怪盗仮面、重要な手紙
私とリオンは、旧王城の上空に来た。
夕食前の早い時間なので、まだ沢山の人が、街を歩いているようだった。
(魔道具はちゃんと機能してる…城の攻め方は〜…良し!決めた!)
魔道具屋で手に入れた魔道具は、鬼の証拠を掴むために用意した物だ。
きっと王様の所で必要になる筈である。
「リオンちょっと待っててね!眠りの胞子で城を包むから」
(創造生命魔法…)
私の両手が青白い輝きを放つ…
そして手の中に極小の胞子が生まれてきた。
胞子はキラキラ輝きながら、街全体に広がっていく。
(あわわ…まあいっか)
小さ過ぎて見えないかもしれないが、胞子の形はぐるぐるキャンディーのようになっている。
だから安心して吸い込んで欲しいのだ!
「なるほど!それにしても、花凜の魔法は幅が広い…私の魔法は、氷漬けか串刺しだけだからな」
「私がリオンだったら、かき氷やアイスクリームを作るよ!」
「ほぅ…後で教えてくれ」
「わかった!」
そろそろ皆寝ただろうか?
私は眼下を見渡し人の動きを見るが、動いている者は1人もいなかった。
「ちょっと…やり過ぎたかも?」
「街全体が寝てるんじゃないか?」
ちょっと私の眠りの胞子は強力すぎるかもしれない…これからする事を考えれば、都合は良いのだが…
次使う時は、ちゃんと風の制御も考えた方がいいだろう。
(失敗は誰にでもあるよね?ただ少し規模が大きかっただけだよね?)
旧王城は、近くで見るとかなり大きい…
城の外には、噴水や訓練場、厩舎や倉庫、手入れの行き届いた綺麗な庭があった。
私は旧王城の、立派な庭に降り立つと、庭に私の創造生命魔法をかけ、普段よりかなり多めに、魔力を流し込む。
(目覚めなさい、貴方達に自由を与えます)
「さあ皆!庭へ、城中の人を運び出して頂戴♪ついでに貴重な物もね!」
「何が出てくるか楽しみだな!」
私達の目的は少し変わっている?ような気もしないでもない…気分は怪盗仮面だ!
「スイートピー君!もっとしっかり働きなさい!あ、こらそこ喧嘩しないの!
スズラン君、人は真ん中のデカい噴水の周りに集めてね!
桜の木っぽいキミ…旬が終わったからっていじけないで!
大量の薔薇諸君、私は諦めていない!君達に名前を付ける事を!1.2.3.4.5.6.7.8!いってらっしゃい!
あ!モモの木様…あわわ!貴方様は働かなくて結構です!本当に美味しい実をありがとうございます!」
私は皆に指示を出した。
有り余る魔力で、人型になる花壇の花や木々…数が多いが、薔薇にも名前を付けてあげた…番号だけど!
私の指示を隣で聞いていたリオンは、何故モモの木が仕事を免除されたのか疑問顔である。
答えは簡単、私の大好物だからだ…働かせるなんてとんでもない…
作業は着々と進んでいく。
「あ、7君!それはあっちに運んで!…ぇ?7じゃない?32?そう…今からあなたも7君だ!
