第54話
一方、蜂蜜酒はハチミツと果実をたっぷり漬け込んでいた。
大きな木樽の発酵槽の中で、泡を立てながら熟成中だった。
時折蓋を開けると、甘い蜂蜜の香りと森の果実の酸味が混じり合った芳醇な匂いが広がった。
近くを通るエルフたちが「早く飲みたい……!」と目を輝かせた。
果実酒は新鮮なベリーを丁寧に潰し、瓶に詰めて密封した。
透明なガラス瓶の中で、赤紫色の液体が色を深めていった。
リースが「私のブレスで少し火を通したらもっと美味しくなるんじゃない?」と提案した瞬間、リリィに「爆発するわよ!」と即座に止められた。
ビールの方は小麦を麦芽化させて仕込みを終えていた。
大きな発酵タンクの中で酵母が元気に働き始めていた。
ガンドルフが毎日タンクを叩いては「あと何日じゃ……」と呟いた。
「焦らず待て、味は時間で決まるんじゃ!」と自分に言い聞かせる姿が、村の新しい名物になりつつあった。
冬の宴まで、どれもじっくりと寝かせることになった。
そして、温泉の完成日。
巨大な露天風呂は、縁を丁寧に積み上げた石で囲まれていた。
貯水池から引いた熱い湯がたっぷりと満ちていた。
夜になり、エルフたちが一斉に灯りの魔法を唱えた。
柔らかな青白い光の玉が水面に浮かび、湯気が幻想的に立ち上った。
湯気の向こうで、星空がぼんやりと映り込んだ。
魔界の紫灰色の空とはまるで別世界のような静けさが広がった。
マサは服をサッと脱ぎ捨て、足を湯に浸けた。
じんわり……と温かさが足の先から全身に広がった。
疲れが溶けていくような感覚に包まれた。
「これだぁ……」
深いため息が漏れ、肩まで沈み込んで目を閉じた。
湯気に顔を包まれながら、ようやく肩の力が抜けた。
「みんなも入ろうぜ!」
マサの声に反応して、リリィが「待ってました!」と元気よく飛び込んだ。
バシャーン!
水しぶきが大きく上がり、湯面が波立った。
リースが「私も!」と続き、ダイブした。
ガルが「どぉーん!」と豪快に飛び込み、水柱が上がるほどの大波がみんなを襲った。
エルフたちも次々と服を脱いだ。
「勇者様、失礼します!」
「わ、私も……!」
と少し照れながらも、丁寧に湯船へ入っていった。
シルヴィが「熱い……でも気持ちいい!」と頰を赤らめた。
アルが「こんな贅沢な湯、初めてです……」と目を細めた。
マサはアイテムボックスから蒸留酒の瓶を取り出した。
熱燗用の小さな徳利に注いで回した。
「熱燗だぞ! みんな飲め!」
ガルが杯を高く掲げた。
「うめぇ! これ、毎日飲みたいぜ!」
と豪快に飲み干した。
リースが一口飲んで、素直に頷いた。
「辛いけど……悪くないわね」
リリィがマサの肩に寄りかかった。
「マサ、今日は飲み過ぎないでよね」
と甘えるように囁いた。




