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痛み、力だ!



「今日は楽しかったねリオン」(花凜)

「ああ、またやりたいな!」(リオン)

「お前達…まさか誘拐の話しじゃないんだろうな?」(ロナウド)

「城の破壊が楽しくてね…ついつい…」(花凜)


 夕飯も終わり、皆でゆっくりしていたのだが、私の一言でロナウドが頭を抱えている。


 ドク、ミー、リーファウスは、まだ公爵のいた旧王城が破壊されている事を知らないし、まさか家の中に公爵が居るとは思っていないだろう…


 別に隠しているつもりは無いが、話題に出たら話そうかな?くらいにしか、考えていなかったのだ。


 ロナウドの心労も心配だが、この街を去る前に1度行こうと思っている場所があった。


「少し出かけてくるね!」(花凜)

「花凜、大丈夫なのか?」(リオン)


 リオンが少し寂しそうな顔をする。


(大丈夫だよ)


 私はリオンの背中を撫でてあげる。


 昨日私は襲撃されたばかりなので、リオンも心配なのだろう。


「うん!転移で行き来するから大丈夫」(花凜)

「そうか…危ないと思ったら、すぐに呼ぶんだぞ」(リオン)

「世の中変なやつが多い…気をつけてな!」(ロナウド)


 私は何処に行くとは伝えてないが、2人は私が行き先を言わなかった事で、突っかかってきたりはしなかった。


 私は軽く頷くと、転移で消えた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




 薄暗い部屋…明かりが灯っていないようだ。


「これは…珍しい客じゃの」

「こんばんは、コルローじいちゃん…取り込み中?」


 そこは教会だった…教会の中は、私が想像していた造りとは違い、祈りを捧げる場所と言うよりかは、病院の待合室のようであった。


 コルローの横には、涙を流す5歳くらいの男の子がいた。


 怒られたりしていたのだろうか?


 ドリアードの転移を使える私には、この街を出ても距離は関係ないので、今日は帰ろうかと思い、コルローに声をかけたのだ。


「お姉ちゃんは女神様?」

「違うよ、私は花凜…君は?」

「…コーフ」


 小さな少年はコーフと言うらしい…


 泣いていた理由はわからないが、私が急に現れた事で、興味が私に移ったのだろう。


 目を丸くしている少年は、コルローの袖を自然と掴んだ。


 もしかしたら、コルローの孫であろうか?


 それだけの信頼を、少年はコルローに寄せている。


「花凜さん、今日はどうしたんだい?」

「明日街を出るから、その前に1度ね…」

「そうか…街を出るのか…」

「うん、その子はどうかしたの?」

「…コーフはな、少し特殊な子供なのだ…痛覚が無く、痛みを感じる事が出来なくてな…自分が痛みをわからないばっかりに、友達を傷付けてしまったそうだ…」

「そう…教会は治せないの?」


 コルローが話した内容を聞いて、コーフは友達から嫌われた理由がわからずに、泣いているのだとわかった。


 痛みを知らない事、それは分かち合えない事だ…


 辛さを共有出来ないから、自分のした事がわからないのだろう…


 大好きな友達を、また傷付けてしまうかもしれない事に怯えているのだ…


「体に異常は無いんじゃ…色々試してはいるのだがな」

「痛みを知らない事で、コーフはとっても痛いんだね…おいで、コーフ」


 私は両膝を床につけて、コーフを呼ぶ…


 しかしコーフは、コルローの側を離れなかった…


 コルローがそっとコーフの背中を押してやると、コーフはコルローの顔を見て、それから再び私に視線を戻す。


 コーフはゆっくり私の側まで歩いてくる。


 よく見ると身体中に、傷や打撲痕などがあった。


 コーフは途中で止まってしまった。


 更に近づくように私は手招きする。


「いい?コーフ、これから私がする事は、君にとって良い事ばかりではないの…でも君は、友達の痛みを今度は一緒に感じる事が出来るようになる…選ぶのは貴方よ」(花凜)

