第45話
マサはログハウスに戻ると、新しい道具を並べて考え込んだ。
「さて、いよいよパン作りか」
しかし、パン作りなどしたこともなかった。
「……小麦を挽いて粉にするのは石臼でOK。次は生地をこねて、発酵させて、焼く……か。でも、酵母はどうしよう。温度管理とか、火加減とか……んー」
頭を抱えながら、試しに小麦を石臼でゴリゴリ挽き始めた。
「これで……合ってるのか?」
そこへアルが顔を出した。
「パンなら、私たちで作れますよ」
他のエルフたちも次々と手を挙げた。
「私も作ったことあります」
「私もです。森で暮らしてると、時間だけはあるから……」
「まあ、30年くらいは皆通るよね」
マサは深く頷いた。
「非常に納得がいく……」
エルフたちが「私たちが一番上手いです!」と声を上げた。
「私たちに任せてください!」
我こそはと手を挙げ、あっという間にパン作り大会の様相になった。
結局、マサも「俺もやりたい」と参加することになった。
まずは酵母作りからだった。
マサがアイテムボックスを開き、瓶と小さな包みを取り出した。
みんなが周りに集まって、興味津々で覗き込んでいた。
リリィとアルも当然のように近くにいた。
「これで酵母を作れるか?」
マサが瓶を掲げて尋ねると、エレが瓶を覗き込み、目をカッと見開いた。
「そっ……それは!? 幻の黄金蜂蜜じゃないですか!?」
他のエルフたちが一斉に息を呑んだ。
「ええっ!? 本当だ!」
「蜂蜜から魔素を感じます……!」
「包みの中のこの干しブドウは『永遠の果実』では!?」
「香りから既に違うっ」
互いに顔を見合わせてざわついた。
瓶と包みを回し見ながら、興奮で手が震える者までいた。
リリィが感嘆の声を上げた。
「……これ、どこで手に入れたの?」
マサが照れくさそうに頷いた。
「毎日村や町を救ってたら、領主がくれたんだったかな?」
アルが興奮気味に言った。
「この材料なら、香りが段違いになります! 信じられない……!」
マサはみんなの反応を見て、笑顔になった。
「そうだな。楽しみだ!」
数日かけて、温かな場所に置いた発酵液は、ようやく小さな泡を立て始めていた。
みんなで毎日様子を見に来ては、「まだかな?」「もう少しだよ」と声をかけ合っていた。
リリィが瓶に鼻を近づけ、息を吸い込んだ。
「いい匂いね。甘酸っぱくて、生きてるみたい……」
彼女の声に、みんなが一斉に顔を寄せた。
「これで大丈夫そう」
マサがそっと瓶を傾け、泡の様子を確かめた。
「匂いだけで分かるのか?」
「エルフも香りに敏感なのよ。ガルには負けるけどね」
ガルが遠くから「褒めてもなにも出ねーぞ!」と叫んだ。
リリィが「良いのは鼻だけじゃなかったみたいね!」と返した。
みんながどっと笑った。




