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ぽっくりボタン  作者: 瀬川雅峰


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10章 デスゲーム・リターンズ(Ⅳ・堂島剛)



堂島剛


 俺が先に押してやる。


 自分の席に戻りながら、そう思っていた。

 達也に言われたから、じゃない。


 俺が判断した。だから俺が動く。それだけのことだ。


 さっき、この場が始まったとき、達也からメッセージが送られてきた。


>>>兄さん、お願いがあります


 達也がテーブルの下で、人知れず打って送ってきたものだった。


>>>光にボタンを押させてください。押そうとしないなら、兄さんが先に押して、それで光を動かしてください。そうすれば、場が動きます


 なんで光に、とは思ったが、理由は後から聞けばいい。

 達也の言うことはいつも正しい。

 どんなゲームでも勝ち筋を見つける。子供の頃からそうだった。


 俺は、達也に頼まれたから押すってわけじゃない。

 達也は勝ち筋は見つけられる頭はあっても、力がない。

 昔からひ弱な弟だった。

 

 そういうときは俺が先陣を切る。兄貴の俺が道を開けてやる。

 それで場が動くから、やる。


 思えば妙子もそうだった。

 妙子をねじ伏せて、爺さんところに送ったのも、俺だからできたことだ。

 あの肉付きのいい体は、よかった。

 この場が終わったら、久しぶりに抱いてやるか。


 俺がいないと、この場も動かない。

 なら、弟を助けてやるのは兄貴の役目だ。


 箱を開けた。

 青いボタンが入っていた。


 達也のメッセージの最後にあった。


>>>「兄さんのボタンは安全です」


 達也が言うなら間違いない。



 光を見た。

 光は箱の前で真っ青になって固まっていた。

 

 情けない奴だ。


 本当の孫のくせに、こんなところでぐずぐずしやがって。

 俺が動いてやる。


 さあ、お前も動け。



 剛は深く息を吸った。

 箱に手を置いて……ボタンを押した。


 何も起きなかった。


 剛は唇の片端を持ち上げて、笑った。

「ほら。こんなもんだ」

 光を見た。光はまだ固まっていた。

「俺は押した。次はお前だ」


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