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悪役令嬢は聖女なので迷宮懲役囚になりました  作者: 広科雲


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2.5 ドッグバリー死す 5.14

 これは、前回のカテリナvsドッグバリーの戦いの記録である。

 ※文章はイメージです。

 二人はテーブル中央のカードデッキから一枚ずつカードを引き、5枚揃うと顔を見合わせた。

「「決闘(デュエル)!」」

「私の先行。場にクラブの6を守備表示で参戦、カードをカウンターエリアに2枚伏せてターンエンドですわ」

 ※先行には1ターン目のドローフェイズはない。

 ※カードをソルジャーエリアに横向きで置くと守備表示となる。攻撃表示は縦。数値はそのまま守備値であり攻撃値である。ソルジャーを場に出すことを『参戦』という。

 ※カードをカウンターエリアに置くと相手の行動をトリガーとしたカウンターカード扱いになる。

「オレのターン、ドローだ! チッ、クズカードか。そのままスペードの3を守備表示。ターンエンド」

「私のターン。ドローフェイズで1枚カードを引きますわ。行きますわ、ダイヤの6をリリースして上級ソルジャー・ハートのクイーンを参戦!」

 ※絵柄カードJ,Q,Kは10以下のカードを代償にしなければ参戦できない。

「もうお出ましかよ」

「ハートのクイーンでスペードの3を攻撃!」

「カウンターはねぇ」

「では攻撃値12でスペードの3の防御値を突破。再起不能!」

 ※たがいの数値を比較し、最終的に大きいほうが勝つ。相手が守備表示の場合、相手のライフにダメージは与えられないが、カードは捨て山(野戦病院)に置かれる。

「第2セットフェイズはありませんわ。これでターンエンド」

「怖ぇこえぇ。オレのターン! ハハ、いいカードを引いたぜ。オレはダイヤの5とダイヤの10を出し、【強盗(ごう・とう)】を発動! 相手プレイヤーの手札を確認し、任意の1枚をオレの手札にするぜ」

 ※カード単体でも各カードには魔術やトラップなどの効果があるが、複数組み合わせることで更なる特殊効果を発揮する。

「下品なあなたらしい姑息な戦術ですわね」

「なんとでも言え。ルールで認められた効果を使って何が悪い。……お、いいカード持ってんじゃねーか。ダイヤのジャックをもらうぜ。だがすぐに上級は呼び出せねぇ。まずはスペードの8を守備表示。カードを2枚伏せてエンドだ」

「……? ……見えみえのカウンタートラップね。でも、私はさらにその上をゆく。私のターン、ドロー! クラブの7を攻撃表示で参戦ですわ。ファイトフェイズ、ハートのクイーンでスペードの8を攻撃いたしますわ!」

「クソ、ハッタリに引っかからなかったか。カウンターはねぇ! 壁が消えちまった」

「……怪しいですわね。伏せカードを一枚も使わなかったのは何かの布石でしょうか」

「おいおい、ビビってんのか? そうよ、このカードは次への布石よ。次のターン、地獄を見せてやるぜ」

「小者のセリフですわね。ですが敢えて乗って差し上げますわ。小者に虚仮(こけ)にされるほど、私は落ちぶれてはいませんのよ。クラブの7で本陣攻撃(ダイレクト・アタック)!」

 ※ソルジャーエリアにソルジャーがいないとき攻撃すると、攻撃値そのままのダメージをライフに与えられる。

「ぐあああああぁぁぁっっ!」

 ※ドッグバリーは7のダメージを喰らい、ライフが20から13に減る。

「……」

「ライフは減ったが、思惑どおりだぜ。カウンターカード発動! スペードとハートの4! 特殊効果【死屍累々(し・し・るいるい)】。同ターンにソルジャーが2体以上病院送りになったときに発動できるカードだ。デッキからこのターンに失ったライフ分だけカードをドローできる!」

「手札増強効果!」

「へっへ……。これでオレの手札は8枚。だが、ルール上6枚以上は持てないから2枚を捨てる。スペードのキング、ハートの8だ」

「……?」

「さぁ、まだおまえのターンだぜ? これが最後のターンにならなきゃいいけどなぁ?」

「……フフ、そうね。勝負は次のあなたのターンで終わるかもしれませんわね」

「な、なにが可笑しい!?」

「あなたの狙いはわかりましてよ」

「な、なに!?」

「【シャッフル同盟】は参戦させません」

「……! な、なに言ってやがんだ、このアマぁ……!」

「声が震えてらしてよ。……どうりで手ごたえのない戦いをなさると思いましたわ。あなたは必死になってカードを回し、【シャッフル同盟】五名を集めようとしていたのですね」