あ!そこの7君!え?君は12なの?…そっかー…じゃあ今から君も7君だ!」
少しミスはあったが、大丈夫だろう…ほとんどの薔薇は、7君になったが、それは些細な問題だ。
庭に城の人々は運び出され、金銀財宝も集められる…
やはり悪い事をしていたのだろうか?金貨の量も半端じゃないのだ。
魔道具も沢山出てきたので、後で確認しようと思った。
「花凜、私は人間の世界は詳しくないが、やはりグラシアンと関係がありそうだな…グラシアンと書かれた紅茶の缶や、この街で見たことない金貨もある」
(悪い事はいけないよね…え?私?私は義賊です!)←義賊の意味を分かっていない…
もう目撃者の心配はないので、外套を脱いだ私は、大きな王冠も見つけたので被ってみる…
(うふふ、私は王様であーる)
宝剣っぽいキラキラした物も装備して、ごつごつした宝石のネックレスや腕輪を沢山つけた。
私は現在、子供が母親の化粧箱をいじくりまわしてる気分になっている。
人も全員運び出し、城の中の気配が全部無くなった所で、目的の人物を探す事にした。
「えーっと…誰が公爵?」(花凜)
「わからんな…誰か起こしてみたらどうだ?」(リオン)
「公爵、この人」(7)
「わ!ありがとう7君!」(花凜)
薔薇の7君が、公爵を抱えてきたので、私は御礼を言った。
「この人が公爵なんだねー」
「偉そうな格好だが、見た目普通だな」
「よし!箱型ミニもくちゃんハウスに公爵を入れます!
城はどうやって破壊しようか?」
「それは私に任せろ!」
リオンは悪い笑顔を浮かべ、城の中へ突撃していった。
楽しそうだったので、もちろん私も参加する。
イナズマ型の鈍器を背中から取り外し、立派な柱を手当り次第薙ぎ倒していく。
(癖になりそう)
城は形を保てなくなり、無残な姿に倒壊する事になった。
きっと遠くから見ている筈の鬼は、事態が飲み込めずに呆然としているだろう…
この旧王城攻めは、遊び心含め1時間かからずに、無事終了したのだった。
「皆ありがとう!君達は自由だ!好きな所で、残りの生を楽しんでほしい…」
私は今日手伝ってくれた、庭の花や木々に感謝の言葉を贈る。
「終わったな…帰って晩御飯にしよう」
「あ、待って…書き置き残したいんだけど、リオン手伝って!」
「ほぅ、何と残すのだ?」
「……貴方達の、従順な手駒はもらって行きます。
ついでにこの城も、ポッキリ折ってやりました!
まるで鬼の角みたいに、簡単に折れたわ!
私達は、明日お宝持って出発するから、貴方達も火遊びは程々にしておきなさい!怪盗仮面より!これでお願い」
「あはは、いい気味だな!どれ、私も言葉を残そう」
「ん?リオンは何て書くの?」
「今度追ってきたら、お前ら全員アイスクリームにしてやる!良し!これでいいな」
「…もう書いちゃったからあれだけど…うん、まあいっか!」
「後で、アイスクリームとやらを教えてくれ」
「う、うん…」
住民はあと何時間で起きるだろうか?
明日出発する時は、きっと街の中がパニックになっているかもしれない…
出入りも制限されそうなので、私達は街の外に寄り道して、転移したい所にもくちゃんを配置して帰宅した。
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【エル】(少し先のお話)
リーファウス様の手紙に絆の宿の判をもらった俺は、ラグホーム王国に空から向かっている。
(風が気持ちいいぜ!)
1度失ってしまった信用は、なかなか元には戻らない…
それを身を持って知った俺は、少し…いや、かなり反省し、作者を恨み…え?…とにかく!俺は今全力で飛行を続けている。
(もう砂漠を抜けたか…空を飛んで移動するって早すぎるだろ!)
徒歩だと約10日、馬車だと約3日、飛行だと半日かからないだろうか?
しかし、流石にその日中に、王国の中に入る事は出来なかった…
ミミックさんから判を貰うのに、少し手間取ってしまったので、到着した時には夕方を過ぎていたのだ。
まだ大丈夫だとも思ったのだが、門が閉じられてしまっている。
少し辺りが暗くなってきていたので、門の出入り制限がかかってしまったのだろう…
こればかりは仕方がない。
俺はコクヨウからもらった弁当箱をあけた。
(ん?何だこれは?)
中には、茶色い球体の様な物が、8個入っていた。
少し酸味のありそうな、ツンとした香りが漂う…
(何これ?)
茶色と白いソースがかけられ、上から海藻の粉末?それと端っこには、紅色の何かが添えられている。
(よし!)
