英雄とは?
(何でこんな事になったんだろう…)
私達は豪華な馬車に乗せられて、明るい街を凱旋させられている。
爵位を与えられ、領地を与えられ、綺麗なドレスを着せられて…
これは私の知る世界では無い…
綺麗な花弁が舞い、手を振る人達、仰々しい程の護衛、私の名前を呼ぶ声、私達を見る沢山の笑顔…
(これ、何か違うなー…)
今になってやっと、ロナウドが顔を青くしていた理由がわかる。
こんな事になるなんて、私は予想もしていなかった…
もう少し軽いものだと考えていたので、私は萎縮している。
ドクとミーは楽しそうに手を振っているので、やはり大物なのかもしれない…
(あわわ…みんな凄い見てるよ〜)
「花凜、怖いか?」(リオン)
「…うん、ちょっと怖い…」(花凜)
「そうだろうな、だけど怖がる必要はないぞ?」(リオン)
「んー…」(花凜)
「……私がずっと花凜の側にいる…環境が変わっても、私達は何も変わらない」(リオン)
「そうかな?」(花凜)
「ああ、そうさ!花凜、嫌になったら全部捨ててしまえ!」(ロナウド)
「良く言ったロナウド!そうだ、皆花凜について行く、国や爵位などどうでも良い」(リオン)
「私も爵位なんてどうでもいいよ!皆と一緒が1番だから」(ミー)
「うん!ちょっと楽しかったけど、もう飽きたよ」(ドク)
「皆ありがとう!そうだよね!」(花凜)
「あ、あの…そういう事は、余が居ない所で話してくれぬか?」(リーファウス)
皆のお陰で、私は元気に戻る事が出来た。
私の大切な物、それは大切な者達…
私は何も変わらないのだと皆が教えてくれたのだ。
これからもずっと、こんな日が続いていくだろう。
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全ての行事がやっと終わり、私達は自由になった。
今は王宮の談話室で、リーファウス、リグルート、ロナウド、リオンと私、エルとクラウドの7人でお茶を飲んでいる。
お菓子やケーキが白いテーブルの上に並んでいて、見ているだけでも楽しめた。
部屋の出入口に兵士が立っていて、リグルートの周りを絶えず警戒している。
(とても優雅な場所なのね)
談話室は屋根までガラス張りになっていて、沢山の光を取り入れる事が出来るようだ。
外は芝生になっていて、ドクとミーはその上に座っている。
私達が快適に過ごせるように、邪魔にならないくらいの音量で、演奏が奏でられていた。
見た事ない形の楽器が多いが、金管や木管、バイオリンやベルなど、似た様な物も沢山ある。
ドクとミーは、その楽団の前に陣取っているのだ。
「クラウド、報酬とあれを配ってくれ」
「はい、陛下」
リグルートがクラウドに指示を出すと、クラウドはすぐに立ち上がる。
クラウドの指に綺麗な青い指輪がはめられていて、不思議な輝きを放っている。
すぐに浮遊する半円球の台座が現れ、ゆっくりクラウドに吸い寄せられていくようだ。
「それは魔道具なの?」(花凜)
「そうだよ。ただの物を乗せる魔道具だが、意外と重さに強いんだ」(クラウド)
クラウドの口調はとても優しく、私がわかりやすいように丁寧に教えてくれた。
クラウドの思い通りに動く台座には、宝箱が2つ並んでいた。
「まずこちらが、報酬の王金貨5000枚です」(クラウド)
それを聞いたロナウドが椅子から落ちそうになった。
私はなんだかわからないが、1枚取り出して見る。
「わー…これ綺麗だね!」(花凜)
「次にこちらが伯爵の証です」(クラウド)
「これも綺麗!」(花凜)
私は単純に綺麗な物が好きだったりする。
王金貨は白銀色で、私には価値がわからないが、見た目はとても気に入った。
物欲と言うわけではないのだろうが、ただ綺麗な物を眺めているのが、私は好きなのだ。
王金貨と貴族の証を受け取り、私はお気に入りのコートにその証を取り付ける。
伯爵の証は6角形の形をしていて。材質は純金で造られているようだ。
星と鷹が彫り込まれていて、思ったよりかは分厚い。
「妖精王花凜伯爵、それは国が危険になると、鳴いて教えてくれる魔道具になっている。
だから普段から身に付けるか、持ち運びしてほしい」(リグルート)
「わかった!じゃあこれが鳴いたらリグルートさんまで転移するね!」(花凜)
「ああ、よろしく頼む」(リグルート)