「それで嫌われなくて済むの?」(コーフ)


 私は首を横に振る。


「嫌われない人なんていないよ、コルローじいちゃんだって嫌われた事があるんだよ」


 私の言葉を聞いて、コーフがコルローを見た。


 誰からも嫌われ無いなんて無理な話で、コルローもコーフを見て頷いている。


「…痛いを知りたい、熱いを知りたい…」

「そう、強い子ね」


 私はコーフをそっと腕で包む。


(創造生命魔法)


 私とコーフの体が淡い光に包まれる。


 治すのは一瞬だったが、もう1つコーフに伝えたかったのだ…


「触られてる感じがわかるかな?」

「…うん、わかる」

「痛みと言うのは辛いだけじゃない、沢山知っていくといいよ」

「…」


 コーフはすぐに眠りに落ちてしまった。


「どうなったのだ?」(コルロー)

「気を失っただけ、急に色々なものがわかるようになって、頭がついていかなかったんでしょう…まだ子供だし、数日あれば動けるようになるんじゃないかな?」(花凜)


 私はコーフをベッドに運んだ、後は教会が何とかする筈である。


「ありがとう…花凜さん」

「痛みを知らないって言うのは、とても辛い事だもの」


 私はそこで一旦言葉を止める。


 今日は、私から話をしに来たのだ。


「世界の事、リオンに聞いたよ…私は今の教会の現状が知りたいの…」

「……そうか…しかし現状とはどのような事なのだ?」

「5つの法則を殺せる戦力はある?」

「花凜さんは…全く駆け引きをしないのだな…」

「しません、する意味がないならね」

「教会だけで、5つの法則を破る事は不可能なのだ…しかし、真実を知る者たちには、教会が信用される事は無い…それだけの事を、私達はやってしまったのだ…」


 コルローは悪い人間ではない。


 教会の信用のない状況も、コルローのせいではないのだ。


 しかし、エルフ、ドワーフ、吸血鬼などの生き残りは、100年前の戦いを経験した者が多いはずだ…


 クレアのために立ち上がった者達が、教会と共に戦う事は無い、まして従う筈もない…


 私は教会の戦力だけでも把握しておきたいのだ。


「信用されてないのはわかるけど、いざという時に、この大陸でどれくらい戦力を集めれそうなの?」

「戦闘の出来る者は皆無じゃな…」

「そっかー…やっぱりそうだよね…リオンでも竜王に軽くあしらわれたそうだから…」

「リオンとは何者なのだ?」


 教会はリオンの事を知らないのだろうか?


 クレアの家族の事が伝えられてないとは思わないし、リオンが嘘ついてるとも思わない。


 コルローは信用してもいいとは思うが、何となく腑に落ちなかった。


 それは何だ?何のために?私の考え過ぎならいいけど、悪意のあるものじゃない事を、祈るしかない…


 駆け引きはしないが、迂闊な事は言わない方がいいだろう…用心には用心を!


 私はコルローを見ると、最後に一言だけ話す事にした。


「秘密♪また来るかもね!」




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「あれ?ただいま?」

「おかえり」


 私がリオンの所へ転移して戻ると、リオンは超もくちゃん館の屋根の上にいた。


「ちょっとコルローのとこ行ってた」

「そうか」


 リオンは何も聞かないようなので、私から話す事にした。


 別に秘密にする様な事では無いのだ。


「教会の話を聞いてきたんだけど、リオンの名前はコルローでも知らないみたいなんだよね…」

「クレアの名前も知らないかもな…人間の時間は短い、どこまで伝わってるのかわからないな」


 私はリオンの隣に腰を降ろした。


 少し無言で星を眺めていたが、こういう時間も悪くないと思う。


(リオンは私にとっての何なんだろう…)