俺はそっ閉じした。
(ステルス使えば中に入れるけど、どーしようかな…)
俺は手の甲から飴を取り出し、口に頬張る。
(今から中に入っても、王様に謁見なんて出来るわけないだろうしな…中に入って宿とるか?いや、そんなに困ってないからいいか…)
ラグホーム王国を空の上から眺めると、石畳の綺麗な街並みはソルとそっくりな造りをしている。
ただ街の規模は、ソルの約3倍はありそうだった。
ラグホーム王国には、一般人が使える出入り口が1つしかなく、既に翌朝の順番待ちの列が出来ていた。
明日は早くに中に入りたいので、とりあえず俺も最後尾に並ぶ。
列に並んでいる人達は、テントを広げたり鍋を始めていた。
ひもじいわけではないが、話し相手もいないので、少しその場から浮いている気分になる。
街の外は魔物がいるので、一人旅は珍しいのだ。
(…寝よ…)
寒いわけではないが、マントに包まり腰を下ろす。
前に並んでいる人の馬車を背もたれにして、俺は目を閉じた。
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(ん…あ、そっか…寝てたんだったな)
日が昇り始めると、俺は瞼に射す光で目が覚めた。
少し霧が出ているようだ。
周りからはテントを片付ける音が聞こえてくる。
(良く寝た…)
背筋を伸ばし、思いきり欠伸をする。
列が進み出したので、すぐに立ち上がるとマントを鞄に仕舞う。
とうとう俺の入場の順番がきた。
「おはよう、身分証と入場料を提出しろ」
衛兵が声をかけてきたので、俺は素直に従った。
「おはようございます。どうぞ」(エル)
「ほぅ、Bクラスの冒険者か!なかなかだな!ん?」(衛兵A)
「おい、どうした?」(衛兵B)
「お前は…まさか!」(衛兵A)
列に並んでた人達が、衛兵の驚きの態度を見て、どよめく…
(俺も有名になっちまったか?まあ花凜さん達と一緒にいるから、仕方ないか…やれやれだぜ)
「2つ名を持つ冒険者だな…この王国にも噂は届いてるぜ?」(衛兵A)
「空から舞い降りた変態だったか?お前何したんだよ…」(衛兵B)
(…そ、そんな…そんな2つ名が?は?え?まじ?)
「あ、あはは、やだなー、人違いですよ!」(エル)
「だよな、俺なら外歩けねぇぜ!いやー疑って悪かったな!まあラグホームは安全な国だ!ゆっくりしていくといい」(衛兵A)
「はは、は…ありがとう…ゆっくりさせてもらうよ」(エル)
「またな、エル、疑って悪かったよ!お前を歓迎するぜ」(衛兵B)
中に入ると、すぐに道の脇に寄った…そして俺は振り返る。
(あの人達かなり良い人だった…逆に泣けるぜ…)
俺は目の端に涙を光らせて、その場を立ち去った。
(さて、どうしたものか…とりあえず、王城の入口で、謁見を願い出るか?絆の宿に仲介に入ってもらうか?)
俺は悩んでいた…1市民の俺が、易々と会える相手ではないし、この手紙の内容はかなり危うい…
王様のいない場所で、誰かに手渡す訳にはいかないだろう…
(悩んでいても、仕方ない…か…とにかく、一旦王城に行ってみよう)
王城は街の何処からでも見える高い位置にあり、目指すことは簡単だった。
王国へは何度か遊びに来た事があるらしいが、小さい頃なので覚えていない…
両親と旅をしていた記憶はあるが、今では母親の顔も朧気なのだ。
門から王城までは、大通りで真っ直ぐ一本道になっている。
戦争とかの無い時代に生まれた俺には、要塞としてのこの街の設計思想はわからない…だが、真っ直ぐ続く大通りは、壮観で見事の一言だった。
(綺麗な街だな…ソルも好きだが、知らない場所を知るのは、いいものだ…全部落ち着いたら、旅に出るのも良いかもしれない)
俺は王城の手前に辿り着いた。
「とまれーーい!」
「こんにちは!」
急にかけられた声に、ちょっとびびりました!
