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もうお別れのという日まで、一週間を切ったころ。
彼は変わらず私と一緒にいて、そして変わらない様子で運転していた。
私も変わらないふりをして、彼と一緒にいた。
もう時間がないけれど、やっぱり私にはなにもすることができないから。
彼の通っていた大学の校内の一角、彼はそこに私を待たせた。なにがあるというのだろう?
ほどなくして、建物の中から、どこかで顔を見たことのある面々が次々に顔を出した。彼が大学生だった時の友人たち、私とともに何度も旅したことのある懐かしい顔ぶれだった。
「いや、久しぶり。そしてお疲れさんフィット」
「まあものの見事にボロボロだわな。よく走ってたな。今まで」
「結局何キロ走ったって言ったっけ?」
口々に彼らは私にねぎらいの言葉をかけ、ポンポンと私を優しく叩く。
「24万キロだな。地球6周分!!」
実際に走ったのは私だというのに、彼は誇らしげにそう答えた。
いや、違うかもしれない。彼はひょっとすると、私にかわって誇ってくれたのかもしれない。不思議と心が震えるように感じられた。
私は車。彼が乗ってきただけのただの車。
走り過ぎにメンテナンス不足、ギリギリの状態で走ってきて、ついに廃車になることが決まった、ただの彼の所有物。
そう。ただの車だ。例えそこに意思があったとしても、彼に……彼ら人間にとってはただの無機物であるはずのものだ。
そんな私に、彼は、彼らは、優しく言葉をかけるのだ。
「お疲れさん」と。




