12 結成カテリナ・パーティー 5.21
カテリナの朝は遅い。学業や貴族教育、社会活動などに追われていたころに比べ、今は怠惰と呼べるほどのんびりとしたものだった。昼間は迷宮へ行き、帰ったら迷宮と魔術の研究を行い、寝るだけである。合間に食事と湯浴みがあるが、どちらも現環境では質素にならざるを得ず、あっという間に終わってしまう。
「大きな浴槽が欲しい……」
カテリナのつぶやきに、粘土魔造生物内のメモリは腰に手を当てて叫ぶ。
「ないものはない! おまえにまだ残っておるものは何じゃ!」
「お湯に浸したタオル……?」
「そう! タオルがある゛よ!と泣きながら噛みしめるんだよ!」
「何なの、それは……」
カテリナは疲れたため息を吐き、タオルで体を拭った。背中はサイサリスに任せる。
「まぁまぁ。朝晩とお湯を差し入れてくれるだけ宿の主人には感謝しなきゃ」
「そうだけど……」
「それより、そろそろエンキに行かないとダメじゃない?」
「わかってるわ」
サイサリスが部屋の物干しロープにタオルをかける様子を見ながら、カテリナは着替えを進めた。
エンキドゥの酒場に入ったカテリナは、カウンターにいるその背中に驚いた。
「レナード様!?」
「お、来たな」
カテリナの声に『炎刃』レナード・ブレイズ伯爵令息が振り返る。骨付き肉を振ってである。
「どうして?」歩み寄るカテリナは、彼の横に立っている甲冑の男に目をとめた。
「……レナード様、コーネル様まで巻き込んだのですか?」
コーネル・ヴァッシュはブレイズ伯爵領を守る騎士の一人だ。クセのある栗色の髪に青い目の青年で、剣も魔術も一流の、次代のブレイズ騎士団長候補だった。レナードよりも四つ年上という近さもあり、ブレイズ騎士団に身を置いたときからレナードの護衛と世話役を勤めている。
「親父がムリヤリな」
レナードは笑った。
「カテリナ様、ご無沙汰しております」
コーネルは厳格な表情で一礼した。
「え、ええ。あなたも大変ね。レナード様のお守りなんて」
「それは問題ありません。仕事ですから。ですが――」
コーネルの目が厳しさを増した。
「ストップだ、コーネル。それ以上は許さん」
レナードが彼以上の威圧的な眼光と声を発した。
「……申し訳ありません、坊ちゃま」
「坊ちゃまはよせ。それと無理に付き合う必要はない。一筆書いてやるから帰れ」
「いいえ、仕事に不満はありません。仕事には」
そのやり取りでカテリナには充分理解できた。
「レナード様、まさかとは思うのですが、また迷宮へ行くつもりですか?」
「この格好でわかるだろ。学院の休学も受理された。さっさと迷宮を攻略してしまおう」
「な……!」
「オレとおまえとコーネル、それともう一人もすぐに来る。これでどうにかなるだろ」
「なるわけないでしょう!? コーネル様が怒るのも無理ありませんわ! あなたはブレイズ伯爵家の嫡男なんですのよ!? こんなところで命を懸けていい身分ではありませんの! それがわからないから皆、心配するのです!」
「それを言ったらおまえだって公爵令嬢だろうが」
「私は絶縁された身です! どこで野垂れ死のうが誰も気にかけません! あなたとは――!」
「バカ言うな。オレが気にかけるだろう。おまえに野垂れ死にされたら泣くぞ?」
「……っ!」
カテリナは真っ赤になって口をつぐんだ。
「おまえが何を言おうが、オレは勝手についていく。これはオレの意志だ。邪魔するな」
「……」
レナードの妹分は涙が出そうになった。だが、耐えた。
「カテリナ様、諦めてください。わたしもイヤなんですよ。こんなバカなことに付き合うなんて。あなたの境遇はいわば自業自得です。そんなあなたになぜ坊ちゃまがここまでするのか理解に苦しみます。脳筋もいいところです。頭を勝ち割って視てみたいくらいです。ですが、坊ちゃまは決めたのです。だからわたしも準じなければなりません。とても不本意ですが、坊ちゃまを守るためと心を殺してお手伝い致します」
「そこまでイヤならやめとけよ。あと坊ちゃま言うな」
レナードもさすがにコーネルの嫌味には気付いた。
