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サザンの嵐・シリーズ  作者: トト
「続・サザンの嵐篇」~落日の彼方へ~第一部
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〜第五話〜

 今回も★印以降はおまけでございます。

 ストーリー的には続いておりますが、ロト視点ではございませんので。

 航海は順調だった――

 セイリオス海賊団の面々は皆、豪快で気さくで、俺たちは直ぐに彼らに溶け込む事が出来た。

 海賊を褒めるのは語弊があるかもしれないが、流石“義賊”と云ったところか。


 俺たちが乗っていた貨客船(ふね)とは違い、途中幾つかの港に寄港して数日間停泊するという事もないので(一度だけ水と食料調達の為に何処かの港に寄るそうだが)仮令ウェズンからは陸路になったとしても、当初の予定と変わらずに(いや、幾分早く)スィーに辿り着けるだろうという副首領グリーゼの言葉に、俺はホッと胸を撫で下ろした。


 だが、問題なのは帰路の方――

 アルヘナ⇔シャウラ間を運航する南回り航路の貨客船は、最終停泊港(もくてきち)であるシャウラで一週間停泊した後、再びアルヘナに向けて出港する。

 故に、俺のスィーでの滞在期間も一週間の予定だった。


 しかし、それと同じ航路を辿る船は一ヶ月遅れとなる。

 短い航路の船を乗り継ぐと陸路を採るのとほぼ行程は変わらない。

 船便はそう多くない為、乗り継ぎには数日を要するからだ。

 

 それならば俺がサザンを目指した時の、北回りの陸路主体のコースで帰った方が未だ早いかもしれない。

 ティール⇔シュンガ間はアレク曰く“一番安全な航路”らしいし……と、当のアレクと甲板(デッキ)の掃除をしながら、俺はあれやこれやと帰路の行程を思案していたのだが――と、その時!


「風……?」


 俺の周りに、一陣の風が吹いたような気がした。


 いや甲板に居るのだから、凪ででもない限り風は常に吹いている。

 海賊船(ふね)は帆に風を受けて航海(はし)っているのだから。

 だとしたら、今の感覚は……?


 突如沸き起こった得体のしれない不安感に、デッキブラシを掛ける手が止まる。


「ロト、どうし……」


 アレクが心配そうに俺に声を掛けようとした時


「竜巻だっ!」


 上方から声が聞こえた。


 思わず帆柱(マスト)を見上げると、船の進路を見張っていた男が遥か前方を指差しながら叫んでいる。

 その男が指差す方に目を向けると、海から空へと繋がる一筋の線が見えた。

 かなり遠いが、それは紛れもなく“竜巻”だった。


 竜巻は海水を巻き上げながら海賊船に向かって一直線に進んで来る。


「取舵いっぱ〜い!」


 というグリーゼの言葉に


「と〜りか〜じ」


 と復唱しながら操舵士が舵を左に切る。


 これだけの距離があるのだから、何の問題もなく竜巻は回避出来る。

 誰もがそう思った瞬間、竜巻は徐に進路を変えた。


「何だ、と?」


 グリーゼは今度は面舵を指示し、海賊船は元の進路に戻る。

 だが――


 竜巻(それ)は、まるで意志を持って海賊船を狙っているかのように再び進路を変えた。


「そんな馬鹿、な……?」


 そうグリーゼが呟いた時


「どうした?」


 セイリオスが甲板に姿を現した。


「お頭〜良いところに! おかしいですぜ、あんな竜巻は初めてだ。まるでこの船を狙っているかのように進路を変えて……」

「何っ!?」


 セイリオスはもう一度面舵を指示。

 すると、それを嘲笑うかのように竜巻も船の方へと進路を変える。


「成程、な。確かに意志を持っているとしか思えん動きだ」



 セイリオスとグリーゼの会話を聞きながら、俺も現在(いま)の状況を整理する。

 俺はあんな大きな竜巻と遭遇した事は一度もない。

 だから、あの竜巻が普通の竜巻とどう違うのかは分からない。

 ただ、竜巻(あれ)が純粋な自然現象ではない事だけは薄々気づいていた。

 竜巻からは微かに何者かの“気”を感じる。

 けれど竜巻は遠隔操作されているようで、その気の主が何者なのかまでは判別出来ない。


 あれは、誰かの思念に因って作りだされた竜巻(もの)――


 だが一体誰が? 何の目的で?

 ブラッド一族の能力者の中で、あれ程の能力(ちから)を行使出来る者は既に亡い。

 一族の者以外に存在するとも思えない。

 だとしたら、さっき感じたあの”風”は?

 あの竜巻が狙っているのは、まさか――!?