「ここから先は、許可無い者は通す訳にはいかない!」
「そうだろうとは思ってました。
王様に謁見したいのですが、何処で手続きしたらよろしいでしょうか?」
「お前冒険者だろ?王様との謁見は、すぐにどうこう出来るものではないぞ?」
「具体的にはどんな感じですか?」
王城を守る兵士に色々聞く事にしたが、やはりただでは会えなそうだ…
「身分証を提出して、どういう奴なのかを調べる。
許可が出れば、今の謁見の順番待ちに並ぶ事は出来るが…
実際会えるのは、60日くらいかかるぞ?」
(思っていた通りだ…さて、どうするかな?)
「ソルの街で、リーファウス様から王様に手紙を直接届ける依頼を受けているんです。
内容が内容なだけに、誰かの手を挟みたくなくて…」
「……それは俺には判断しかねるな…要件は伝えておくから、滞在先の宿を教えてくれ」
(よかったーーー!話が通じた!正直に話しただけだけど)
「まだ来たばかりで宿は予約していないんですが、おすすめはありますか?」
「おすすめというか、すぐそこにも宿があるぞ?王様に用がある人なんかが使う宿だから、少し値段は高い…」
「お金は大丈夫なので、そこに入りますね!よろしくお願いします」
「ああ、わかった!お偉いさんに、ちゃんと伝えておくから、宿で待っててくれ。
リーファウス様の手紙なら、すぐに受け取りたいはずだから、早めに使者が行くと思うぜ?」
「わかりました。ありがとうございました」
俺は兵士の言っていた宿をすぐに見つけた。
値段は1泊金貨5枚、確かに高い…
普通の宿が、銀貨8枚前後なので、約6倍の値段である。
宿の中に入ると、俺はがっかりした。
部屋はそんなに広くないし、豪華でもない…出された昼飯も普通…実に足元を見た商売である…
(昨日は飛びっぱなしで、夜も野宿だったからなぁ…贅沢言うつもりはないけど、この宿は酷い…ガラガラな筈だよな…
あの兵士も、よくこんな所紹介したよ…)
使者は中々来なかったが、俺は遅くまで待ち続けた。
ぱっとしない夕飯を食べ、時刻は深夜になる。
花凜の料理を食べているせいか、余計に食事が貧相に思える。
(流石に、その日のうちは無理だったのかな?寝るか…)
俺は部屋の明かりを消して、ベッドに横になった。
しばらくすると、妙な気配を感じる…
(あれ?そういう感じ?)
きっとこの宿は、都合の悪い者を始末するため、高い値段設定で一般人を省いているのだ…
(でもあの兵士はグレーかな?ここに決めたのは俺だし…きっとそれとなく、王様に用のある者をここに紹介するように言われているのかも…?)
足音は聞こえないが、数名が近づいて来るのがわかる…
花凜に付けてもらった手足のお陰で、昔より感覚が鋭くなっているのだ。
俺はステルスモードになって、天井に張り付いた。
ノックも無く扉は開けられ、フードの男が2人入って来る。
しかし俺が居ないので戸惑っている様子だ。
(こいつら捕まえれば、証拠出るんじゃない?)
俺は覚悟を決め、リーダーっぽい男を壁に蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた男が、壁に叩き付けらて、轟音が響き渡った。
俺はすぐさまその男に跨り、左手から漆黒の爪を伸ばして、男の喉元にあてがうと、ステルスを解き姿を表した。
「陛下!!!」(謎の男)
「お前らは何だ?寝込みを襲うとは良い度胸だな!」(エル)
(ん?今陛下って言わなかった?)
