10章 デスゲーム・リターンズ(Ⅳ・堂島剛)
◇
堂島剛
俺が先に押してやる。
自分の席に戻りながら、そう思っていた。
達也に言われたから、じゃない。
俺が判断した。だから俺が動く。それだけのことだ。
さっき、この場が始まったとき、達也からメッセージが送られてきた。
>>>兄さん、お願いがあります
達也がテーブルの下で、人知れず打って送ってきたものだった。
>>>光にボタンを押させてください。押そうとしないなら、兄さんが先に押して、それで光を動かしてください。そうすれば、場が動きます
なんで光に、とは思ったが、理由は後から聞けばいい。
達也の言うことはいつも正しい。
どんなゲームでも勝ち筋を見つける。子供の頃からそうだった。
俺は、達也に頼まれたから押すってわけじゃない。
達也は勝ち筋は見つけられる頭はあっても、力がない。
昔からひ弱な弟だった。
そういうときは俺が先陣を切る。兄貴の俺が道を開けてやる。
それで場が動くから、やる。
思えば妙子もそうだった。
妙子をねじ伏せて、爺さんところに送ったのも、俺だからできたことだ。
あの肉付きのいい体は、よかった。
この場が終わったら、久しぶりに抱いてやるか。
俺がいないと、この場も動かない。
なら、弟を助けてやるのは兄貴の役目だ。
箱を開けた。
青いボタンが入っていた。
達也のメッセージの最後にあった。
>>>「兄さんのボタンは安全です」
達也が言うなら間違いない。
光を見た。
光は箱の前で真っ青になって固まっていた。
情けない奴だ。
本当の孫のくせに、こんなところでぐずぐずしやがって。
俺が動いてやる。
さあ、お前も動け。
◇
剛は深く息を吸った。
箱に手を置いて……ボタンを押した。
何も起きなかった。
剛は唇の片端を持ち上げて、笑った。
「ほら。こんなもんだ」
光を見た。光はまだ固まっていた。
「俺は押した。次はお前だ」