 その考えに行きついた時、俺は夢中でセイリオスの許へ走っていた。


 己の正体を気取られるかもしれない――そんな事は既に頭から飛んでいる。


「セイリオスさん、あの竜巻が狙ってるのはこの旗艦(ふね)だ! 他の海賊船(ふね)はこの旗艦(ふね)と違う方向に回避させて!」

「何だと? 何故そんな事が分かる?」


 セイリオスは訝しげに俺を見た。


 それはそうだろう。

 竜巻が明確な意志を持って特定の物を襲う等という荒唐無稽な話を、直ぐに信じる方がどうかしている。

 だが俺にも明確な答えがある訳じゃない。

 いや、辿り着いた結論を否定したい想いの方が強かった。


「根拠は、ない。俺の直感だとしか……。兎に角、急いで!」

「…………」


 俺がこの船に居るからだ……とは、流石に言えなかった。


「お頭、どうします?」


 セイリオスはまじまじと俺の顔を見つめていたが


「よかろう。お前の直感を信じよう」


 そう言うと、手旗信号で他の船に旗艦とは異なる方向に転進するように命じた。

 すると思った通り、竜巻は他の船を無視して、旗艦(このふね)だけを目指して一直線に近づいて来る。


「ほぉお〜! お前の感が当たったようだな。だが問題はこれからだ」

「ああ」


 これで他の船の安全は確保出来た。

 しかし、竜巻はもう目と鼻の先――帆を畳んでいる時間はない。


 まるで吸い寄せられるように、船は竜巻目指して進んで行く。

 波も風も激しくなり、舵を取るのも難しい状態になりつつあった。


「操舵を代われ!」


 操舵士に代わってセイリオスが舵を取る。


「船の事は俺に任せろ! なるべく揺れんように俺が舵を固定させる。お前は竜巻にのみ、意識を集中すればいい!」


 セイリオスはまるで俺の意図を汲みしているかのようにそう叫んだ。


 俺は無言で頷くと、船の先端に立って竜巻と相対した。


 グリーゼも他の船員たちに、船から振り落とされないように身体を固定させる事を指示。

 俺の横でどうしたものかと右往左往していたアレクも、グリーゼに後方に退()がらされて帆柱(マスト)に身体を括りつけられた。

 俺も自分の身体を縄紐(ロープ)で固定する。


 これでこちらの準備は整った!


 巨大な竜巻に対して能力(ちから)を振るうなど初めての経験だった。

 あれが純粋な自然現象であれば、勝てる見込みはほとんどない。

 だが、何者かの力に因って成された物ならば……勝算はある!


 俺は竜巻と船との間に防御壁(シールド)を張った。

 それは竜巻を防ぐ為の防御壁(もの)ではなく、竜巻を形成している思念波を中和分解させる為の防御壁。

 力に力で対抗するのでは勝ち目が無い為の苦肉の策だった。


 竜巻を構成していた思念波は防御壁に触れた部分から、徐々に中和分解されていく。



     挿絵(By みてみん)



 後は余波として残る風が終息するのを通常の防御壁で防ぐ。

 波までは防ぎ切れないので、セイリオスの操舵に任せるしかなかった。


 激しく揺れる船体。

 だが、セイリオスは涼しい顔で舵を取る。

 彼の巧みな操舵でなければ、船は凄まじい横波を受け、忽ちのうちに転覆していたに違いない。


 吹き荒ぶ風で帆柱が軋んだ音を立てる。

 帆はあちこち破れ、引き千切られた切れ端が遥か彼方に飛んで行く。

 海水は船にこそ飛沫が掛かる程度だったが、後方の海面に雨のように降り注いでいた。

 竜巻の衰えよりも早く、急速に衰萎していく防御壁。

 吸い上げられた海水と暴風の全てを防御壁で防ぎ切る事は不可能だったのだ。


「どうか、持ってくれ!」


 俺は祈るような気持ちでそう呟いた。



 四半時後――


 風と波が静まるのを見定めて、力を使い果たした俺は……意識を手放した。

 暗闇に落ちる寸前、遠くで誰かが俺を呼んだような気がした――



  ★     ★     ★     ★     ★



【おまけ】その後談


「ロト……ロト、大丈夫か?」


 縛られていたロープを解いてもらったアレクは一目散に倒れているロトの許に走って、彼を抱き起すとぺちぺちと頬を叩きながら、彼の安否を確認しようとした。

 グリーゼもロトが身体を固定させる為に縛っていたロープを外しながら、心配そうに覗き込む。


「力を使い果たしただけだ。暫く休めば良くなる」


 そう言いながら近づいて来たセイリオスは、徐にロトを抱き上げると



     挿絵(By みてみん)



 赤面しながら硬直しているアレクたちを後目に、颯爽と甲板を後にした――



【おまけ】またまた、その後談


 鳶に油揚げを攫われる――とは正にこの事!


「俺もロトをお姫様抱っこしたかったぁあ〜!!」


 と、アレクは悔しさを隠せない。

 けれど……


     挿絵(By みてみん)



 とっても()いものが見られたので、それで良しとするアレクだった←本当にそれで良いのか? 

 年内にもう一話UP出来れば良いなあ〜と密かに思っております。

 宜しくお願い致します。

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