国の危機…それはリーファウスも危ないと言う事なので、それが知れるのは嬉しい。
リグルートは私が素直に了承したので、ひと安心した顔になった。
私がずっと自由奔放に振る舞っていたので、きっとリグルートは心配だったのだろう。
ここでの用事が全て終わったので、やっと肩の力を抜く事が出来る。
(短いようで長かったな…)
「何時でも遊びに来てくれ」(リーファウス)
「うん!一旦ソルに帰るけど、来る用事があるからね」(花凜)
今までずっと一緒にいたので、リーファウスは少し寂しそうな顔をした。
しかし王子を連れ回す訳にもいかないので、こればかりは仕方ないのだ。
戦闘訓練学校を見に来たいと思っているので、私はすぐに戻って来るかもしれない。
「そろそろ帰ろう」(リオン)
「そだね。ドクちゃんとミーちゃんを呼んできてもらえますか?」(花凜)
「はい!すぐに!」
リオンの言葉が切っ掛けとなり、私達はソルに帰る仕度を始める。
それぞれが自分の荷物を魔法鞄に詰めているので、仕度と言っても対した事は無いのだ。
ドクとミーを呼んできてもらえるように、私は兵士の1人にお願いをする。
ソルには一旦帰るが、ソルにずっと留まる気は微塵もない…
公爵が居なくなったソルを落ち着かせたら、もっと色んな世界を見てみたいのだ。
私達は自由に旅をする気満々である。
「私達は冒険者と商人だ。
ソルの領地は問題無く面倒を見るが、貴族の集まりなどには出席はしない」(リオン)
「…わかった。
別にお前達を拘束するつもりは無いのだ…だが功績に見合う報酬は必要だ…民に夢を与えるためにな」(リグルート)
「良かったー、自由に冒険者していいの?」(花凜)
「はっはっはっは!領地は与えたが、いきなりどうしろと言われたって、何もわからんだろ?
領地は他の者に任せるから大丈夫だ!形式上は花凜伯爵が領主になるが、何も心配する事は無い」(リグルート)
リオンが私の考えを代弁してくれて、こちらの意向をしっかりと伝えてくれた。
リグルートから正式に許可が出たので、これで普通に冒険者が出来る様になったのだ。
「じゃあまたね!リーファウス」(花凜)
「ああ、またな花凜」(リーファウス)
リーファウスの笑顔に見送られて、全員庭に集まった。
(よし!みんな居るね?)
近くで見ていたリーファウスに手を振り、ソルの街に転移で帰ってきた。
「ああ〜…なんだか久しぶりな気がするよ〜」(ミー)
「家はいいね〜」(ドク)
ドクとミーは帰るなりすぐにリビングのキノコソファーで横になった。
「いやー、俺も疲れたよ…はぁーー…生き返るな~」
いつもはそんなにだらだらしないのだが、ロナウドまで絨毯の上に転がりだした。
本当は領地とか欲しくは無かったのだが、実は領地をくれると言われた時に、ミーとドクの仲間の事を思い出したのだ。
領地があれば、2人の仲間を助けた時に、全員ソルに住まわせる事が出来るのではないだろうか。
(私、頑張るからね!ドクちゃん、ミーちゃん)
私もドクとミーの居るソファーに飛び込み、じゃれる様にゴロゴロしていると、リオンも一緒にゴロゴロしはじめた。
これが団欒と言えるものだろう…今私達は、皆幸せと胸を張って言えるはずだ!
「あれ?…」(花凜)
「ん?どした?……あ…」(リオン)
「なんだ?ん?…ああ、そうか…」(ロナウド)
「「どうしたの?…あ!」」(ドク、ミー)
「…エル忘れてきちゃった……行ってきます」(花凜)
私はすぐにエルの前に転移をした。
「ごめん!迎えに来たよ」
ここは王宮の出口付近で、エルは城下町に出るところだったらしい。
私はエルにとても感謝をしている。
エルが居なければ、リグルートにこちらの状況が伝わらなかったかもしれないのだ。
王様と親しくなれたのも、エルの力によるところが大きいはずだ。
「ああ、大丈夫!ありがとう、俺王国で少し働こうかと思ってるんだよね」
「冒険者の仕事?」
「うん、だから親父に伝えといて」
「わかった…あのね、パパだけパパだとおかしいから、エルをお兄ちゃんって呼んでもいい?」
「…親父が認めてるんだ、花凜さんは妹だよ!好きに呼んで構わないさ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
エルはやっぱり優しいのだ。
たまに壊れちゃうのは仕方ないのだろう…仕方ない?