 一緒に居るのが当たり前で、これからもそれは変わらない。


 数分間そうしていたが、私達はお風呂に向かった。


 私は鬼よりも厄介な問題を抱えている…


「うぅ泣ける…」

「…気にするな」


 今日こそBの壁を超えて、遥かな高み…Cへと至りたい…


 何処がとは言わないが…察してほしい…


 ミーとドクは脱衣所で、下着姿のまま椅子に座っていた。


 お互いの服を改造して、翼を出せる穴を縫っているようだ。


 ミーはピンクの下着、ドクはグレーのパンツだった。


 私達が脱衣所に入った事で、ドクは部屋から出ていったが、本当に2人は仲がいいと思う。


 今私は浴槽に浸かり、例のイメージ特訓中で、リオンは隣で寛いでいる。


「ミーくらい大きければな…」

「気にするような事ではないだろう?」

「でも…もう少しくらい…」

「リーファウスは気にしないと思うぞ?」

「何でリーファウス?」

「いや……リーファウスに同情するよ…」


 リオンは苦笑いしている…


 とりあえず今日のイメージ特訓は終了して、私達は脱衣所に戻った。


「鬼と早く戦いたいぞ…私の花凜に手を出したのだ…」(リオン)

「はい!リオンの花凜です!」(花凜)

「花凜ちゃん、師匠、これ変じゃないかな?」(ミー)


 リオンの言葉を聞いて、私はリオンに敬礼する。


 ミーが1枚黒いシャツを着て、シャツに開けた穴から羽を出してた。


「見た目大丈夫だよ!羽は慣れた?」

「うん、この羽のお陰で、私もドクも魔力がかなり上がったよ!それに風を操る力も増して、私達の切り札にとても相性が良いみたい!羽付けてくれてありがとう」

「いーえ」

「ただ服がないから、王国に着いたらドクと服をオーダーメイドするかな…私達は尻尾もあるから、服問題は今に始まった事じゃないんだけどね…小さい頃から一緒にやってるから、私もドクも裁縫は得意だよ」

「ねぇ、ミーちゃんの尻尾もふもふしてもいい?」

「どうぞ」


 私はミーのもふもふ尻尾を触った、思ったよりふわふわだった。


 ミーが尻尾を左右に振るので、リオンは尻尾を目で追いかけている…飛びかかっちゃダメだよ?


 今日から私は護衛のために、リーファウスと寝る予定だ。


 明日からも忙しくなるので、リオンとミーにおやすみを告げた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「リーファウスー、寝るよー」

「ああ、わかった」


 私は部屋を暗くして、リーファウスとベッドに入る。


 沢山色々な問題が出てくるので、考える事は山積みだ。


(まずは鬼退治…次に5つの法則の1体、竜王…ドクちゃんとミーちゃんの全てを奪ったクレイ王国…教会の謎?…妖精王…あと…)


 何から手を付けたらいいのだろうか?


 ドクやミーも早く楽にしてあげたい…


 5つの法則、竜王も殺すしか道は無いのだろうか?


 もっと強くならなくちゃいけない…しかしどうやって強くなったらいいのだろう?


「…花凜、おい花凜!」

「リーファウス?」


 私はベッドに潜り、考え事に没頭していたのだ。


 リーファウスの呼びかけに気付かないくらい集中していたらしい…


「どうしたの?」

「どうしたのはこっちのセリフだ、何を難しい顔をしてるのだ?」

「…もう大丈夫だよ」


 リーファウスは、私を心配しているようで、複雑そうな顔をしていた。


 私はよく自分の世界に入り、考えに没頭する事があったが、呼びかけに気づかない程に、私は余裕がないらしい…


「…リオンも双子もロナウドもいて、余には花凜に足りない物は無いように思える」

「そう、なんだけどね…皆とっても強いから、私も強くならなくちゃって…」

「それは、花凜にとって、本当に必要な事なのか?」

「うん、私は絶対に、強くならなくちゃいけない」


 私には、絶対強くならなくちゃいけない理由がある。


 しかしリーファウスは、そんな私の顔を見て笑った。


「花凜、ならばそんな顔はするな…余の父は王だ、王はそんな顔は1度たりともしなかった。

自分の命令で人が死ぬとしても、それは王にしか背負えない事だ。

しかしその背中は大きい…とてつもなくだ!

