第15話
ログハウスの前で、サチは眼を大きく見開いて固まっていた。
マサが近づくと、彼女は小さく息を吐き、呆然とした声で呟いた。
「……速すぎます」
マサは肩から魔獣を下ろした。
「慣れてるからな。さて、解体するか」
マサは剣を手に、魔獣の巨体を地面に横たえ、丁寧に作業を始めた。
シュッ、シュッ……
刃先を滑らせて皮を剥ぎ、筋膜を切り離しながら、肉の繊維に沿って無駄なくスライスしていく。
マサは鼻歌を歌いながら、楽しげに手を動かした。
「恋の始まりは~」
骨を外すときは剣を軽く回し、関節を外すカキッという小さな音が響く。
内臓を丁寧に取り除き、使える肉を塊ごとに分けていく。
サチがじっと作業を見つめていた。
彼女の眼に、好奇心と少しの驚きが混じっている。
マサはふと視線に気づき、肉を切りながら笑って尋ねた。
「そういえば、魔族って魔獣食っていいのか?」
「問題ありません。普通に狩って食べていますよ」
「へー、意外だな」
マサは剣を止めず、手を動かしながら続けた。
サチは少し間を置いて、淡々と説明した。
「そもそも、魔族を人間と区別しているのは人間側だけです。魔石の有無以外は、中身はほとんど一緒ですから」
マサの手がピタッと止まった。
剣から血が滴り落ち、土に染みていく。
「えっ!? そうなの!?」
彼は目を丸くしてサチを見上げ、剣を軽く振って血を払った。
サチは小さく頷き、視線を少し逸らした。
「……見た目がちょっと違うだけです」
マサは感心したように大きく頷き、すぐに作業を再開した。
「知らなかった……そうだったのか。面白いな」
鼻歌を再開し、楽しげに歌い続ける。
「もう少し近づいて~」
作業が終わると、マサは近くの枯れ木の枝を寄せ集め、地面に丁寧に積み上げた。
枝を三角錐に組み、隙間に細かい枯れ葉を詰め込んで火付きを良くする。
満足げに頷き、右手を軽く翳した。
魔力を掌に集めていく。
チリチリ……と赤い火花が指先で散り、小さな熱が掌を温めた。
「ファイア!」
ポンッ!
掌から小さな火球が飛び出し、優しい弧を描いて枝の根元に命中した。
パチパチパチッ!
瞬時に赤い炎が枝を舐め、乾いた木々が勢いよく燃え上がった。
火の粉がチラチラと舞い上がり、朝の冷たい空気に暖かなオレンジの光が広がっていく。
マサはさらに枯れ枝を数本足し、火を整えた。
炎が安定すると、穏やかな熱が辺りを包み始めた。
「よし、これでいけるな」
彼は串に刺した魔獣の肉を火にかざした。
ジュージュー……!
脂が滴り落ち、炎に触れるたびパチッと弾け、甘い煙が立ち上った。
肉の表面がこんがりと黄金色に変わり、香ばしい匂いが一気に辺りに広がる。
焦げた脂と薪の煙が混じり合い、鼻腔を強くくすぐった。