「……っ」

「なぜわかったのか、といった顔をしておりますね。最初の違和感は【強盗】を使われたときですわ。あなたは他のカードには目もくれずダイヤのジャックを持っていきました。そのときスペードのエースという強力カードがあったにも関わらずです。そして今、スペードのキングとハートの8……通称【ハーピーのハッピートリガー】という、これもまた強力カードをためらいなく捨てました。そこから導かれる答えなど、単純にして明快というものですわ」

「……フン、それに気付いたとして、今さら何ができる。こちらも敢えて挑発に乗ってやろう。オレの手札には、すでに4枚の【シャッフル同盟】がある。あと一人揃えば、その時点でオレの勝ちだ」

 ※特殊勝利条件【シャッフル同盟】とは、特定の5枚のカードを自分の手札もしくは自軍エリアに揃えることで完成する。そのカードはハートのキング、スペードのクイーン、ダイヤのジャック、クラブのエース、ジョーカーである。

「でもその最後の一枚は私が持っておりますのよ? ほら、特別に見せてさしあげますわ、キング・オブ・ハートを」

「!!!」

「最後のピースは私の駒ですの。そして次の私ターンであなたのゲーム・エンドですわ」

「クッ……フハハハハっ! おまえがキング・オブ・ハートを持っている可能性を、このオレが考えなかったと思うか? 浅はかだぜ。所詮は戦いを知らねェお嬢様よ。まんまと挑発に乗り、キング・オブ・ハートを見せびらかしやがった! 学ばねぇなァ、お嬢様よぉ。こうなればオレにも勝の目が出るとも気付かねェとは」

「……ど、どういうことですの? このカードを私が所持しているかぎり、あなたが【シャッフル同盟】を揃えるのは不可能ですわ!」

「おいおい、マジで気付いてねーのかよ? さっき喰らったばっかだろうがよ。【強盗】の効果を。5と10の組み合わせは、まだ残ってるんだぜェ」

「あ……!」

「オレの手札にはすでに5のカードがある。つまり、このドローで10を引けば……」

「おやめなさい!」

「何をやめるって? バカかお嬢様。これで終わりだ! オレのターン、ファイナル・ドロー!!」

「ダウトよ」

「痛(いで)ぇぇ! なにカードを投げてやがる! 手に刺さったじゃねーか!」

「そう? では治して差し上げるわ。手をお出しなさい。さぁ、そのリストバンドも外して」

「……! い、いや、大丈夫だ。こんな怪我、大したことは――」

「お見せなさい」

「いでぇ! 手首を捻るな! なんだこの馬鹿力は!」

「あら、リストバンドからカードがボロボロ出てきますわね。イカサマの現行犯ですわ」

「て、てめぇ、勘付いて――!」

「私の五月蝿(スタンド)を舐めないでいただきたいですわ」

『当て字ヒドっ』

「負けをお認めなさい。でなければ闇のゲームに呑まれるわよ」

「いだだだだっ。わ、わかんねーが、わかった! オレの負けだ!」

「約束は守っていただきますよ。下僕たちにも徹底させますように」

「わかった、わかったよ。気味ワリィ女だ。てめぇ、それでも『聖女』か?」

「フフ、私は『聖女』ではありませんわ。『悪役令嬢』。悪霊は私をそう呼びますの」




おまけ1

『ところで幽波紋(スタンド)なんてなんで知ってるの?』

「単に普段はぼーっと突っ立ってるイメージなので言っただけよ」

『ついでに訊くけど、なんで大の男を押さえ付けられたの?』

「令嬢として過度の筋肉はつけられないから、関節を極める護身術を幼少から習っていたのよ。アーモニア流護身術の達人級(マスター・クラス)よ」

『すごいねカティー。かっこいい』

「令嬢は一日してならずよ(フフン)」


おまけ2

※ゲーム名……トランプ王。ポーカーに似ているが、少しだけ違うカンジっぽい。ルールブックが更新されるたびに副名称が変わる。初版はトランプ王ベーシック、現在の最新ルール第5版はトランプ王ドナルドである。

※ゲーム終了条件……どちらかのライフが0になるか、特殊勝利条件を満たすとゲーム終了。また、デッキのカードがなくなった次のターンでも終了する。この場合、残ったライフの数で勝敗が決まる。同値であった場合は残り『手札』が多いほう。これも同数のときはジャンケンである。


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