花凜は自分にしか出来ない事に、悩んでいるのはわかる。

花凜の生き方は、王そのものなのかもしれない。

しかし王の背中にかかっているものは、責任だけではないのだ!

今はまだわからないかもしれないが、もっと背負え!

花凜、お主にはそれが出来る!

花凜は大事なものがわかっている。

今花凜に必要な物は、自信だけだ!自信を持て!

怖がる事は何も無い!もう一度言う!花凜に出来ない事はない!自信を持て!」

「リーファウス…」

「花凜よ、人は背負う物が多い程、強くなれるのだ…背負う事は苦しい事ではない、誰よりも背負ってきた者の言葉だ」


 リーファウスの言葉は、私の中にすんなり入ってきた…


 自信を持て!私なら出来る!少し涙が出てくる…そうだ、私なら出来る!全てを守れるのだ!


「ありがとうリーファウス」

「気にするな!良い顔になったな!」

「うん!私殺るよ!竜王殺る!」

「へ?」

「クレイの奴隷解放する!」

「は?」

「必要だったらクレイ滅ぼすよ!」

「…ちょ…」

「そして妖精王も殴ってやるー!」

「…」


 私はリーファウスのお陰で、すっきりする事が出来た。


 そうだ!私はやれるのだと!勇気をくれたリーファウスに感謝をする。


 私はリーファウスをして抱きしめた。


「リーファウス大好き」

「あ、ああ、……」




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「起きろ花凜」


 今日は皆朝早くから起きているみたいで、私はリーファウスに肩を揺すられている。


「…後2週間…」

「そんなに寝てたら、ベッドに根が生えるぞ…」

「え?それは困る!本当に生えそうだもの…」


 リーファウスの洒落にならない言葉で、私は目を覚ました。


 私がベッドから起き上がると、リーファウスが何故か顔を赤くしている…


「か、花凜、服が…」


 今日私が着ていたパジャマはボタンタイプで、寝ているうちに外れてしまっていたようだ。


 半脱げのような状態になっていて、実にかっこ悪いと思う。


「ごめん」


 私は謝罪するとパジャマを脱いだ。


「何故!逆だろう!」

「え?着替えるのに?」


 リーファウスの言う事はよくわからない…とりあえず、私の着替えは完了した。


 赤く固まってるリーファウスを脇に抱えて、食堂に移動すると、既にみんな集まっていた。


「おはようパパ」(花凜)

「おお、早いな花凜、おはよう」(ロナウド)

「ドクちゃんとミーちゃんもおはよー」(花凜)

「おはよー花凜ちゃん」(ミー)

「おはよー」(ドク)

「あら、ドクちゃんも服バッチリだね!」(花凜)

「ミー姉ちゃんは裁縫上手いからね」(ドク)

「ドクちゃんも裁縫出来るって聞いたよ」(花凜)

「まあそれなりには出来るよー」(ドク)

「おはよーリオン」(花凜)

「おはよう」(リオン)


 朝からみんなの顔を見ていると、元気が出てくる。


 朝は挨拶が基本なのだ!


(そう言えば…まりちゃんは元気にしてるかなー?)


 万年恋人募集中の真理子の顔が頭を過ぎる。


 今日の朝食はサンドイッチらしく、それぞれ色々な物が挟んであった。


 リオンの朝食だけ鳥の丸焼きがサンドされている…それは無理があるのではないだろうか…


 私のサンドイッチはフルーツサンドだ。


 ドクとミーはチーズが好きみたいで、パンにたっぷり挟んであった。


 ロナウドとリーファウスのサンドイッチは、俗に言うBLTサンドらしい。


「リーファウスの車、少し改造して良いよね?」

「車?魔道8輪の事か?」

「うん、荷台の武器が邪魔だからね」

「結構強力な武器なのだぞ?」

「あんなのがあっても鬼に当たらないんじゃない?」

「…それは否定出来ぬな…花凜の好きにせよ」

「ありがとう…ふふふ…」


 朝食を終えた所で、忘れていた事を説明する事にした。


 黙っていても問題無いと思うが、みんな知っていた方がいいだろう。


「皆聞いて♪昨日の夜リオンと一緒に旧王城を破壊したの。

お宝も盗んで、ついでに公爵を誘拐してきたよ」(花凜)