「だからこうして心を殺しているんですよ!」
「わかった。わかったわかった。すまんが力を貸してくれ」
「はい、レナード様」
コーネルは恭しく一礼した。
カテリナには言いたいことがたくさんあった。コーネル以上に不満があった。しかし彼女は言えなかった。噛んだ唇を開けてしまえば、きっと泣き出す気がした。『悪役令嬢』は情に流されてはならないのだ。徹しなければならないのだ。
『メモリ、お願い……』
『うん、任せて!』
メモリはクレイマンから抜け、カテリナに憑いた。
「仕方ないですわね。そこまで仰るならご一緒させてあげてもよろしくてよ? オーッホッホッホッホ」
高笑いするカテリナに、レナードは大笑いし、コーネルは納得いかない表情を浮かべる。カテリナは――恥ずかしくて死にそうだった。
『馬鹿メモリ! 誰がそこまでやれと』
『いいんだよ、これくらいやったほうが後腐れないんだから。厚意は気持ちよく受けとめる。見栄を張ってるのだって、レッドはちゃんとわかってるよ。お兄ちゃんだしね』
『もういいから戻りなさい! 感動もすっかり失せたわ』
『はーい』とメモリはサイサリスに戻った。
「ですが、今日はごいっしょできません。昨夜、別チームに同行すると約束してますので」
「いや、キャンセルでかまわないぞ」
「アスタルさん!」
のそっと背後からアスタルが現れた。実は少し前からいるのだが、声を掛けづらかったのでメンバーと傍観していたのだ。見ているぶんにはとても面白かった。
「カテリナはうちのメンバーではないしな。自分のパーティーが組めるならそのほうがいい」
「ですが――」
「同じ目的を持つ者でなければ、辿りつくのは不可能だろ」
「……!」
「利害が一致するなら共闘もする。だがいつか道は分かれる。違うか?」
「……そうね。そうなるわ。ありがとう。困ったらまた頼るわ」
「おう。人数がいれば楽は楽だからな。実入りは減るが」
アスタルたちは店の反対側のテーブルに移った。彼らも予定の調整が必要だった。カテリナの治癒力と、クレイマンという壁は戦力として大きかった。
「あいつら、そこそこやりそうだな。だが、迷宮踏破は難しいか」
となりに座ったカテリナに、レナードが訊いた。
「そうですね。意識の問題もありますが、彼らくらいでも7階を限界と感じているようです」
「そうか。思った以上に厳しそうだな。だが、そうでなければとっくに踏破されてるか」
「私は今6階に入ったばかりですが、まだ余力はあります。ですが7階以降がどうなっているのか……」
「7階までは心配いらないだろ。あのチームと動けばいい。8階からが本番だな」
「7階に降りられたら相談してみますわ。……ん? それ以前に、レナード様は地下5階へも行けないでしょう?」
レナードもコーネルも『青水晶の欠片』を持っていない。となれば魔術転送機を使えず、地下5階には降りられない。
「ああ、これがいるんだろ?」
レナードがポケットから『青水晶の欠片』を出し、コーネルも不本意そうにカテリナに見せた。
「いつの間に!」
「きのう、騎士団数人と来てな。意外とあっさり取れた」
「はぁ……」
カテリナは頭を押さえて息を吐いた。
「それもこれもカテリナ様のために――」
「コーネル、うるさい。というわけでまずは5階へ行こう。妙なコインももらったんだが、話によればそこで使うんだろ?」
「ええ、ええ、そうです!」
カテリナはイラっとした。
「もうすぐ最後の一人が来る。そうしたら行くとしよう」
「……その方も騎士団員ですか?」
「いや、そいつは――ああ、ちょうど来た。こっちだ!」
レナードが振り返って手を振る。若い男が無表情で近づいてきた。
「あの方は」カテリナはその青年を覚えていた。
「『黒の左手』、でしたわね」
「ああ。そこの男に雇われてしばらく罠師として働く」
「それは心強いですわ。よろしくお願い致します」
カテリナが頭を下げると、『黒の左手』も軽く会釈した。言葉はない。
「なんだ、顔見知りか?」
「先日、『青水晶の欠片』を取るのにお世話になりましたの。命の恩人ですわ」
「そうか。さすがクロムだな!」
