第20話
その日の午後、三人は再び森へ出かけた。
息を潜めて茂みに隠れ、イノシシ二頭を仕留めた。
マサが一頭を肩に担ぎ、ガルがもう一頭を軽々と片手で持ち上げた。
二人は並んでログハウスに戻ってきた。
「楽しみだぜ!」
マサは残りの魔獣肉を串に刺し直し、焚き火にかざした。
ジュージュー……と脂が滴り、香ばしい匂いがさらに立ち上る。
しかし、三人分の大量の肉を見回して、マサは少し眉を寄せた。
「……焚き火じゃ小さいな」
「任せろ!」
ガルが手のひらを地面に叩きつけて土魔法を発動した。
ゴゴゴ……と土が盛り上がり、即席の石窯がみるみる形作られていった。
窯の口が赤く熱くなり、薪を放り込むと、火が勢いよく燃え上がった。
三人は窯の前に座り込んだ。
「よし! どんどん焼くぞ!」
マサが肉を串に刺して焼いていく。
「芋も焼いていいか?」
ガルがジャガイモを丸ごと放り込んだ。
「火加減はこれでいいですか?」
サチが薪を調整した。
肉の脂がジュージューと滴り落ち、香ばしい匂いが辺りに濃く広がった。
薪の煙が立ち上り、紫空に溶けていった。
焼き上がった肉とジャガイモを三人で取り分けた。
「まだかまだか!」
ガルが子供のように騒いだ。
「もう少し我慢して下さい」
サチが眼を細めて微笑んだ。
マサはニコニコしながら、両手をパチンと合わせて軽く頭を下げた。
「いただきます!」
サチが首を傾げ、眼をぱちくりさせた。
「……いただきます?」
ガルも巨体をわずかに動かし、不思議そうにマサを見た。
「なんだそれ? 呪文か?」
マサはくすっと笑い、説明した。
「あー、こうやって無事に食えることに感謝って感じのやつ?」
二人は顔を見合わせ、よく分かってない様子だったが――
サチが両手をパチン、と合わせた。
ガルもゴツい手をドンッと合わせて、真似して軽く頭を下げた。
「……いただきます」
「いただきます!」
マサは満足げに頷き、肉の串をガブリとかぶりついた。
ジュワァァッ!
熱々の肉汁が溢れ、香ばしい脂が口いっぱいに広がった。
「おおお……! うめぇ!」
サチが恐る恐るジャガイモを両手で包み込むように持ち、皮をむいた。
一口かぶりつくと、中から白い湯気がモワッと立ち上った。
ホクホクの芋が口の中でほろほろと崩れた。
「……んっ! この甘み、すごい……!」
ガルが肉をガブリとかぶりついた。
「これこれ! 焼きたては格別だぜ!」
マサはジャガイモを半分に割って、芋を頰張った。
「中がふわふわで、口の中で溶けるみたいだ!」
サチが頷きながら言った。
「……本当においしいです」
三人は焚き火を囲み、肉とジャガイモを頰張った。
夜になった。
三人はログハウスの中に並ぼうとした。
しかし、ガルの巨体がどうしても収まらなかった。
「……見張りでもしてるよ」
ガルが外へ出ようとした。
サチがそっと腕を掴んだ。
「待ってください」
サチはそっとガルの腕を引き止めた。
三人は自然と肩を寄せ合い、体を温め合った。
マサが小さく笑った。
「明日はもっと大きな家を作らないとな」
ガルが満足げに鼻を鳴らした。
「任せろ。俺が土台を固めてやる」
サチが微笑んだ。
「……三人で」
ログハウスの中では、三人の体温がじんわりと小さな家を温めていた。
マサの肩にサチの頭が寄りかかった。
ガルの大きな腕が二人を優しく包み込んだ。
三人の息づかいが重なり合った。
焚き火の残り火がパチンと小さく弾ける音だけが、初めての夜を優しく彩った。
――ここに、新しい家族が出来上がった。