「え?」(リーファウス)

「え?ずるい!」(ドク)

「私達も行きたかった〜」(ミー)

「な、な、何故だ!まだ公爵だと、決まった訳では…」(リーファウス)

「そしたら謝るから大丈夫♪」(花凜)

「大丈夫では無いだろう…」(リーファウス)

「でも公爵で間違いないよ?他国の貢物やら色々あったからね!」(花凜)

「聞いてみたらどうだ?箱の中に居るのであろう?」(リオン)


 私は箱型ミニもくちゃんハウスを、魔法鞄から取り出した。


 そして扉を開けると、公爵がぐったりとした表情で、縛られて拘束されていた。


 扉が開いた事で瞼に光が当たり、気付いた公爵がすぐに周りを見渡した。


 目は見開かれていて、何だか少し怖い…


「こ、ここは何処だ?なんだお前達は!」

「叔父上…」

「リーファウス!お前の仕業か!?」


 公爵はリーファウスを見ると、凄い剣幕で怒りだした。


 これだけでも証拠になりそうだが、公爵は頭が悪そうな気がする。


「正直に話して!」(花凜)

「話す事など何も無い!城へ帰せ!」(公爵)

「…リオン、やっちゃって」(花凜)

「いいのか?」(リオン)

「な、な、何をするつもりだ!やめろ!私は何もやってない!」(公爵)

「叔父上」(リーファウス)

「城はもう無いよ、破壊したから…」(花凜)

「嘘だ!そんな事をすればお前達はただでは済まんぞ!」(公爵)

「お宝も全部頂いた…グラシアンの金貨に紅茶缶、随分と裕福そうじゃないか。

あ、でも今お前は、宿無し金なしだけどな」(リオン)


 リオンの言葉を聞いて、公爵は青い顔になった。


「王にはもう報告済みだ、後は鬼を撃退するだけ…お前が素直に話をするなら、拷問は勘弁してやるが?」(リオン)

「私を捕らえたお前達は重犯罪人だ!証拠なんて何もないだろ!」(公爵)

「別に犯罪者になっても私は気にしないよ?リーファウスが守れるならね」(花凜)

「な、なんだと!」(公爵)

「証拠が自然と出るまで、公爵はその箱の中にずっと閉じ込めます!それに城の襲撃者を見た者は、この街に1人も居ません。

魔法で寝ているうちに、全部終わらせました」(花凜)

「そんなの不可能だ!」(公爵)

「喋る気になったら言ってね!ずっと箱の中で、お腹空いちゃうと思うけど、体は大丈夫!」(花凜)

「…」(公爵)

「じゃあまたね!」(花凜)

「ま、待て!」(公爵)


 怖い人とは喋りたくないのだ…


 意外と口を割らない事に、私は少し疲れてしまう。


 逆にこれくらいで喋るとは思って無かったが、問題は後回しにしようと思う。


 扉をそっ閉じしようとしたら、公爵に止められてしまった。


「お前達!今私を解放すれば、罪には問わない!だから帰してくれ!」(公爵)

「…またね」(花凜)


 私の手は止まらない…ゆっくり扉を閉めていく。


「何故だ!ならば金を払う!いくらほしいんだ!」(公爵)

「またね」(花凜)


 後残り数センチ…


「何でだ!クソ!」(公爵)


 自分の思い通りにならない事に、公爵は憤っている…


 私はこういう空気が、好きではないので、最後まで閉めようとした。


 リーファウスの命を守るためなら、私は何になってもいいと思う。


「まあまて、花凜…ここではあれだ、応接室で、私なりの!対応をしたいので、ちょっと公爵借りていくぞ」(リオン)

