3 迷宮街 5.15
ドッグバリーを撃破した翌朝、カテリナは周囲の騒がしさに目が覚めた。独房の外には大勢の女性囚人がいて何やら声を上げている。その扉を守るように看守のタリアが立ちふさがり、彼女たちを抑え込んでいた。
「なにごとなの?」
体を起こすと関節が嫌な音を立てた。寝心地最悪のベッドで寝ていたため、体が固まっていたようだ。
『昨夜のことが広まっているんだよ。で、カティーへの感謝派と不満派がもめてるっぽい』
眠らずの番をしていた『悪霊』メモリが説明する。『悪役公爵令嬢』カテリナ・アーモニアは「ああ」と納得した。おそらく不満グループは男囚相手にいろいろと稼いでいたのだろう。その不満を言いにきたのだとわかった。実際にそんな声も聞こえてきている。
カテリナは面倒くさそうに手を叩いた。
「みなさん、注目。まずは落ち着きなさい。勘違いしている方もいるようですが、女性監房への侵入はやめさせましたが、こちらから男性監房へ行くのは禁止していません。ですので自分のペースで稼ぎたいときに稼ぎにいけるようになった、と考えなさい。というか、どうしてそれくらいわからないのかしらね。以上、解散」
もう一度手を叩いてカテリナは大あくびをした。令嬢として振る舞う必要がなくなって、気楽にはなっていた。
不満派の囚人たちは、物言いは気に入らないが「それならば」と彼女の独房から離れていった。感謝派からは一礼をされたり、声は小さいが「ありがとう」も聞こえた。
『あっさり退いたね』
「あの人たちは搾取されること、冷遇されることに慣れすぎなのよ。だから状況の変化を活用しようと考えられない」
『こういう状況じゃ仕方ないと思うけど……』
「仕方ないと思うのなら、黙って受け入れていればいいのよ。周囲に振り回されて、利用されて、捨てられればいい。どうせ愚痴を言う以外の何もできやしないのだから」
『それは酷くない? 好きでそうなったわけじゃないでしょ』
「そう思うのなら、まず囚人にならない努力をすべきだったわね。どうであれ、私には関係のないこと。そうでしょ? そしてそれを責めるあなたもお門違いよ」
『……ごめん』
「ふん」メモリが素直に謝罪したことに、カテリナは不満だった。この頭に住みつく悪霊も、カテリナと意志を共有するにはあたらないとわかったからだ。それこそ、邪魔にしかならない存在だった。なぜこんなものが突然わいて出てきたのか、まったくもって理解できないも苛立たしかった。
「雑事にかまってられないわ」
カテリナはベッドから降りて、鍵のかかっていない扉を開けた。
『どこへ行くの?』
そう訊ねるメモリに、カテリナはため息を吐く。記憶力も悪いのか、と皮肉を言うのも面倒くさかった。
「……昨夜ドッグバリーに言ったでしょう? あのダイヤを売りに商会へ行くと」
『あー、この街最大の商会、えっと、ボッター商会?だっけ?』
「そうよ。まずは資金を作らないと」
カテリナは改めて自分の姿を見る。囚人服として与えられた、丈の短い薄汚れた麻のワンピースに布靴姿。これで迷宮に行こうものなら、魔物の餌にしかならないだろう。
「カテリナ様っ」
看守のタリアが上気した顔で、独房から出てきた囚人に声をかけた。
「……は?」
カテリナは嫌な顔をした。
「おはようございます。朝からお手を煩わせて申し訳ありませんでした。それとこれをお召ください。私物なのでこんな服しかありませんが、その囚人服よりはマシかと」
タリアが飾り気の少ないブラウンのワンピースと肌着を数枚、グレーのブーツを差し出した。カテリナは眉根を寄せたが、断る理由が見つからなかった。
「……それじゃ、いただくわ」
「どうぞ。地味だし、センスもありませんし、サイズも合わないかもしれませんが」
「囚人服よりはマシね」