「あ!」
『黒の左手』の背を叩くレナード。痛みと彼の発言に青年罠師は顔をしかめる。
「クロム……? 彼の名前ですか?」
「おっと、これは内緒だったな。すまん、口が滑った」
「滑ったじゃないだろ、この脳筋令息……!」
クロムの表情が不機嫌と怒りに歪んでいた。そんな顔をするとは思っていなかったカテリナは、名前よりも驚いた。
「良い名ではありませんか。『黒の左手』という通称も悪くないと友人には好評ですが」
「……っ」
クロムは拳と顎に力を込めて震えていた。
「まぁ、バレてしまった以上は仕方ないだろ。だいたい、クロムってのも偽名だろ。でん――」
「おまえはもう黙れ!」
クロムがレナードの口を塞いだ。
『でん?』メモリは首をかしげたが、カテリナはわかってしまった。しかし、そうだとすると時期がおかしい。ならばクロムの件と自分とは無関係であろうと考えられる。単に好都合だったのかもしれない。
『思惑はわからないけれど、この際は利用させてもらうわ』
『なになに、どーゆーこと?』
『クロムは殿下の回し者よ。ただ、私とは無関係ね。別の仕事のついでのようよ』
『よくわかるね』
『これだけレナード様がやらかしてるのよ? 気が付くでしょう?』
『ん~ん、ぜんぜん。カティーは頭いいなー』
『……褒められてる気がしないのはどうしてかしらね』
『心がすさんでるからだね!』
メモリはニコやかに言った。
「で、これで揃ったんだろ? 行くならさっさとしろ」
クロムは不機嫌だった。クールなイメージはもう捨てたようだ。
「ああ。これで全員だな。ただ、まだそいつを紹介されていない」
レナードがサイサリスを指した。先ほどからカテリナの後ろでピクリとも動かないのが不気味だった。
「これ? 魔術で造ったゴーレムで、名前はサイサリスよ」
「ゴーレムか。どおりでまったく動かないわけだ」
レナードがサイサリスの白面を突く。ムカっときたメモリは左腕でその手を払った。
「お、反抗したぞ?」
「当たり前です。攻撃されたと感じたら対処するようになっているのですから」
「どのくらい戦えるかみてみたいな」
「やめてください。壊されたらまた造るのにどれだけ魔力を使うか。迷宮へ行けなくなります」
「残念だな」
レナードはつまらなそうにサイサリスを突く。
「うがーっ」
「うおっ、叫んだ!」
「やめなさい!」
出発するまででカテリナは疲れていた。
迷宮に赴く前に、ボッター商会で買い物をしていく。レナードの道具を揃えるためだ。コーネルが一通り持ってはいたが、いざというときのために必要最小限の道具は「個人で持っていけ!」とクロムに怒鳴られたからだ。
「あの、私も、クロムと呼んでいいかしら?」
レナードの買い物が済むまで待っているとき、手持ちぶさたからカテリナが訊いた。慎重になったのは、本人が嫌そうなのがよくわかるからだ。だが、『黒の左手』と呼ぶほうの身にもなって欲しかった。
クロムは一瞥して、また正面を向いた。
「好きにしろ。オレもカテリナと呼び捨てにするからな。公爵令嬢だとは思わない」
「ええ、それでいいわ。実際に『元』だもの。それで、ついでといっては何だけど、もうバレてるので身元を明かしてはどうかしら?」
「くっ……!」
クロムは意気揚々と買い物をするレナードを睨みつけて呪詛を吐いた。
「口外はしないわ。本当の雇い主が困るでしょ?」
「……全部ぶち壊しだ。だからオレはあいつとは関わりたくないと言ったんだっ」
「レナード様をよく知ってるのね」
「一方的にだがな。よく陰から見てたよ。やることなすこと大ざっぱなんだ、あいつは!」
「そうね。でもそれがいいところでもあるのよ?」
「いいわけあるか! 貴族というのはもっと気品があって、視野が広く、度量があって、知性に溢れ、判断力に優れ、実行力もあり、外見からして神々しい者を言うのだ。そう、殿下のよ――あ!」
「語ってるわよ」
『ぷふーっ』サイサリスの肩が震えた。
「どうせバレてるんだろ!? 殿下の配下だと」
「開き直らないでよ。あなたも意外とレナード様寄りね」
クロムは心底イヤそうな顔をした。