「え?う?うん」(花凜)

「どうするのだ?」(リーファウス)

「なんの事はない、出発の準備をしていてくれ」(リオン)

「ふ、や、やっとその気になったか」(公爵)


 公爵が不気味に笑い、拘束が解かれる。


 私はこの笑いが嫌いだと思った。


「「なむなむ」」(ドク、ミー)


 リオンは応接室と言っていたが、魔法訓練場を使うらしい…


 私は今のうちに魔道8輪の改造を終わらせようと思う。


 外に出ると、少し靄がかかっている。


「おはようございます」(コバ)

「おはようございます。花凜様」(ヘイリ)

「おはよー」(花凜)


 騎士の2人が私に挨拶をしてくれた。


 しかし、コバは鎧が無くなってしまったので、騎士には見えないのだ。


 ヘイリは体と足が鎧になっているので、まだ騎士っぽくみえる。


 形態変化で戦えるのだが、武器や鎧もあった方が良いだろう。


「金貨1000枚渡しておくね♪」(花凜)

「これはどのように致しましょうか?」(コバ)

「2人の武器と防具を揃えて欲しいの」(花凜)

「しかし、我々には必要のないものです…」(コバ)

「見た目も大事だよ?残りは好きに使って良いからね」(花凜)

「好きに…ですか…わかりました」(ヘイリ)

「ありがとうございます」(コバ)

「いつもありがとう」(花凜)


 御礼を言いたいのはこちらの方だ。


 まだ魔力消費の大きな個体を無線にする事は難しい…


 数時間なら線無しで行動出来るが、今はまだ完全に独立するのは無理なのだ。


 時間がある時に、買った魔道具で実験しようと思う。


(よし!車を改造しよー!)


 見た目はコンボイのキャンピングカーみたいな感じで、凄く迫力がある…


 まずは砲門を取り外す事にした。


(どこから外すんだろう…)


 初めて触る物なので、どういう仕組みなのかもわからない…


(引っ張っちゃえ!)


 砲門は頑丈な鋼鉄で作られていて、ちゃんとしたやり方で外すべきであろう。


 今は早く済ませたいので、とりあえず引っ張ってみたのだ。


――――ギギギギゴガガガ――――


 ボルトのような物がネジ切れて飛んでいく。


 私の力があれば、ペットボトルの蓋を回すくらい簡単だった。


 無理やり引き抜かれた砲門は、無残な鉄の塊になってしまった…


「大丈夫ですか?」(ヘイリ)

「リーファウスには許可とってあるから大丈夫♪」(花凜)

「私達も手伝います」(コバ)

「ありがとう」(花凜)


 私は1人で捩じ切る事が出来たが、ヘイリとコバは2人がかりで砲門にとりかかる。


 この大砲は200キロ以上あるかもしれない上に、しっかりと太いボルトで固定されているのだ。


(どうせ戦いでは役に立たないだろうからね)


 作業は着々と進んでいく。


 すぐに荷台はまっさらな状態になった。


(創造生命魔法)


 鋼鉄の荷台にもくちゃんハウスが生えてくる…


 高さは約4メートルで、荷台に収まるように縦長だ。


 これで道中快適に移動する事が出来るだろう。


 もくちゃんと連結しているので、行き先を言えば自動運転してくれるようになっている。


「お見事です!花凜様」(ヘイリ)

「ありがとー、これで安心して移動出来るよね」(花凜)


 ヘイリもコバも頑張ってくれたので、早く終わらせる事が出来たのだ。


「私達が留守の間は任せたよ!シスターズを守ってあげてね」(花凜)

「「はい!」」(コバ、ヘイリ)


 家の中に戻ると、みんなリビングに移動していた。


 ドク、ミー、ロナウドは、旅支度を完了している。


「ただいま」(花凜)

「お?もう終わったのか?」(リーファウス)

「うん!引っこ抜くだけだったから」(花凜)

「何を引っこ抜…いや、聞くまでもないか…」(リーファウス)


 リーファウスはため息を吐いて、無残な砲門を想像しているのかもしれないが、想像通りで間違い無い。


「鬼をーーーーー!やっつけるぞーーー!!!!!」(公爵)

「…」(全員)


 公爵が味方についたみたい…え?


