第30話
エルフたちの魔法と手先の器用さが加わったことで、作業は驚くほど速く進んだ。
木の枝を細やかに編み、土を固め、魔法で隙間を埋めていく。
マサが剣で大枠を豪快に切り出し、ガルが土魔法で基礎をガッチリ固め、サチが全体のバランスを監視し、アルが細かな調整を指揮した。
アルが梁の位置を指さしながら、声を上げた。
「ここ、梁をもう一本追加した方が安定します!」
マサが即座に応じて、剣を振り上げた。
「了解! サチ、支え持っててくれ!」
「はい!」
サチが素早く梁を支え、バランスを確認する。
マサはアルの方を振り返り、ニヤリと笑った。
「アル、そこの縄を引いて!」
「はい、マサ!」
アルが縄をギュッと引き、器用に結び目を調整した。
ガルが巨体を揺らして大笑いした。
「みんな息ぴったりだな!」
三人は顔を見合わせてくすくす笑い、エルフたちも微笑みながら作業を続けた。
ガルが土を盛り上げると、エルフの一人が慌てて言った。
「ガルガル様、そこの土は柔らかすぎます! もう少し固めてください」
「へいへい、任せろ!」
作業中、アルがマサの横に並んで歩きながら小さな声で言った。
「マサ……本当に、ありがとう」
「礼なら完成してからでいいぜ」
すると木々の間からアイン・ツヴァイ・ドライ・フィーが顔を覗かせた。
狼たちはエルフたちの匂いに興味津々で、アルたちの周りをクンクン嗅ぎながらついてきた。
エルフたちが「可愛い……!」と手を伸ばすと、狼たちは尻尾を振って近づき、アルの足元にすり寄った。
「作業中だから、あっち行こうなー」
マサが指示すると、狼たちはマサの後ろに戻った。
夕暮れ時、巨大なログハウスが完成した。
元の家より三倍は広く、20人以上が寝られる広さだった。
中にはテーブルと椅子が並び、暖炉用の石がゴロゴロと積まれていた。
マサは汗を拭った。
「よし、完成! みんな、今日はここで寝ようぜ!」
アルが目を輝かせた。
「本当に……ここに住んでいいんですか?」
ガルが豪快に肩を叩いた。
「また家族が増えたな!」
サチが頷いた。
「ええ。賑やかになりますね」
エルフたちが一斉に頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「これからよろしくお願いします!」
マサは照れくさそうに頭を掻いた。
「明日からは畑広げるぞ! 狩りも手伝えよ」
アルが胸を張った。
「任せてください! 森の恵みなら、私たちにお任せを!」
アルがふと周りを見回し、呟いた。
「……本当に、不思議ですね」
マサが振り返った。
「ん?」
アルは穏やかに、でも少し感慨深げに続けた。
「魔族とエルフが、同じ屋根の下で笑い合っている……。魔族は『敵』でしかなかったのに。ここでは、みんなが家族のように……。マサが魔王を倒したからこそ、こんな世界が少しずつ生まれているんですね」
「……俺はただ、生き延びて、みんなで暮らしたかっただけだよ」
「それでも……ありがとうございます」
その夜、皆で新しい家の中に横になり、眠りについた。
外では魔界の風が低く唸り、紫の空に星が瞬いていた。
ログハウスの中は、初めての温かな息づかいで満ちていた。
マサは天井を見上げ、そっと呟いた。
「……俺のやってきたことは、意味があったんだな」