私はお兄ちゃんが出来て嬉しかった。
ただすこーしだけ心配が無いわけでもない。
「お金は大丈夫?着替えはある?住む所は平気?変な人に絡まれたりしない?迷子にならないでね!あと…体に気をつけてね!うがい手洗いも忘れないで」
「……まるでオカンだな…」
エルはひとまず大丈夫そうなので安心した。
一応ラグホーム周辺はもくちゃんだらけにしておく。
これで転移先も充分確保出来たし、ラグホームに何かあればすぐにわかるだろう!
ちょっとだけのつもりだったが、何時の間にか辺りが暗くなってきているようだ。
早く帰らないと皆心配するかもしれないので、私は人目を避けれる場所を探す。
気にする程の事でも無いかもしれないが、一般の人がいる街中なので、軽々しく転移もしない方がいいだろう。
(あれ?あれはもしかして…)
偶然にも、私が近日中に探そうかと思っていた戦闘訓練学校を見つけた。
日本の建物で言うと、昔の木造校舎のようなシンプルな造りに似ている。
看板の文字はまだほとんど読めないのだが、花凜シスターズに頑張ってもらっているところだ。
教室みたいな場所も見えて、庭は実技、中は座学なのだろうか?
(ちょっと覗いていこ♪)
「てやーーー!」(若い男の人)
「うおりゃーーー!」(渋い男性)
(凄い声ね…)
私が学校に近付いて行くと、庭の一角に模擬戦が出来るようなスペースが造られていた。
気迫の篭った声で、木刀で戦っている2人の男性を見かける。
学校に来れば友達が沢山作れるだろうか?
日本の学校とは違うのだろうが、クラスメイトとかに憧れていた。
(剣術の稽古中かな?)
私は剣術を覚えたいと思っている。
だってかっこいいじゃない?って言う理由と、強くなりたい気持ち…私は心を鍛えたいのだ…
でもやっぱり斬るのは怖い…血がドバっときたら…
「見学かね?綺麗なお嬢さん」
「あわわ!」
私はびっくりした!いきなり背後から声をかけられて、気配に気づかなかった…
余程集中して、剣術の稽古を見ていたのかもしれない。
「あ、はい!すいません!」
「構わないさ!君も冒険者になりたくて、訓練学校の見学をしにきたんだろ?」
「…いえ…そういうわけでは…」
「はっはっは!隠さなくてもいい、私はここの講師だ」
学校の講師さんは、私にどんどん話しかけてくる…
(うぅ…違うのにな…でも学校に入りたいのは同じだから、別に否定しなくてもいいのかな?)
悪い人ではないように見えるが、私には苦手なタイプだ…
ここは逃げ…聞きたい事だけ聞くとしよう!
「あのー、入学するにはどうしたらいいんですか?」
「ん?入学には金貨150枚かかるんだ、しかし今年は募集終わってしまったからなぁ…」
「うぅ…残念…それに高い…」
お金には困っていないが、金貨の価値は大体わかる。
150枚はかなり高い方だろう。
「金が高いのは全寮制だからだよ。
寝る場所と飯も出るからだ…全寮制じゃない学校は無いけどな」
「ええー!寮入らなきゃいけないの?」
「戦闘訓練学校はどこも寮だぞ?」
「教えてくれてありがとうございました」
流石に寮に入ってまで勉強するのは困るのだ…
(でも強くなりたいんだよねー…リオンと私が人間の技術を学べば、かなり成長出来ると思うんだけど)
リオンが人間と生活していたのは100年も昔で、ドクとミーの戦い方を見れば、人間の技術の進歩が伺える。
もしかしたら私の世界樹枝を、どんな武器にするのかヒントが掴めるかもしれないのだ。
「いいさ…それに、今年の募集は終わったんだけど、今戦闘訓練学校に入りたい人が激増しててな…もしかしたら再募集するかもしれないんだよ」
「え!再募集?」
みんなと相談しなければ、今はまだ決める事は出来ない。
近いうちに再募集の可能性があるらしいので、それまでに話し合いをしておいた方がいいだろう。
「ああ、そうだ…皆憧れてるんだよな…国を救った英雄が一気に伯爵になって…しかもその伯爵って言うのが、君みたいに若くて美人でな!