 私はリオンに顔を向けた。


「やっと素直になったよ」(リオン)

「…素直なの?あれは?」(花凜)

「ああ、そうだ」(リオン)

「はぁ〜…よかった!」(花凜)

「「「違うでしょ!」」」(ロナウド、ドク、ミー)

「叔父上…いったいどうしたのだ?」(リーファウス)


 公爵はリーファウスを見て、1度頭を下げる。


 それから憑き物が落ちたような良い笑顔になった。


「大事なものに気付いたんだ!それは金や地位なんかじゃないってな」(公爵)


 公爵はやっと気付いたのだろう…自分が大切にしなきゃいけない家族や、愛情、信頼などに…


「世の中力だ!!!!」(公爵)

「そうだ」(リオン)

「…」(他の全員)


 リオンが公爵を見ると、公爵は固まった…


 そしてリオンは口を開く。


「おい、お前のこれからの行動はなんだ?」(リオン)

「はい!!これから皆で鬼を退治して!私は王国の牢屋に捕まる予定でございます!」(公爵)

「よろしい、では行くぞ」(リオン)

「はい!」(公爵)

「…っていうかお前の名前は何だ?」(リオン)


(あ、私も知らない…)


「リオン様の下僕!コージイとお呼びください!」(コージイ)

「よろしくね、コージイさん」(花凜)

「叔父上…」(リーファウス)


 私はコージイの名前を知り、改めて軽く頭を下げた。


「じゃあ行くか」(リオン)

「はーい」(花凜)

「ギンカよ、世話になったな」(リーファウス)


 部屋の隅に立っていたシスターズにリーファウスが近付いて行く。


「道中お気を付けて下さいませ!労いの言葉、ありがとうございます」(ギンカ)

「旅の料理はおまかせください」(コクヨウ)

「リーファウス寂しくないか?大丈夫か?」(オレンジ)

「だ、大丈夫だ!オレンジだったか?ありがとうな」(リーファウス)

「また何時でもいらしてください」(アジサイ)

「ああ、そうさせてもらう。

毎日の食事に、花凜の昔話も楽しかった」(リーファウス)

「え?今なんて言ったの?」(花凜)

「気にするな花凜」(オレンジ)

「ダメだって言ってるのにー!すいません花凜様」(アオイ)

「良いの良いの!で?何?」(花凜)

「気にせんで良い、さあ行こう」(リーファウス)


 何かはぐらかされた気がするが、今は追求しないでおこうと思う。


(むむ~…)


 アカネも厨房の奥から出てきて、私達を見送るように頭を下げた。


「必要な物があったら、コバとヘイリに言ってね!留守番よろしくお願いします」(花凜)

「行ってらっしゃいませ」(シスターズ)


 私達は外に出ると、新しい魔道車を見上げている。


 リーファウスもコージイもかなり驚いているようだ。


「凄いな…花凜の魔法なのか?ま、まさか!この館もなのか?」(リーファウス)

「リーファウス様…今はまだ御内密にお願いします」(ロナウド)

「ああ…わかった…お前も苦労が絶えんな…」(リーファウス)

「あはは…はは…」(ロナウド)

「私達も最初見た時はびっくりしたもんね…」(ミー)

「花凜ちゃんの家の中で生活しちゃうと、もう他の宿じゃ物足りないよ」(ドク)

「家作りは私の1番得意な魔法だもの」(花凜)


 私は胸を張った。


 みんなが褒めてくれてとても嬉しいのだ。


 転移で車ごと街の外に飛ぶと、砂漠をゆっくり進んで行く。


 ソルは居心地が良かったので、少し寂しい気分になる…


(まあ、夜寝る時は街に転移で戻るんだけどね…)





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