳地帯で危ないからね…君が見た目通りの子供で無いのはわかっているが、今回の会議にも参加させたく無いのだろう」(ジェム)
ダニー・クラークは40代後半に見える。
厳しい言葉の裏側には、とても優しい部分が隠れていたのだ。
確かに優しそうな目をしているが、さっきのような言葉は、誤解を受けても仕方ないだろう。
「よろしくお願いします」(花凜)
「よろしくなどせん。まったく…」(ダニー)
ダニーは眉根を寄せて、溜め息を吐くと腕を組んだ。
私はこの人が嫌いじゃないと思う。
(最後はこの人なんだけど…)
獅子のような顔に、逞しい体…ずっと私の事を見ていた人だ。
今も無言で私の事を見つめている。
「ヴィリーガン…何をそんなに見ているんだ?」(ジョゼフ)
「……」(ヴィリーガン)
獅子のような顔をした男は、ジョゼフにヴィリーガンと呼ばれていた。
ここまでずっと沈黙していたが、ヴィリーガンは観念したかのように私から視線を外した。
「…ダメだ…花凜だったか?俺はお前に勝つビジョンが全く見えない…1000回戦えば1000回負けるだろう」(ヴィリーガン)
「なんだと!」(ジョゼフ)
その場全員が凍りついたような顔をする。
ジョゼフの顔は驚愕に染まり、ジェムは真剣な表情になった。
「まさか…それは流石に言い過ぎでは?」(ジェム)
「いや、事実だ。それに花凜の連れの1人、あそこにいる白い髪の少女にも勝てないだろう…」(ヴィリーガン)
「これは驚いたぜ…真実の目を持つあんたの言葉なら、間違いは無いんだろうがな…」(ジョゼフ)
「花凜よ、いつか手合わせを頼む」(アシュリー)
私もリオンも完全に魔力を遮断しているのだが、このヴィリーガンという男にはわかってしまうらしい。
真実の目とは何なのだろうか…
「俺の名はヴィリーガン・バトラー、グリーンダナーを領地に持っている。最強の獣人と呼ばれていたのだがな…いつか俺とも手合わせを頼む」
「はい、わかりました。その時はよろしくお願いします」
1度に沢山の名前と地名を教えられて、頭がいっぱいいっぱいになる。
覚えるのに必死で、手合わせを安請け合いしてしまった。
(これで全員…覚えきれないよー)
「みんな揃っているな」
少し高い位置から声が聞こえてきた。
その声の主はリグルート王で、鎧姿に着替えていた。
貴族達は全員立ち上がり、リグルートに頭を下げている。
ドクとミーも周りの雰囲気に飲まれて、貴族達と同じように頭を下げていた。
リオンは座ったまま腕を組んでいる。
私もみんなに合わせてリグルートに頭を下げた。
「楽にしてよい!」(クラウド)
リグルートが椅子に座ったのを見て、クラウドが会議室全体に聞こえるように、響く声で言葉を放った。
それを聞いた全ての貴族は、再び椅子に座り、姿勢を正す。
「ジョゼフよ、忙しいところ呼びつけてすまんな」(リグルート)
「国の一大事に駆け付けるのは当然の事です」(ジョゼフ)
「我々みな同じ気持ちでございます」(アシュリー)
リグルートの後ろにはリーファウスが立っていて、その隣に小さな男の子が立っていた。
もしかしたら…いや、もしかしなくてもリーファウスの弟だろう。
見た目7歳くらいだと思うが、態度は堂々としたものだ。
(あ!目が合った…)
私がお構い無しに見つめ続けていたら、弟は踵を上げて背伸びをした。
自分を大きく見せたいのだろうが、無理をしているせいでプルプル震えている。
「ではこれより、クラーケン対策会議を執り行う!」(クラウド)
クラウドが司会進行役のような事をするらしい…とうとう作戦会議が始まるのだ。




