第19話
その瞬間、ログハウスから慌てた足音が聞こえた。
サチが顔を出し、状況を見て固まった。
「いったい、何をしてるんです!?」
オーガがサチを見て、鼻をスンと鳴らした。
「なんだ、俺は二人目でいいぞ」
サチの顔が一瞬で真っ赤になった。
「だから、何なんですか!?」
マサはため息をつき、テーブルの脇に歩み寄った。
立てかけてあった剣をスッと抜き、近くの丸太を素早く削り上げる。
カツカツ……と木屑が飛び散った。
数分後、巨大な椅子が完成した。
「ほら、座れ」
マサは満足げに椅子を指さした。
三人は並んだ椅子に腰を下ろし、簡易のテーブルを囲んだ。
「俺はオーガ種のガルガルだ。よろしくな!」
ガルガルはマサに向かって右手をガバッと差し出した。
その手は岩のように大きく、筋肉が盛り上がっていた。
マサは差し出された手をガシッと握り返した。
「俺は元勇者のマサ。こっちは……」
「サーチアイだろ? 知ってるよ」
サチが小さく頭を下げた。
「それで……ガルでいいか? なんで急に戦いを挑んできたんだ?」
「戦うのに理由がいるのか?」
マサは片眉を上げた。
「オーガって、そんな感じだったな……」
ガルは少し考え込むように目を細めた。
「強いて言えば、良い匂いがしたのと……。サーチアイが一緒にいたからか?」
マサが首を傾げた。
「良い匂い?」
サチが焚き火の後を指さした。
「あれでは?」
マサが焚き火の後を見て、
「イノシシか」
ガルが即座に答えた。
「そうそう! でもなんか、肉以外の良い臭いもしてな。気になって奪ってやろうかなって!」
サチが頭を抱えた。
「あなたたちは……本当に……」
ガルが身を乗り出し、目をギラギラさせて叫んだ。
「んでよ! 俺は何番目でもいいから、番になってくれよ! サーチアイがいけるってことは、魔族でもいける口だろ?」
サチは俯き、肩を縮こまらせた。
マサは頭をガシガシ掻き、苦笑した。
「正直嫌いじゃないけど……。また何でそんな唐突に……」
「唐突? 強い種を残すのは本能だぞ? サーチアイだってそうなんだろ?」
サチが小さく頷いた。
マサは深く息を吐いた。
「一旦落ち着け。俺たちはここを開拓中なんだ。急に大所帯にはできないからな」
「わかった。俺も手伝ってやるよ!」
ガルが立ち上がり、手のひらを地面に向けた。
「ガイア・コマンド!」
淡い土色の光が広がった。
マサが適当に抉った地面がみるみる整えられていく。
土が盛り上がり、綺麗な畝が次々と形成された。
マサが目を輝かせた。
「畑だ!?」
ガルが鼻を擦った。
「俺は土魔法しか使えないからな。役に立てて良かったよ」
マサはアイテムボックスから小さな麻袋を取り出した。
中から茶色い種のようなものを慎重に取り出した。
サチが不思議そうに首を傾げた。
「……それは?」
マサは少し照れくさそうにした。
「昔助けた村で貰った種だ!」
サチは麻袋を見つめた。
「……勇者っぽい」
「これを育ててみんなで食おうぜ!」
マサは一つ一つ丁寧に畝に種を埋め込んでいった。
「ガル! 発芽できるか?」
「おう!」
ガルが手のひらを地面に向け、短く呪文を唱えた。
「グロウアップ!」
ズズン……!
土が震え、淡い土色の光が広がった。
一瞬にして、緑の芽がピョコピョコと顔を出し、ぐんぐん伸びていった。
白い花が咲き、芋の実が土の上にポンッと現れた。
マサが叫んだ。
「すげぇ! 一瞬で育った!」
ガルが鼻を擦った。
「これくらい朝飯前だ!」




