〜第四話〜
第四話をお届け致します。
★印以降はストーリー的には続いておりますが、セイリオス側なので“おまけ”と致しました。
ロト視点ではありませんので。
「お前たちが海賊船に乗せろと騒いでいた乗客か?」
というセイリオスの問いに、返事をするのも忘れて彼の顔を凝視している俺に
「どうした? 俺の顔に何か付いてるか? それとも誰かに似ている、か?」
「あ、ああ……ちょっと知り合いに似てるから驚いた」
そう正直に答えたものの、「誰に似ているのか?」と聞かれたらどう答えるべきか俺が悩んでいると、彼は「ほぉお〜」と言っただけで直ぐに話題を変えた。
「それにしても、これはまたチグハグなコンビだな。貴族のお坊ちゃまとその従者ってところ、か?」
「違う! アレクとはこの船で偶然知り合ったんだ。こいつは関係ない。船に乗せてほしいのは俺だけだ」
その途端、隣に居るアレクが俺の方を向いて「はぁっ!?」という顔をする。
何だよ、事実だろ?
そんな事より……
「俺には時間が無いんだ。次の船を待っている余裕はない。海賊船はイータ・カリーナ諸島まで行くんだろ? だったら、俺を乗せて行ってくれ」
畳みかけるようにそう言った。
ハロルドに生き写しのセイリオスは俺の心を掻き乱す。
彼は死んだ。彼の縁者が海賊を生業にしているとも思えない。
俺は早く交渉を成立させて、この場から立ち去りたかった。
「お前の旅の目的地はイータ・カリーナなのか?」
「いや、ほんとはスィーまで行きたいけど……イータ・カリーナまで行けたら、後は何とかする」
「旅の目的は?」
「祖父の墓参りだ」
「急ぐ理由は?」
「期日までに戻らないといけないからだ。無理を言って出てきた」
「期日?」
「再来月の俺の誕生日までに」
セイリオスの単刀直入な質問に、俺も差し障りのない、だが嘘ではない事実を淡々と答える。
「再来月か。確かに、次の船では間に合わんだろうな」
「頼む、船賃は払う。船の仕事でも……何でもするから、この船に乗せてくれ」
「…………」
「お頭、どうするんですかい?」
という手下の質問を右手で制しながら セイリオスは真っ直ぐに俺を見つめる。
その彼の青い瞳に何もかも見透かされそうで、俺は居心地の悪さを禁じ得ない。
けれど、目を逸らす事はしなかった。
俺もセイリオスの瞳を見つめ返す。
頼み事をしているのだ。それが礼儀だと思った。
「よかろう。ウェズンの港まで乗せて行ってやろう。それくらいの回り道は構わんだろう?」
そう言いながら、セイリオスは左側(俺からは向かって右側)に控えていた手下に同意を求める。
どうやら、その男が彼の副官らしい。
男が頷くとセイリオスは満足気に話を続けた。
「船賃などは取らんよ。どんな理由があるにせよ『海賊船に乗せてくれ』なんていう乗客は初めてだからな。その度胸に免じて乗船を許可しよう。だが客扱いはしない。皆働いているんでな。お前たちも船の仕事をやってもらおうか……」
「お前、たち?」
俺が不思議そうに訊ねると
「さっきから、隣の小僧が『俺も、俺も』とアピールしてるんでな」
「!?」
セイリオスとの交渉で精一杯だった俺はアレクの存在をすっかり忘れていたが、驚いて横を見ると自分を指差しながら何度も頷くアレクの姿があった。
こいつ、何も言わないと思ったら……。
多分、何か口を挟めば俺が頭ごなしに反対すると察していたのだろう。
「何やってんだよ? アレクは別に急いでないだろ? 次の船で帰れ」
「嫌だね。俺だってロトと一緒に……じゃなくて、早く家に帰りたいんだ。両親を一ヶ月も待たせるなんて〜そんな親不孝出来る訳ないじゃないか」
……と、瞳をうるうるさせながら至極真っ当な発言をする。
こいつ……!
