第4話
目を開けると、そこは深い森の中だった。
柔らかな木漏れ日が顔に落ち、瞼の裏に優しい光が広がった。
体はまだ重く痺れ、舌の奥に金属のような苦味が残っていた。
指一本まともに動かせず、息をするのも億劫なほど力が入らない。
マサは這うように上半身を起こし、震える手でステータス画面を呼び出した。
体力:12/1000
状態異常はほぼ消えていたが、体は限界に近かった。
「……生きてる」
小さく呟き、震える唇で短い祈りを紡ぐ。
「ライトヒール……」
弱々しい回復魔法を自分にかけた。
淡い光が体を包み、傷が少しずつ、ゆっくりと癒えていく。
痛みが引くにつれ、意識がはっきりしてきた。
「俺……殺されたんだな」
マサは胸元に手をやり、かつてのペンダントだったものを握りしめた。
完全に砕け散り、鎖だけが冷たく残っていた。
「魔王を倒す時の切り札だったのに……。人間相手に使うことになるとはな」
彼は鎖を握りしめたまま、ゆっくりと立ち上がった。
膝がわずかに震え、木の幹に手をついて体を支える。
そして、腕を振り上げ――
力任せに鎖を引きちぎり、森の奥深くへ投げ捨てた。
ガサッ、という小さな音が遠くで響いた。
「ははっ……なんて人生だ」
マサは木々の間を抜け、ふと足を止めた。
空を見上げ、拳をギュッと握りしめた。
胸の奥から込み上げる何か――悔しさか、虚しさか、すべてが混じり合って、喉が熱くなった。
「せめて……スケベなことしてから死にたかったあああああああああ!」
森に響き渡る叫びが、鳥たちを一斉に飛び立たせ、木の葉をざわめかせた。
叫び終わると、静けさが戻り、マサは肩で息をしながら、苦笑いを浮かべた。