俺も私もって学校に人が詰め掛けて来てるんだよ」
(え?それ私の事?ん?…)
「その人の名前って?」
「なんだ知らないのか?妖精王の花凜伯爵様だ」
私でした…ごめんなさい…
私のせいで学校は大変なのだろう…
「…何かすいませんでした…」
「なんであんたが謝るんだよ!ん?………………」
「え?何でって?」
今は私が伯爵だとバレてはいないようだ…
とりあえず厄介な事になる前に帰る事にしよう♪
(はぁ〜、暗くて助かったー)
街を凱旋させられた時は、城から貸し出されたドレス姿だったのだ。
なので、コート姿だとすぐにはバレないのだろう。
城から貸し出された衣装は本当に綺麗で、お父さんとお母さんにも見せたかった…
「花凜伯爵様ーー!!!」
いきなり大声を出されてびっくりした!
反射的に両耳を塞ぎ、座り込み目を閉じる。
(ここは私の世界ここは私の世界、すーはーすーはー…あー…怖かった…)
私は耳を塞いで座り込んだまま講師の男を見ると、その人は土下座をして何か謝っているようだった。
私は今耳を塞いでいるので、何も聞こえていない。
庭で剣術の稽古をしていた2人も、こちらを向き跪いている。
(ええ〜!!!どうしよ…どうしよーーー…帰ろ…)
私はソルに転移して消えた。
「ただいま!」
「おかえり、あれ?エルは?」
「王国で冒険者の仕事するから、少し残るって」
「そうか、わかった!まあエルなら問題ないだろう、リグルート王にも気に入られているから」
「うん!」
エルの伝言をロナウドに伝えた後で、私達は夜ご飯を食べる事にした。
「コクヨウ、今日はなーに?」
「おかえりなさいませ、今日はなんだかよくわからない魚のパイ包みと、マカロニサラダと、なんだかよくわからないキノコの天ぷらと、なんだかよくわからない果物と、うなぎの串焼きです」
「あー、美味しそう!なんだかよくわからないけど!」
なんだかよくわからないが美味しかった。
皆も満足している様子。
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【講師】
(あーーー!!なんてこった!俺はなんて無礼をしてしまったのだ…)
目の前の美少女に、俺は正体も知らずに話しかけた…
彼女は今、国民の憧れ的存在と言っても良いだろう。
街中で話題の中心になっている妖精王花凜伯爵様だったのだ!
そんな彼女が、こんな場所に誰が居ると思うだろうか…
冒険者でも数少ない優秀な回復魔法の使い手で、間違いなくトップの実力を持っている。
この人に治せない病気は無いとまで言われていて、噂では黒炭病すら治したそうだ。
公爵から狙われたリーファウス様を護り、グラシアンの鬼部隊をたった4人で壊滅させた英雄!
平民から一気に伯爵の地位を賜り、ナンバー冒険者になるのも決まっているらしい。
ナンバーも、きっと1桁ナンバーになるんじゃないかと言われる程の強者だ…
「すいません!!何も知らずに無礼を!」
そんな人に、俺は驚いて大声を浴びせてしまったのだ。
少し花凜伯爵様の様子を見てみると、やはりとても綺麗だった。
さらさらの髪は深い緑色で、白い肌に金色の目、うずくまって怖がっている姿が愛らしくすらある。
少し涙目になっているようだった。
しかし相手は伯爵様、俺は打ち首になるかもしれない…
あんなに馴れ馴れしく話しかけてしまった。
周りをキョロキョロして、耳を塞いでいた花凜伯爵様は、俺の目の前から忽然と姿が消えた。
「へ?」
状況が理解出来ない…
花凜伯爵様は、詠唱も無しに転移してしまった。
まさかと思い気配にを探るが、生徒以外誰もいないので、光魔法の可能性はない…
「次元が違う…転移を魔道具も使わずに無詠唱だなんて…」
しばらく呆然としてしまっていると、生徒が2人駆け寄ってきた。
「先生!今のって本当に?」
「か、花凜伯爵様なんですか?」
「……ああ、今のは妖精王花凜伯爵様だ」
花凜伯爵様は学校に入りたそうにしていた…何故かわからないが、今更ではないだろうか?
俺は更に考えると、1つの可能性に辿り着く。
(まさか…花凜伯爵様は、学校の講師がしたかったのだろうか?
いや、それこそまさかだよな?一応校長にも話しとくか)
もし花凜伯爵様が入学を希望するのであれば、物凄い人数の生徒が集まるはずだ。
(どちらにしろ、忙しくなるかもしれない)
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【花凜】
私の1番落ち着く瞬間は、リオンと一緒に入っているベッドの中である。
これを邪魔しようとするものは全部敵!全てをかけて倒す必要があるのだ。
「花凜、そろそろ起きろ、朝飯の時間だ!」
「もう少しだけ…」
「さっきも言っていただろう…時間は待ってはくれないのだぞ!」
「…」
私は時間を倒す必要があるようだ…
『ねーねードリちゃん…時間を…』
『無理です…』
『時間を止める精霊は居ないの?』
『居ますよ?でも彼等は止まった時間の中に存在します…普通の時間の流れに出てくる事は殆どありません!