『素直に感謝しなよ』
カテリナはメモリの文句にうるさいと思いながら、口にしたのは別のことだった。
「それで、あなたはどういうつもりなの?」
「え? あ、いえ、昨夜の感謝といいますか、尊敬しているといいますか、さすが公爵家の御令嬢と感動いたしまして――」
「愚かね」
「はい?」
「あなた、ご自分の立場を忘れてるの? あなたは看守、私は囚人なのよ? それと私は『元』公爵令嬢。あなたが礼を尽くす相手ではないの。はっきりと言えば、今のあなた、無能看守の見本だわ」
『カティー!』
『黙れ、蠅』カテリナは頭の中で怒鳴りつけてから、タリアに意識を向けた。
「強い者に取り入って、弱い者を放置する。私に感動? 自分にできないことを他人の背中に見出して悦に浸っているだけでは? それで自分が何かできたように感じたいわけ? なによりあなたがこうして囚人にへつらえば、他の看守も囚人に舐められるとわからないのが度し難い。その意味であなたはあの腐った刑務所長にも劣る。あれは囚人を囚人として見ているだけマシというものよ。看守は囚人と必要以上に関わるべきではない。同情や、ましてや尊敬の念など抱くものではないの。悪人はそういう心も利用するものなのよ。お友達が欲しいなら外で見つけなさい。それができないなら、看守の仕事なんてやめてしまいなさい」
「……」
タリアはカテリナの一言ひとことに胸が抉られるようだった。望んだ仕事ではないが、命令された以上は兵士としての職務と言い聞かせてきた。多くの理不尽と不正義を目の当たりにし、何もできない自分が悔しかった。何も感じなくなるほど諦めていたところに現れたカテリナ・アーモニアは、まさに彼女の代弁者のように問題を片付けてしまった。だから憧れもするし、役に立ちたいとも思う。しかし、彼女は真向から否定してくるのだ。正論という、自分がもっとも世間に訴えたい言葉を使って。
「この服だって、囚人全員に公平に配るのは無理でしょう? 一人を特別視すれば、その反感がどこに向かうか、よく考えることね」
カテリナは囚人服を脱ぎ、体をよく拭いてからもらった服を着た。丈が足りず、胸がきつい。靴も少し緩い。
「だけれど」カテリナは満更でもなかった。
「思ったより悪くはないわね。ありがたくいただくわ。これで貸し借りはなしよ。私が押し付けたようなものだけど」
「……それは刑務所内の秩序回復に貢献した褒美だ。囚人番号37563、よくやった」
タリアは顔を上げて、まっすぐにカテリナを見た。
「あなたのためではないわ」
カテリナは脱いだ囚人服をタリアに渡し、男性監房のほうへと向かった。
タリアはため息をつき、それから満足げに笑みを浮かべた。
「さっさと起きなさい」カテリナはまだ寝ているドッグバリーの独房の扉を乱暴に開けた。鉄格子の扉は錆びついて軋み、想像以上の大きな金属音を出す。部屋の住人はおろか、周囲も、まさかのカテリナもメモリも顔をしかめて跳び上がった。
「うるっせェよ! なんだよ、どこのバカだ!」
「ここのバカよ! 扉に油くらいさしておきなさい!」
「そんな牢屋があるかァ!」
正論ツッコミに、カテリナも反撃が出なかった。「ま、いいわ」と無理やり話を進める。
「ボッター商会に行くわよ。早く支度なさい」
「きのうも言ったが、オレが案内する必要あんのかよ? 手下を使っていいから、とっとと出てけ。ああ、案内料はそいつに渡しておいてくれ。金額を書いた紙も持たせろよ」
ドッグバリーはベッドに倒れた。置きっぱなしになっていた酒瓶が転がり落ちる。
「あなた、多少は顔が利くのでしょう? できるだけ高く売りつけてちょうだい」
「あそこはそんな甘くねーぞ。なにせ迷宮街の成り立ちからある商会だ。何でも揃う優良店だが、逆方向に真っ黒な裏もある。100金貨を超える良質ダイヤなんぞノコノコ持っていくと、とんでもない目にあうかもな」