「ま、ま、ま、待ってくれ!怪しい者ではない!殺さないでくれ!そのお方は、国王陛下なのだ!」(謎の男)
「へ?」(エル)
謎の男は、必死に気絶している男を庇おうとしている。
(まさか本当に?)
「う…俺は?ああ、すまない…警戒するのもわかるが、一旦退いてくれないか?」(陛下←仮)
「陛下!ご無事で!」(謎の男)
「え?本当に王様?」(エル)
「ああ!そうだ!これを見てくれ…」(謎の男)
俺はとりあえず拘束を解いた。
そうしても問題ないだけの力の差があるので、一応油断はしていないものの、話を聞く事にしたのだ。
俺は部屋に明かりを灯す。
「君は本当に強いのだな…2つ名を持つだけの事はある。ハミチン○だったか?
実はここには忍んで来た故に、こんな来訪になってしまった…すまないな」(陛下)
(俺の2つ名って…泣ける…)
俺は目の端に雫を光らせながら、謎の男が見せた物を確認した。
それはこの国の象徴、王様だけが持つと言われている黄金の鍵…この国に住む者なら、これを知らない者は居ない…
花凜やリオンでは、確認のしようが無かったかもしれない…
この役目が俺で良かった。
「確かに拝見致しました。ご無礼をお許しください」(エル)
「よい」(陛下)
「ふぁぁ」(謎の男)
俺は陛下に跪き、非礼を詫びる。
陛下は居住まいを正し、謎の男はへたり込んでしまった。
「ソルがきな臭い情報を掴んでな…民の様子を見に、ソルに行っていたリーファウスの身が心配だったのだ…そこにお前が来た!俺は何としてもすぐに会わねばならないと思い、ここに来たのだ」(陛下)
(あの兵士さん…さっきはグレーとか言ってごめんなさい!)
「実はその事で、ここまで来ました!まずはこれを見てください」
俺は、リーファウス様が書いた手紙を渡した。
今までの状況と、これからの行動が書いてある。
「これは確かにリーファウスの字だ!
クラウド、読んでくれ」(陛下)
「はい!」(クラウド)
謎の男の名前はクラウドというらしい…
陛下と年の頃は近く、幼い時から一緒だったような信頼関係が伺えた。
「えと…これ、読むのですか?」(クラウド)
「ああ、頼む…どうした?読まんか」(陛下)
手紙の封を開け、中身を確認していたクラウドの様子がおかしい…
しかし読まない訳にもいかず、クラウドはゆっくり口を開いた。
「ああ、愛しの花凜よ…余はそなたにぞっこんじゃ!ああ、花凜花凜花凜!何でそなたは花凜なのだ?好きだ好きだ好きだ〜!
この国の事?そんなのどーーーーでもよい!余は花凜しか見えぬ…かーりーん!へい!かーりーん!へい!かーりーん!へい!」(クラウド)
「もうよい!!やめんか!」(陛下)
「…」(エル)
これ以上聞いてられないと言うように、陛下は手紙を読むのを止めさせた。
俺は少しの時間、思考を停止してしまっていたようだ…
(何で!何で何で何で!え?は?ええええええー!)
