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勇者転生 ~裏切られたのでスローライフはじめました~  作者: 川合 佑樹


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第21話

 ログハウス近くの森で、マサは剣を軽く振り回していた。

 ガコンッ! バキンッ!

 太い木を次々と斬り倒していた。

 木屑が舞い、乾いた音が響いた。

 作業を止めて、汗を拭おうと肌着の裾を鼻に近づけた瞬間――

「くせえ!」

 思わず大声で叫んだ。

 木陰からサチが顔を上げた。

「どうしました?」

「臭いんだ……肌着が、いや、体そのものが臭いのかもしれない」


 ガルが丸太を肩に担いだまま近づいてきた。

「そうか? それくらい普通じゃねーか?」

 マサは首を振った。

「そうだ……これまではセリーヌが清浄魔法をかけてくれてたから、気が付かなかったんだ……」

 ガルが鼻を鳴らした。

「そんなに匂いが大事か?」

「大事だ。俺は良い匂いのお前たちも嗅ぎたいし、俺自身も清潔でありたい」


 ガルの頬がわずかに赤らんだ。

「そっ、そうかよ……」

 マサは勢いよく拳を突き上げた。

「よし! 川の水を引くぞ! 三人の力があれば絶対にできる!」

 サチとガルもつられて拳を突き上げた。

「「おー!」」


 作業は驚くほど速かった。

 サチが近くの川を正確に探り出した。

「距離は約2キロ。川幅は浅瀬で3メートルほど」

「「よし!」」

 マサとガルが声を揃えて全力疾走で現場へ向かった。

 森の木々が後ろに吹き飛ぶように流れ、地面がドドドッと震えた。


「おらあああああ!」

 現場に着くなり、マサが剣を地面に突き立てた。

 ズドン! ズドン!

 剣先が土を豪快に抉り、溝を一気に掘り進めた。

「ガイア・コマンド!」

 ガルがすぐ横で手のひらを地面に叩きつけた。

 ゴゴゴ……!

 土魔法で溝の壁を固め、崩れないように補強していった。

 壁がみるみる岩のように硬くなり、水が流れても崩れない完璧な形に整った。


 半分ほど進んだところで、マサが立ち止まった。

 溝の先を見やった。

「待てよ……貯水池がねぇじゃん」

 ガルが頷いた。

「確かに。水が溜まらねぇと意味ねぇな」


 マサは剣を肩に担ぎ直した。

「戻るしかないな」

「走るか、マサ! 競争だ!」

 二人は全力で拠点まで戻った。


 サチが迎えに出てきた。

「おかえりなさい。早かったわね」

 マサは息を弾ませながら言った。

「やることが増えた! 貯水池作るぞ。ちょっと手伝ってくれ」

 サチは頷いた。

「わかった」


「うりゃああ! おらあああ!」

 マサは周囲の木を剣で素早く伐採した。

 ズンッ! バキンッ!

 木々が次々と倒れ、木屑が舞い上がった。

「よし! 運ぶのはまかせろ!」

 ガルが巨体を活かして倒れた木を軽々と運び出し、地面にドサッと置いた。

「ここに積んでおきますね」

 サチは小さい小枝を集め、丁寧に並べていった。


 作業は驚くほど速く進んだ。

 開けた場所が十分に広がったところで、マサが深く息を吐いた。

「よし……ここだ」

 彼は目を閉じ、魔力を体内で練り始めた。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 外に漏れ出るほどの膨大な力が大気を震わせた。


 ガルの口角が上がった。

「マジかよ……」

 サチが呟いた。

「あれが、マサの本気です」

 マサが目を見開き、剣を地面に叩きつけた。

「勇者奥義! ブレイブソード!」

 ズドドドンッ!

 剣先から黄金の衝撃波が爆発し、地面を豪快に抉った。

 ドゴオオオッ!

 爆風が砂煙を巻き上げ、辺り一面が土埃に覆われた。

 視界が一瞬、真っ白に染まった。


 やがて煙が晴れると、マサの前方に直径100メートルはあろうかという巨大な円形の窪みが現れていた。

 マサは息を整えた。

「ふぅ、完成だな」

 ガルが呆然と呟いた。

「あいつとはもう喧嘩しねぇ……」

 サチが小さく頷いた。

「私、運が良かったんだなって……」


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