第26話
遠くで、サチとガルが冬用の厚手の服を手に取り、キャッキャと笑い合っていた。
ガルがサチに大きな毛皮のコートを羽織らせて、
「おおお! お前これ似合うぜ!」
サチがくるくる回ってポーズを取る。
「暖かくてふわふわです! ガルもこれ着てみて!」
ガルがマントをバサッと羽織った。
「どうだ! 強そうでカッコいいか!?」
サチが手を叩いて大笑い。
リアがその様子を遠くから見つめ、ぽつりと呟いた。
「……平和だなぁ」
マサがニヤリと笑って、リアの肩を軽く突いた。
「お前も混じってきていいんだぞ?」
「なっ!? 私は魔王だから……その」
マサがさらにからかうように拳を振り上げた。
「俺が今ここでお前を倒して、魔王引退しとくか?」
「するか、バカ! 由緒正しき魔王の系譜を何と心得る!」
マサはくすくす笑いながら、声を少し優しくした。
「それが足かせになって、友達とも遊べないんじゃ息苦しくないか?」
「……魔王とは……そういうものだ。生まれてからこのかたずっとそうだ。それでいいんだ、私は」
ゴンッ
マサがリアの頭を軽く叩いた。
「痛ぁ! 何をする!」
リアが驚いて頭を押さえ、目を丸くする。
マサは肩をすくめて、笑った。
「ほら、ここは俺の国だ。現地民との異文化交流だと思えよ。……行け行け、楽しんでこい」
リアは一瞬ムッとした顔をしたが、遠くから聞こえるサチとガルの「次これ着てみてー!」という楽しげな声に、視線が吸い寄せられた。
「……ちょっとだけ、だぞ」
彼女は頰を赤らめながら、小走りで二人の元へ駆けていった。
「サチ! 私も……その、手伝うぞ!」
サチが目を輝かせて迎え入れる。
「魔王様! これ着てみてください! 絶対似合いますよ!」
ガルが大きなコートをリアに羽織らせようと迫る。
「魔王様にもオススメだぜ!」
「わ、待て! 重いだろ!」
リアが慌てつつ、すぐにくすくす笑い始めた。
三人の笑い声が、服の山の間から弾けるように響いた。
マサは一人残り、雲立ち込める空を見上げた。
口元に柔らかな笑みを浮かべて、静かに呟いた。
「これで貸しは一つ返したぜ」