「だから案内兼護衛がいるのよ。当然、それに見合う報酬はだすわ」
「……いくらだ?」
ドッグバリーは首だけ捻ってカテリナを見た。
「そうね、売値の5%でいかが?」
「15%」
「いいわ」
「おい、即決かよ!?」
ドッグバリーは飛び起きた。ここから交渉がはじまると思っていたのだ。そして10%に落ち着けば上々、8%でも御の字だと考えていた。
「それに見合う働きをするために必要な金額なのでしょう? なら、プロの意見を尊重するわ」
カテリナは当然といった顔をしていた。
一方のドッグバリーの顔は引きつっている。
「……いちおう訊くが、30%と言っていたら……?」
「払ったわよ? 私としてはそれくらいは想定していたのだけれど、思ったより謙虚なのに感心したわ。それコミで即決したの」
「……クソ」
ドッグバリーは悔しかったが、こぼれる舌打ちに嫌味はなかった。これほど明快なやりとりは、この街に来て初めてであった。
「では行くわよ。案内しなさい」
「わーったよ、お嬢様。今日だけは主人ヅラさせておいてやる」
「よろしい」
ドッグバリーは上着を肩にひっかけて独房を出た。その後ろをカテリナがついていく。
その奇妙な行軍を、刑務所内の看守も囚人も、刑務所長もポカーンと見送っていた。
刑務所を出ると、すぐ近くに奇妙な石造りの建物が見えた。高さは5メートルほどだが、左右がとてつもなく長い。100メートルはあるだろう。その中心あたりに入り口があった。
建物に見入るカテリナに、ドッグバリーが数歩戻って近づいた。
「きのう見なかったのか? あれが迷宮だ」
「話には聞いているわ」
「オレたち迷宮懲役囚の生きる場所で死ぬ場所だ。ま、もっとも、誰ひとりそんなふうに考えちゃいねェがな。攻略なんぞ知ったことか。日銭を稼ぐには便利だから入る程度よ。低層のザコなら徒党を組んでいけば楽勝だからな。命を懸けずに楽に稼いで散財する。囚人なんざそんなもんだ」
「でしょうね。迷宮街の中だけだとしても自由があるのだから、それでよしとするのが賢明よ。迷宮懲役刑なんて意味のないものになってしまっていることに、司法はまだ気付かないのかしら。それだけこの街は大きくなりすぎたのよ。罪人たちの理想の街にね」
「わかってんじゃねーか。ここは吹き溜まりの街だ。犯罪と暴力と金、悪党にとっちゃ国が用意してくれた理想のゴミ溜めだ。ありがてェこったよ」
「……時間を無駄にしたわね」
カテリナは街の中心部に向けて脚を進めた。
歩きはじめて二分もせずに防壁にぶつかった。街を囲む三重防壁のもっとも内側にあたる。街の中間エリアと行き来する門にも兵士がいたが、ほぼ素通りだった。ドッグバリーがいたのが大きいようだ。兵士にとってもすでに馴染みの顔である。
中間エリアは犯罪者が多い。さらに外側の統制エリアは兵舎や商店、魔術協会支部、教会と、普通の街とほぼ変わらないため、治安もそれほど悪くはない。言い換えれば犯罪者にとっては居心地の悪い場所だ。だからといって刑務所にいたいわけでもないので、迷宮懲役囚や低所得者は中間エリアに集まる。朝から騒がしいのも住人の特色によるものだ。
「禁制品が欲しいならこの辺で探すといいぜ。表に出せない物を売るにも中間エリアでなら売れるだろう。紹介料をくれりゃ、オレの馴染みにつないでもいい」
「機会があればね。でも今回は表の店で売りたいのよ。ボッター商会と懇意にしておいて損はないもの」
「まぁな。噂じゃ商会は表の顔を使って、街の外に人を逃がすなんてこともやってると言うからな」
ドッグバリーが意味深長な笑みを浮かべた。
「勘違いしているようだけど、私は正規の方法でこの街を出るつもりでいるわよ」
