第44話
鍛冶場が出来てから2週間が経ち、村は驚くほどの成長を遂げていた。
初めの頃の荒野とはまるで別世界だった。
粗末なログハウスがポツンと立っていた場所に、今は木造の立派な家が建ち並んでいた。
冬を越せそうな広大な畑が広がり、遠くまで畑の土の匂いが漂っていた。
王女の血筋を持つリリィとアルの存在が、エルフたちに妙なプライドを与えていた。
「王女様のためよ! 中途半端なクオリティなんて許せないっ!」
「勇者様の聖域なんだから、粗末にはできない!」
そんな声が飛び交う中、翌朝にはガルが土魔法を放ち、基礎をガチガチに固めていた。
エルフたちが夜通しハンマーを振り回し、家を完成させていた。
マサは腕を組んで、感心したように呟いた。
「思ったより体育会系なんだなぁ、エルフって」
横でリリィが髪をサラッと払った。
「文明から離れて森で暮らしてるのよ? これくらいできないと死んでるわ」
「イメージと全然違ったわ」
「生き残るために何でもするのよ」
村の食文化も、少しずつ改善されつつあった。
マサがアイテムボックスを整理していると、懐かしい袋が出てきた。
魔王討伐の途中で助けた村から貰った、小麦の種だった。
マサは袋を眺めながらため息をついた。
「製粉もできないしなぁ……。粉にする石臼とかないと無理だろ」
そこへリースが飛んできた。
「何を悩んでるのよ、そんなのすぐ作れるわよ!」
「え、マジで?」
「当たり前でしょ」
翌朝には、立派な石臼と木製のこね台、発酵用の桶まで揃っていた。
リースが一晩中ハンマーを振るい、仕上げた。
「どう? 完璧でしょ!」
マサはそっと手を伸ばし、リースの頭を優しく撫でた。
「ありがとうな、リース。ほんとに助かるよ」
指が触れた瞬間、リースの体がびくっ! と震え、耳まで真っ赤に染まった。
「な、何よ急に……!」
「……一晩中ハンマー振ってたんだろ? こんなに頑張ってくれて、ほんとにすごいよ」
彼女は慌てて目を逸らし、でもどこか嬉しそうに唇を尖らせた。
「リースは頑張り屋さんなんだなぁって」
リースは最初こそ抵抗するように体を硬くしていたが、すぐに肩の力が抜けた。
目を伏せてしまった。
「……ふ、ふん……。別に、褒められたって嬉しくないんだから……」
声は小さく、でもどこか甘えるような響きがあった。
マサはもう一度優しく撫でた。
「わかったわかった。次も頼むな」
「……まあ、いいわよ。次はもっとすごいの作ってやるんだから!」