捕まえようと思っても、彼等は時間を戻してしまうでしょう』
『なんだか難しくて良くわからない…』
私はしょうがなく起き上がると、体をグッと伸ばした。
(はぁー、気持ち良い♪)
「今起きるよー」
「先に行っているからな」
リオンが私の頭を撫でて、部屋から出ていった。
私は眠い目を擦り、ベッドから立ち上がる。
今日は絆の宿に行く予定と、面倒でなければ旧王城跡地に、でかい城を建ててあげる予定である。
私はパジャマを脱ぎ、忘れていた伝説の?っぽい服を取り出してみる…
私のコートを見て、武器屋では伝説の武器を、服屋では伝説の服を勧められてしまったのだ。
服屋では断ったはずなのに、何故か紛れ込んでいたみたい…
何故これが伝説の服なのかというと、コート同様に着ているだけで魔力が吸われていくのだ。
重さも地味に40キロくらいあるが、私が着る分には問題が無い。
この服は細身のワンピースになっていて、丈は少し短い…
戦闘になったら少し動きずらいかもしれないが、耐久性はどうなのだろうか…
色は真っ黒で、魔力を流すとその場所だけ白くなる。
それに何の意味があるのかはわからないが、今日はこれを来て行こう。
私はこれを着て、細かい魔力操作の練習に使いたかった。
今日は薄緑色の下着を付けて、ワンピースを頭からかぶる。
(どうかなー?)
私は鏡の前で一回転してみた。
やはり真っ黒なままだと少し重たく見える。
(んー、白黒チェックのワンピースにしよ♪)
魔力の遮断範囲を、体表ではなく1センチ外にずらしてみた。
(何これ…すっごい難しい…)
最初から上手くはいかないようで、歪な模様になってしまったが、これから練習していけばいいだろう。
髪や目の色に合わない服だと思ったが、たまには着てあげないと可哀想だ。
準備が出来たので、私もすぐに食堂へ向かう。
「おはよー」
「おはよう花凜」
「あれー?ドクちゃんとミーちゃんは?」
「先に朝ご飯食べて、服を注文しに行ったぞ?」
「なるほど!ありがとうパパ」
食堂に移動すると、中にロナウドとリオンしか居ないようで、一応机の下も確認してみたが、ミーとドクは居なかった。
私が質問すると、ロナウドがスグに答えてくれた。
(そういえば…王国着いたら服作るって言ってたけど、ゆっくりしないで帰ってきちゃったもんね…)
王宮に居た時は、式やらパーティーやらパレードやらで、皆忙しかったのだ。
パーティーは出会いの場になっているようで、どこどこの男爵やら騎士やらに沢山ナンパされてしまった…
どうやって断ろうか悩んでいたら、リオンが貴族と私の間に入り、花凜が欲しければ私を倒していけ!と、言いながら魔力を解放したのだ…もちろん大パニックである。
きっとリオンやミーも沢山話しかけられていたので、ウンザリしていたのかもしれない。
そのパーティーで着せられていたドレスも、かなり綺麗だったのだ。
リオンのお陰で、私の周りには誰も居なくなりました。
「私は後で絆の宿に行って来るよ」(花凜)
「なら私も行くぞ」(リオン)
アオイとアカネが3人分の朝食を運んで来る。
今日の私の朝食は、フルーツヨーグルトとクロワッサンだった。
ロナウドは最近パンよりもお米にハマっているようで、焼き魚にご飯を食べている。
きっと和食のオカズが多いせいだと思うが、味噌汁ではなくコーンスープを飲んでいるようだ。
あと数ヶ月もすれば、ロナウドを日本人に染め上げる事が出来るであろう。
リオンの朝食は、うなぎの肉塊をローストにしたみたいで、スパイスの良い香りが漂ってくる。
1枚切ってはリオンの皿に乗せて、すぐに2枚目をスライスするアオイ…
息の合ったコンビネーションで、パフォーマンスを見ているかのように肉が減っていくのだ。
リオンの元の姿を見れば納得出来るが、知らない人が見れば驚愕するだろう。
(フルーツ美味しい。今日も頑張りますか)