「正規の方法……? 金を貯める気か! 正気かよ!?」
「私にできないと思って? 遅くとも一年後にはここにいないわ」
カテリナは笑みを浮かべ、歩みを早くした。
「ま、一年以内に死んでるって意味なら合ってるだろうよ」
ドッグバリーは呆れながら追った。
中間の防壁も越え、二人は統制エリアに入った。あきらかに通行人や店の層が変わった。王都の町とほぼ変わりない身なりの者や、迷宮に挑む装備の充実した戦士たちが多い。子供の姿もチラホラ見えるが、中間エリアのようにやせ細ったり目が死んではいない。
カテリナは感想も漏らさなかった。予想どおりの風景であったからだ。
ドッグバリーはそんな彼女を興味深く見ていたが、口もとに笑みを浮かべただけでやはり何も言わなかった。
「そこだ」
外壁近くまで歩いたところで、ドッグバリーは指さした。この街で最大の大きさを誇る建物だった。看板には様々な商品を彫り込んだ木看板が並び、文字でも『ボッターの店』と書かれている。その看板はボッター商会会長クルー・ボッターがこの街で商売を始めたときから掲げてきた物だった。26歳で立ち上げて、もう30年になる。
「1階から3階が販売所、4階が商談・買取所だ。品ぞろえを見るか?」
「先に売るわ。お金の持ち合わせがないのだから見ても無駄」
「だよな」
ドッグバリーが入ってすぐの階段を上がっていく。カテリナは流す程度に店内を見たが、なるほど、商品は充実しているようだ。
4階の待合所で30分ほど待たされ、買取カウンターに着く。
カテリナは椅子に座ると、何も言わずにダイヤを置いた。
鑑定人の目が忙しくカテリナとダイヤを行き来する。彼女はただ微笑んでいた。背後に立つドッグバリーはニヤニヤしている。
「しばしお待ちをっ」
鑑定人はバックヤードに下がった。一目で価値を看破したのだから、見る目は確かなのだろうとカテリナは信用度を上げた。となれば、次の展開は彼女が望むとおりになるのを疑いもしなかった。
鑑定人が戻ってきた。
「お待たせいたしました。お手数ですが、別室にお移りしていただいてよろしいでしょうか」
「ええ」
カテリナは立ち上がり、案内に従った。ただ、ドッグバリーは足止めされた。
「申し訳ありません。こちらのお嬢様のみご案内せよということですので、待合所でお待ちいただけますか」
「ンだとォ……!」
「もめ事はお断りよ」
カテリナに言われ、ドッグバリーは舌打ちして待合所に戻っていった。
カテリナは鑑定人に何も訊ねず、ついていった。階段を上がり、立派な両扉を通され、この街に不釣り合いなソファーに落ち着いた。
ほどなく一人の壮年男性が彼女の前に座った。黒髪の半分は白く染まり、年齢と立場にふさわしい精悍な顔にもシワが目立っていた。
「こちらからご挨拶もなく失礼しました、カテリナ・アーモニア嬢。商会会長のクルー・ボッターです」
「失礼などではないわ。私はただの囚人なのですから。お目にかかれて光栄です、ボッター様」
「この度はご不運でしたな。あなたが囚人になるとは」
「そう嘆くものでもありません。なかなかに刺激的ですわよ。さて、本題に入りましょうか」
カテリナはダイヤを差し出した。
「なるほど、よいものですな。うちの鑑定人が慌てるのも無理はない。盗品やあなたの身元を疑いたくもなる」
ボッターは手に取り、ルーペで鑑定しながら感想を述べた。
「あなたはすぐに私とわかったようですが?」
「それはそうでしょう。これだけの品を持ち込む見知らぬ美女となれば、昨日到着したあなたしか考えられません」
「あら、慧眼ね。それで、いかほどかしら」
「120金貨といったところですな」
「そんなものですか」
「適正かと。おわかりでしょう」
「ええ。私は公爵家とは無縁ですから」
カテリナは笑みを崩さない。
「……何か、他によい品をお持ちで?」