あまりの噓臭さに俺が呆れていると、アレクは俺の顔から視線を逸らしながら
「それに……」
……って、あいつドサクサに紛れて逃げやがった!
何とかアレクを説き伏せて海賊船から降ろそうと思ったが、のらりくらりと躱されて……
そんなこんなで有耶無耶なうちに、俺とアレクはウェズンまでの道程を海賊と同道する事になったのだった。
★ ★ ★ ★ ★
【おまけ】その後のセイリオスと副首領グリーゼの会話
「しかし、面白い子供どもですね〜。襲った船の乗客から『海賊船に乗せろ』なんて言われたのも初めてですが、まさかお頭がそれを許すとは……」
ため息まじりにグリーゼがそう切り出すと
「そんなに意外だった、か?」
「ええ、まあ。でも、もうすっかり二人とも船に馴染んでますけどね。今日は調理場の手伝いをしてたようですが、二人とも手際が良いのなんの。黄褐色の髪の坊主は兎も角、あの銀髪の坊主まで」
「ほぉお〜?」
「良いところのお坊ちゃんにしか見えないのに『家事全般、大工仕事まで一通りは出来る』そうですぜ」
「それはまた、人は見かけによらぬものだな」
「でしょ! それにしても珍しい髪の色ですよね。ああいうのを、青みがかった銀色って言うんですかねぇ〜?」
グリーゼの言葉を聞いて、セイリオスは僅かに口角を上げた。
「何だ、気づいてなかったのか? 多分あれが、噂に聞く“アル・サドマリクの青銀の髪”だ」
「……はっ? 今、何て言いました?」
グリーゼは我が耳を疑った。
「あれがアル・サドマリクの青銀の、髪!?」
「多分、な。俺も実物を見るのは初めてだが」
「えっ、でも……今、その髪を持ってるのは確か、サザンの……」
「ああ。そのまさか、だろう」
「いや、それはあり得んでしょう? サザンの王子殿下が共も連れずに一人で。……まあ、どこぞの王侯貴族って言っても遜色ない器量ですが……」
「まあ、な。だが、そう考えると色々と辻褄が合う」
「……?」
「再来月の誕生日までに是が非にも帰らねばならない訳とか」
「そう言えば、サザンの王子の戴冠式が再来月……。確か、王子の15歳の誕生日とか!」
「そりゃあ〜間に合わん訳にはいかんよなあ〜」
セイリオスはククっと喉を鳴らす。
「それに俺を初めて見た時の驚きよう、とかな」
「そう言えば、知り合いに似てるとか……って、えぇえっ!?」
グリーゼは驚きのあまり、己が眼を見開いた。
「そういう事だ。俺の顔を見て、驚愕した奴らが皆一様に唱えた言葉は……」
「漆黒の悪魔!」
「ああ。サザン内乱の張本人、サンダーの後継にして最強の能力者、ハロルド・コル・レオニス。会った事は一度もないが、そんなに似ているのかと思ったものだが……」
「しかし、あの坊主がサザンの王子だとしたら、漆黒の悪魔とは宿敵同士って事でしょう? あれは宿敵を見る目ではありませんでしたよ」
「ああ、そうだな。確かにあれは宿敵を見る目でも、己が倒した相手を見る目でもなかった。まあ、世間で囁かれている事と、真実は違うのかもしれんしな」
「…………」
(お頭、楽しそうだなあ〜。もし本当にそうだったら、エラい事なんだが……)
グリーゼは“またお頭の悪い癖が出た”と頭を抱えるのだった。
第四話を来年まで待てない〜という嬉しいお言葉を沢山頂き狂喜乱舞の作者でしたが、お蔭様で大掃除が思ったよりスムーズに終わりましたので第四話を執筆する事が出来ました。ありがとうございます。
第五話は間に合うようでしたら年内にUP致します。間に合わなければ……来年という事で宜しくお願い致します。




