第27話
貯水池の水面が夕陽に赤く染まる頃、サチが立ち上がった。
「マサ、みんなで水浴びしませんか?」
ガルも立ち上がった。
「おお! いいね!」
四人は貯水池へ向かった。
貯水池のほとりに着くと、サチとガルは迷わず服を脱いだ。
水着に着替えて水面に飛び込んだ。
ザバーン!
水しぶきが大きく舞った。
マサは上着を脱ぎ、水着姿で助走してダイブした。
「おーい、待てよー!」
一方、リアは少し離れた場所で見つめていた。
「……ふん」
小さく指を鳴らした。
パチッ。
黒子たちが一斉に融合し、黒い影がリアを包んだ。
もう一度パチッ。
影が霧散すると――
漆黒と深紅のビキニ姿のリアが現れた。
髪をトップでまとめ、堂々とした色気が漂っていた。
マサたちが一斉に声を上げた。
「「「おー!」」」
リアは堂々と貯水池に近づいた。
足を水に浸けた瞬間――
サチがリアの手を取った。
「リア様、一緒に!」
「なっ!?」
リアが小さく声を上げた。
抵抗する間もなく、水の中に引き込まれた。
水しぶきが大きく上がり、二人は水をかけ合った。
マサとガルも加わり、四人でじゃれ合うように泳いだ。
リアは最初こそ「こ、こんな馬鹿げた……!」と抵抗していた。
次第に笑顔がこぼれ、普段見せない無邪気な表情を浮かべた。
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
夕陽が地平線に沈みかける頃だった。
リアが水から上がって黒子に体を拭かれながら、言った。
「……それでは、帰るか」
マサが水面から顔を上げた。
「泊まっていかないのか?」
リアの頰が一瞬で真っ赤になった。
「な、なんだ!? 私まで狙っているのか!?」
マサが慌てて手を振った。
「あー、そういう事じゃなくて……」
視線をサチの方へ向けた。
サチは優しく首を振った。
その表情は、どこか穏やかで安心したようなものだった。
マサは小さく頷いた。
そしてアイテムボックスを開き、収穫したばかりの野菜と下味がついた肉を詰めた木の籠を取り出した。
それをリアに差し出した。
「今日はありがとうな。サチたちも、リアのおかげで元気充填できたみたいだ。これは俺達がここでやっていける証拠だ」
リアは籠を受け取り、中身を見つめた。
そしてサチの方を振り返った。
サチが優しく頷くと、リアは小さく息を吐いた。
「……ふんっ! 勇者が野垂れ死ぬなんて許さんからな!」
リアは言い放ち、黒子に籠を預けた。
そして影の中に溶け込むように消えていった。
マサは微笑み、
「また来いよ、リア」
と呟いた。
――そして。
少し離れた森の木陰から、一団の影がその様子を覗いていた。
鋭い目が、夕闇の中で光った。
息を殺し、誰にも気づかれぬよう。
誰なのか、何を目的としているのか――
ゆっくりと、後退していく影は、紫の空に溶け込むように消えた。