「それを見極めるのは私ではないわ」
彼は彼女のふてぶてしさに好感を持った。あのアーモニアの血を感じ、興味を覚えた。
ボッターは呼び鈴を鳴らした。隣室に控えていた秘書が入室すると「160だ」と告げた。秘書は一礼して下がっていく。
「お聞きのとおり、160リスルでお引き取りいたします」
「よい投資をなさったわね」
「ありがとうごさいます」
ボッターは律義に頭を下げた。
「では投資のお礼に、一つ、助言をいたしましょう。半年以内に店を引き払える準備をしておくといいわよ」
ボッターはカテリナの言葉を噛み砕くように頭の中で反芻した。
「……この街が終わると?」
「遅くとも一年」
「何が起きるのですか?」
身を乗り出すボッターに、カテリナは笑みを強めた。
「迷宮が消えるのよ」
『それとメモリ、いいかげん黙りなさい!』表情を崩さず、彼女は頭内に叫んだ。
おまけ
『うっわー、大きな建物だねぇ。でも平屋っぽいね。なんだろ』
『え、あれが迷宮なの!? 想像してたより普通なカンジ。もっとこう、神秘的とか恐ろしいものかと思ってた』
『それってさー、囚人の意味なくない? 毎日むりやり押し込んで、時間になるまで帰って来るなーとかやんないと罰にならないじゃん。お金払えば許されるってダメダメだと思うよ』
『うわ、門を潜ったら一気に怪しくなったね! ガラの悪いのがいっぱいいるよ』
『あ、でも普通に屋台とかお店とかやってんだ? そういやお腹空かない? カティー、きのうから何にも食べてないじゃん。あ、わたしは大丈夫だよ? 当たり前だけど、体がないからお腹も空かない』
『ね、見た!? さっきのスキンヘッド! てっぺんからうなじにかけて縦一文字の刃物傷みたいな痕があったの! 少し赤らんでて、後ろから見るとなんか卑猥だったよ! ねぇねぇ、見たよね!?』
『うわ……。こんなところにも子供っているんだね。ぜんぜん動かないよ。こっち見てるけど、どうしようもできないんだよね。一人を救っても、ダメなんだもんね……』
『ネコ! ネコいるよネコ! おお、すごいジャンプ力! お魚くわえたネコなんて初めてだよ!』
『門を潜ったらまた景色が変わった。あ、昨日見たっけ。普通っぽい街並みだよね。まぁ、馬糞だとかちょいちょい汚いけど、さっきのとこよりはマシかな』
『背の高い建物が多いね。教会っぽいのもあるけど、あのシンボルってそう?』
『肉! お肉を焼いてる! 美味しそう~……』
『うわ、冒険者!? 迷宮に行くのかな!? 鉄鎧に革鎧にローブに剣に斧に杖! もうRPGじゃん!』
『う~ん、エルフにドワーフ、リザードマン。フェアリー、オーク、ジャイアント。ぜんぜんいないじゃん!』
『へー、面白そうな物たくさん売ってるね。あそこの瓶の棚、薬かな? ヒール・ポーションはいらないかもだけど、毒消しは買っていこうね』
『フフッ。鑑定屋さん、あまりの見事なダイヤにビビってるよ! ドヤァってカンジだね』
『驚きすぎて上司でも呼びにいったかな』
『すごい部屋だね。お貴族様の執務室ってカンジ。でも、あっちに並べている展示物は成金趣味で嫌味だよね。……えー、あの金のマトックはなに? 誰が何のために作ったのか問いつめたくならない?』
『渋いおじさんキタぁー! なんか声がギブスだよ! そういやドッグの声はオクヤスっぽいよね』
『……こういう会話ってフィクションだとよくあるけど、実際は無駄が多すぎない? カッコいいつもりなの? もっと普通に交渉しようよ。すれ違いが起きたら格好つかないよ?』
『え、この街、なくなるの!?』
『マジでぇ!!!』
刑務所を出てからのメモリの発言。
やかましいのでカテリナは会得したばかり即興スキル【完全遮断】を発動していた――が、限界はある。




