9話 「秘密基地は大胆に」
岩場で魚用の罠を仕掛けた後も、
二人の散策は続いていた。
ポテチが岩陰を覗き込みながら声をかける。
「なあ」
「ん?どうした」
「こういう所ってさ、
生き物が隠れてたりするんだよな」
「するな」
「ここにも仕掛けてみない?
蛸壺とか」
「いいけど、
俺のペットボトルじゃ難しいかもな」
コーラが岩陰を覗き込む。
「お前の袋ってさ、
口を動かないように固定できない?」
「えっ、やってみる」
ポテチが念じながら袋を弄る。
しばらくして、
そのままコーラへ渡した。
「なんで俺に渡すのよ」
「振ったり押したりして、
固定されてるか確かめて」
「自分でやれよ」
「俺がやったら途中で変化するかもしれない」
「ああ、なるほど。
俺の時もそうだった。」
コーラが袋を引っ張ったり、
軽く振ったりする。
「おっ、出来てるんじゃないか?」
「マジ?」
「袋の中は暗いし、
入り口を狭くすれば蛸壺っぽくなるな」
「おおっ、魚より先にタコが入るかも」
「それはそれで当たりだな」
そう言って、
コーラは袋を返した。
「そういや、朝方言ってた事なんだけどさ」
「ん?なんの話だっけ」
「同時に何個出せるかってやつ」
「ああ、それか」
コーラが少し考える。
「さっき出したのは三十個くらいだったかな」
「そうか」
ポテチが頷く。
「じゃあ袋を百個準備するか」
「待て待て待て」
コーラが慌てて止める。
「なんでだよ」
「そんなにいらねぇよ」
「多い方が取れるだろ?」
「回収するの誰だと思ってる」
「あっ」
「今気付いたのかよ」
呆れながらため息をつく。
「五か所くらいでいい。
一か所六個程度だな」
「三十個か」
「さっきと同じ数だな」
「つまり俺は正しかった」
「もう、それでいいよ。」
結局、ポテチの暴走を止めながら、
仕掛け作りは無事完了した。
「しかし、日差しが強いな。」
「そうだな、日陰がないからな。
仕掛けも落ちついたし、戻るか。」
「途中の魚も見ようぜ。」
帰りながら、
ペットボトルの様子を見る。
まだ海水はひいてないが、
魚は入っているようだ。
「これで魚が食えるな。」
「いや、食えないぞ」
「えっ?なんでだよ!」
「捌く道具もないし、火もない。
調理ができないんだよ。」
「まじかぁ、残念」
「魚がとれるって事実だけでも成果だから、
落ち込むなよ。水も見てみようぜ。」
コーラがポテチを誘導する。
水の設置場所に行くと、
袋やペットボトルの蓋に水の粒で
中が覗けない位に出来ていた。
「これ、出来てるよな?」
「出来てるな」
「飲んでいいか?」
「駄目だ、コーラでも飲んどけ。」
「なんで駄目なんだよ!」
コーラを飲みながらポテチが抗議する。
「今は穴の中が温まって、
水が出来やすい状態なんだ。
一度開けると、水が出来るのに時間がかかる。」
「どういうことだ?」
「冷蔵庫も何度も開けると、
冷えにくいってのと同じなの。とにかく駄目だ。」
「そうだ、なら、
今度は俺たちの拠点を作らないか?どうだ」
納得していないだろうと思ったコーラは、
楽しそうな提案をしてみる。
「秘密基地か。作る、作る!」
さっきまでの不満が嘘みたいに、
目をキラキラと輝かせていた。
「なら、早速だけど、どこに拠点を作る?」
「そうだなー。砂浜は味気ないし、
崖の近くとか草原がいいな」
「まずは場所探しか。
あんまり遠いと、
水や魚の仕掛け場所を見失うからな。
あくまで近場だぞ」
「わかった。実は当てがあるんだ」
「いつの間に?」
「海に入ってた時にな。
砂浜からじゃ分からなかったけど、
遠くから見ると崖っぽい場所があった」
「うおっ、マジか!遠いのか?」
「いや、結構近いぞ」
「じゃあ案内してくれ」
「よし、行こうぜ」
得意げなポテチの後ろを、
コーラが付いていく。
「おお……」
あまりの見事な岩壁に思わずコーラが絶句する。
「おっ?良かった。ここでいいか。」
「めちゃくちゃいいぞ。」
近くにあった枝を手に取り、土に線を引く。
「この線を目印にダンボールを積み上げよう。
昨日のロボ足の感覚でな。
厚みは50センチは欲しい。」
「わかった。高さは?」
「積み上げたダンボールの上に
お前の透明な袋を被せたい。
3m位の高さなら見栄えが良さそうかな。」
「やって見よう。ただ、
まず 入り口から作らないか?」
「そっちがやりやすいか。」
雨が入り込むのを防ぐ為、
入り口は80センチほどのトンネルの様な形にする。
「よし、後は周りだな。」
2人で手分けして3m程のダンボールで囲む。
「最後に天蓋だ。」
「天蓋って何だ?」
「透明な袋の天井って覚えとけ。
さあ、30m程になるが、作れるか?」
袋を取り出し、みるみる内にでかくなる。
「いい感じだ。後は水を仕掛けた時にやったようにダンボールで挟み込もう。」
2人で作業するが、綺麗に張れず、
少し浮いているようだった。
「あれ?不恰好だな。」
「何言ってんだ。仕上げはお前がやるんだよ!」
「えっ、俺?」
コーラがポテチに浮いて部分を
締めるように指示する。
「出来た。」
「出来たな。早速中を見ようぜ。」
中からの景色を2人で確認する。
「どうだ?」
「外で見た時も思ったけど味気ない。」
「まあ、外も隠れ家みたいだったしな。」
「アイデアってのは試してこそだ。
気になるならまた作り直せばいい。
それより上をみろよ!」
コーラが腕を天へと指すと、
立派な空の空間が見える。
「すげえ気がするけど、何もない。」
「何が足りない?言ってみろよ。」
試すつもりはなく、内装をどうするかをポテチの感を頼りにしてのことだった。
「そうだな、外の空間って感じだから、
植物が欲しいな。
あと水槽。
座布団もいいな。
それから柱!」
「柱はすぐには無理だぞ!」
「なんでだよ!」
「2人では運べない」
「そっかあ。」
少し残念そうに肩を落とす。
「まあ、出来ることからだな。」
「まず植物探そうぜ。」
「水槽は?」
「お前、先に海水だけ運びたい?」
「うん、植物からだな!」
すぐ近くには、
木や植物が十分にある。
コーラは、
運べる大きさには限度があることを、
改めてポテチへ伝えた。
「植物だけどさあ、
水槽の両側に置きたいんだよね」
「高さは?
俺たちくらいか?」
「それくらいかな。
水槽は八十センチくらいの土台に置いて、
深さは一メートルくらい欲しい」
「まあ、それくらいならいけるな」
「植物の回収はさ。
穴を掘って、
平らにしたペットボトルを差し込む。
それを一気に器の形にして、
根ごと持ち上げるんだ」
「なるほど」
「蓋の部分も厚くして、
崩れないようにするからな」
「わかった。
とにかく好きなの探せばいいんだな」
「重さも考えろよー」
「善処する!」
「全然信用できねぇ……」
コーラが苦笑する。
まだまだ、お気楽な拠点作りは続く。




