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勇者転生 ~裏切られたのでスローライフはじめました~  作者: 川合 佑樹


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第5話

 頭上を覆う木々の葉が風に揺れ、斑模様の木漏れ日がマサの顔に落ちていた。

 マサは目を閉じ、掌を広げた。

「ロケートマップ」

 シュワァ……と淡い青い光が灯った。

 指先から魔法陣が広がり、空中に展開した。

 半透明の地図がふわりと浮かび上がった。

 森の輪郭、王都の位置、そして現在地を示す赤い点がピカッと光った。

「王都から……北西に十数キロか」

 彼は地図を一瞥して、すぐに消した。


「ここで時間を無駄にしていたら、追手が来るか」

 マサは身体に魔力を巡らせた。

「プロテクト!」

 シュッ……と薄い風の膜が体を包み込んだ。

 耳元で木々がサワサワ揺れる音が消え、足音が完全に沈黙した。

「ストレングス!」

 ドクンッ!

 筋肉が熱く膨張し、骨がギシッと軋むような感覚が全身を駆け巡った。

「よし……行くか」

 ドンッ!

 地面を蹴り、マサは弾丸のように飛び出した。

 風が耳元で唸り、木々が後ろに流れていった。


(もし……リリィ、ガンドルフ、セリーヌも裏切っていたとしたら……)

 胸の奥に冷たい棘が刺さった。

 マサは唇をギュッと噛み、眉を寄せた。


 リリィの情報網は、魔王軍の暗殺者さえ逃がさないほど精密だった。

 ガンドルフの膂力は、城門を一撃で砕くほどのものだった。

 セリーヌの転移魔法は、仲間を一瞬で王都に戻すことも可能だった。

「唯一の救いは、転移魔法が都市の転移門にしか繋がらないことか」

 彼は独り言を呟きながら、速度を落とさず走り続けた。


「小規模な村を転々と補給路にすれば、まだ道はある」

 言い聞かせるように、マサは息を整えた。

「二度目の旅……今度は、俺一人か」


 マサはわざと大回りになるルートを選んだ。

 王都を遠く避け、人の気配が濃い街道を外して、かつて魔王軍が使っていたと思われる古い補給路を辿った。

 深い森を抜け、岩肌の露出した山を越え、冷たい水しぶきを上げながら川を渡る。

 道は荒れ、足元が崩れやすい場所も多かったが、マサの足取りは一度も揺らがなかった。


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