「もういいだろ。形としてレナードの依頼でついていくだけだ。実際はおまえの護衛と観察だ」
「さすがの殿下も、元婚約者・元公爵令嬢が迷宮で死んでは外聞が悪いようね」
「それはそうだろう。世間はおまえの行いを、王家からの一方的婚約破棄ゆえの狂気と観ているからな」
「申し訳ないわね。破棄などしなくとも同じことをしたのに」
「……殿下に報告するぞ」
「好きになさい。どうせあの方はとっくに気付いているでしょうから。なにせ、気品があって視野が広く度量もあり知性に溢れた方ですから」
薄く笑うカテリナに、クロムは赤くなった。
『どんだけ王子が好きなの、この人』
『いつか聞いたことがあるわ。城に盗みに入った盗賊を丸めこんで諜報員に使っていると。おそらく彼のことよ』
『丸めこまれてるんだ……』
ゲームにはない王子の黒い一面だった。
クロムは無性に悔しかったが、「こうなれば」と開き直って質問を並べた。
「こちらもこの際だから訊こう。迷宮に何があるんだ? 目的はなんだ? 『大聖女』を殺害しようとした理由はなんだ?」
「いきなり三つは欲張りすぎよ。だから最初の一つだけ答えるわ。でもこれも、殿下なら薄々気付いてるわよ。……迷宮の奥には、30年前の真実があるの」
「それを暴くのが目的か」
「言ったはずよ、最初の一つだけ答えると。……さて、レナード様が戻ってきたわ。迷宮へ行きましょう。頼りにしてるわ、罠師『黒の左手』さん」
「仕事はこなす」
ふてくされるようにクロムは答えた。
『偉い!』
メモリが内心で褒めたことを、彼は知らない。
迷宮地上階で荷物の整理と確認を行い、今日の探索目的を定める。おおよそ五段階の目標を置き、最低限が達成された時点で余力を見て次の段階に進むかを決めるのだ。そうして段階ごとにクリアして、最大限まで達成できたら余力があっても終了とする。それが迷宮攻略の戦略である。
今回の目的は、最低限、地下6階へ辿りつく。最大で地下7階に降りるまで、とした。地下6階の色迷路を簡単に抜けられるとは思っていないので、第四段階の『戦闘を15回こなす』あたりで終わるだろうとレナード以外は予測していた。
「まずはレナード様とコーネル様を地下6階へ行けるようにしないと。クロムは行けるのかしら?」
「まだ5階にも降りていない」
「わかったわ。それではまず、地下5階に降ります」
全員が『青水晶の欠片』を持ち、魔術転送機に入った。カテリナが『5』のボタンに触れ、装置を作動させる。
扉を開けると部屋になっていた。2×3ブロックの部屋だった。
「買い物をしていた分だけ出遅れたな。足跡がけっこうある」
クロムが部屋の中を調べる。この人数が通過した後なので罠のある可能性は低い。それでも調べるのが罠師の仕事である。
「隊列はクロム、コーネル様、私、レナード様、サイサリスでよろしいかしら?」
「待て、オレが後方だと?」
「当然です。前衛で突っ込まれては困ります」
コーネルが厳しい目で主を見た。
「戦えないじゃないか!」
「戦わせたくないんですよ!」
睨み合うブレイズ組に、クロムは呆れ、カテリナも頭を抱える。
『せめてもう一人いればね』
『そうね。それならレナード様も前に置いてもいいのだけれど。後方が薄いのよ』
メモリの感想にカテリナも同意だった。できれば戦士と術師を各一名ずつ欲しいところだった。
『いっそドッグでも連れてくる?』
『そもそもドッグバリーはピースを持ってないわよ。また取りに行くのは面倒だわ』
『使えない犬だね』
そのころドッグバリーは牢屋でくしゃみを二回した。堆積した埃のせいだろうと、手下に掃除をさせた。
「後方から不意打ちを喰らったら、カテリナ様が真っ先に死にますよ」
「ぬ!? ぐぅぅ……。わかった……」
コーネルの言葉をレナードは無視できなかった。
「決まったなら行くぞ。くだらんことで時間に無駄にするな」
クロムはもう、貴族一行に敬意を払うつもりがないようだった。扉を開け、西の井戸を目指す。
が、全員が1ブロック目に踏み出すより早く、人の怒声と剣戟が聞こえてきた。
「前のパーティーが戦闘中だな。どうする、リーダー?」