「聞く事が増えたようじゃ…」(陛下)
「……そのようですね…」(クラウド)
「ほんとーーに知らなかったんです!確かにリーファウス様から預かった手紙でして…」(エル)
「いや、よい…しかし、あのアホめ…本当にアホめ!」(陛下)
仕方ないので俺の知る全ての状況を、陛下に説明した。
街で、花凜とリーファウスが襲われた時の事、ソルの街に詳しい者の可能性が高い事、敵にグラシアン王国の鬼だと思われる者が関わっている事、Sランク冒険者の妖精王花凜が護衛に付いている事…
全て話すのは時間がかかったようで、少し空が明るくなってきた。
「話は良くわかった…しかしあのアホめ…クラウド、この手紙はガクに入れて城の通路に貼り付けてしまえ!」(陛下)
「しかし陛下…それでは…」(クラウド)
「構わぬ!それで?冒険者ハミ○ンコよ、そなたはこれからどうするのだ?」(陛下)
「とりあえず死のうかとおも…いえ、向こうには、人手は足りてるので、ここで手伝える事があれば手伝います。
無ければ戻るつもりです」(エル)
「わかったハミチ○コよ!そなたは空が飛べると聞いておる。
数日の間余の側に使え、何かあれば言伝を頼みたい…どうしたハミチン○?」(陛下)
「いえ、何でも…ありません…」(エル)
「緊張せんでよいハミ○ンコ!今日からよろしく頼むぞハミチ○コ」
(陛下…それでは語尾がハミチ○コの残念な人です…)
俺はそれから数日間、2つ名の事を思い出し、枕を濡らして眠る日々が続いた。
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【花凜】
「ただいま」
「帰ったぞ」
私とリオンは、転移でロナウドの所へ飛んだ。
そこは2階のリビングで、普段皆が集まる場所である。
私の身に付けている沢山の財宝を見て、ロナウドは状況を理解したみたいだ。
「やってしまったのだな…ああ、娘が犯罪者に…」
「大丈夫大丈夫!私もリオンも捕まらないから」
ロナウドの顔は青い…
何故か私と一緒にいると、調子が悪そうになるロナウドに、少し申し訳ない気分になる。
リーファウスを助ける事が出来たら、少しは気持ちも楽になるだろうか?
私はロナウドが元気になるように、抱きつく事にした。
「おかえり」(リーファウス)
「「おかえりなさい」」(ドク、ミー)
「ただいま!」(花凜)
リーファウスと、ドクとミーが近づいて来る。
私はすぐに挨拶を返した。
「あれ?ドクちゃんとミーちゃんぼろぼろ?」(花凜)
「翼の練習してたんだけどね、色々試してる最中なんだよ」(ミー)
「翼の使い方、結構慣れたよ」(ドク)
「何故ロナウドに抱きついておる?」(リーファウス)
「元気補充してあげてるの!物理的に、魔力を注いで」(花凜)
「ああ、力が漲ってくるが…もう充分だ!」(ロナウド)
「腹が減ったな…」(リオン)
私はドクとミーが沢山小さい怪我をしているので、抱きついて癒してあげた。
2人とも気持ち良さそうな顔になり、尻尾を振っている。
ドクは少しだけ緊張したみたいだが、すぐに慣れるだろう。
何故かリーファウスも手を広げていた…
今はそんな事よりご飯を食べよう!
みんなで食堂に移動しようとすると、リーファウスが寂しそうだったので、しょうがなく抱きついておいた。
(甘えん坊だなー…まったくー)
人の事は言えないが、自分の事を棚に上げるのは得意である。
「そうだ、うなぎなんだがな、このソルで40t売れたぞ?これ以上ここで売っても、価値が下がるだけだからやめておいた」(ロナウド)
「ありがとう!いくらになったの?」(花凜)
「金貨40000枚だな、肉1kgを金貨1枚で売りに出した。
かなり安いとは思うが、世話になった街にあまりふっかけたくなかったのだ…」(ロナウド)
「全然大丈夫だよ、ありがとうパパ!お金の事は全部お任せ致します。
皆が美味しい物食べれるように頑張ってね」(花凜)
「美味い物は大事だぞ!金は食えないからな」(リオン)
「そういう事なら頑張るとしよう」(ロナウド)
「うちの子も増えたし!」(花凜)
「余か?」(リーファウス)
「うちの子になっちゃいなよ、リーファウス」(花凜)
「いや、しかしのう…ん?まさか!それは…」(リーファウス)
夕飯はうなぎのシチューだった。
団欒を楽しみながら、こんな時間がずっと続けば良いなと心の底から思う。
今日の夜も襲撃は無く、皆穏やかに過ごしている。
私は椅子から立ち上がった。
公爵は、すっかり箱型ミニもくちゃんハウスの中で、忘れられている。