クロムがカテリナを見た。
「まずは全員で急ぎましょう。手助けが必要なら手伝いますが、余裕がありそうなら問いかけます。横槍を入れたと揉めたくはありませんので」
「そうだな」
レナードは納得し、先に立って走りはじめた。
「脳筋が! トラップがないとは断言できないんだぞ!」
クロムが舌打ちして追う。次いでコーネルが、カテリナはサイサリスと並んで走る。
「助太刀するぞ!」
レナードは最初の角を曲がると、剣を構えて躍り出た。彼の目の前には若い戦士が一人でゴブリン数体を相手にしていた。半包囲されていて、不利な状態であるのは一目瞭然であった。
「助かる!」
戦士はレナードを一瞥し、すぐに正面に向き直った。盾に衝撃が走ったが、力任せに押し返した。
「ゴブリン6だ! 奥にもなんかいるぞ!」
レナードが叫びつつ近くのゴブリンに斬りかかる。突然の攻撃であり、しかも鋭い一撃を緑色の小鬼は避けきれなかった。左肩が裂けるほどの一刀は、たやすく魔物を小石に変えてしまう。
「すげぇ」
レナードの技に、若い戦士は素直に感嘆した。
「坊ちゃま、お下がりください! わたしが戦えません!」
コーネルは参戦したかったが、通路幅3メートルは三人が並ぶには狭すぎた。手の出しようがない。
「わははは。そこで見てろ!」
レナードは愉しそうだった。
「サイサリス!」
カテリナは後背の警戒をクロムに任せ、サイサリスに指示した。
『まっかせてー!』
メモリは内心で応え、一足飛びで戦士とレナードの間を突っ切り、正面のゴブリンを踏み越え、後方にいたゴブリン・シャーマンの首に剣を突き刺した。そしてさらに高速で四回急所を突き、絶命させた。核石に変わっていくゴブリン・シャーマンを確認して、180度回頭する。
その後、一分もせずにゴブリンは全滅した。
「助かったよ。さすがに危なかった」
一息ついて戦士は苦笑いした。黒髪で茶色の瞳が珍しかった。まだ少年と言っていい顔立ちだった。
カテリナは少しだけ考え、まず間違いないと確信した。
「あなた、アキラね。ピース取りに参加してたわよね」
「ああ、うん。あれは助かった。カテリナ……だっけ。ありがとな」
「いえ、参加してもらえて助かったのは私のほうよ。それで、他の仲間はどうしたの?」
「いないよ、そんなの」
アキラは不機嫌に答えた。
「いない?」
カテリナの眉が跳ねあがった。先日、このフロアで探索者が一人死んでいた。その光景を思い出す。
「誰も仲間になってくれないんだ。だから仕方なく一人でやってる」
「そんなわけないでしょう? 階段前では募集もあるのに」
「あれじゃダメなんだ」
「何が?」
「オレの目的はこの迷宮をクリアすることだ。あいつらはただ小銭を稼ぎたいだけじゃないか」
「……!」
カテリナたちは呆気にとられた。まさかこんな少年が迷宮制覇を口にするとは思いもしなかったのだ。いや、子供だからこそ口にしたのかもしれない。
「なぁ、ボウズ、その夢を語るにはまだ五年は早いと思うぞ。もっと実力をつけて、仲間を集めてからにしろ」
レナードがアキラの頭を撫でようとするが、その手は払われた。
「ボウズとか言うな。これでも17歳だ」
「17? 同い年? やけに若く見えるぞ? エルフか?」
「人間だ! どいつこいつもガキ扱いしやがって! クソ、なんて世界だ! チートもハーレムもないし、ぜんぜんうまくいかない!」
彼の発言でメモリは理解した。
『カティー、この人、わたしと同じ世界から来たみたい』
『そのようね』
カテリナはこの出会いを偶然とは思わなかった。
おまけ
カテリナへの友好度
スヴェン …… ★☆☆☆☆
レナード …… ★★★★★
アスタル …… ★★★☆☆
ドッグバリー… ★★☆☆☆
コーネル …… ☆☆☆☆☆
クロム …… ☆☆☆☆☆
メモリ …… ★★★★★
カテリナへの恋愛度
スヴェン …… ☆☆☆☆☆
レナード …… ☆☆☆☆☆
アスタル …… ☆☆☆☆☆
ドッグバリー… ☆☆☆☆☆
コーネル …… ☆☆☆☆☆
クロム …… ☆☆☆☆☆
メモリ …… ★★★★★




