10話「インテリア対決」
「これどうだ?」
ポテチが指差した先には、
やたら大きな木があった。
「周りの蔦をインテリアにするのか?」
「いや、これ自体」
「却下だ。」
「まだ持てるか聞いてないぞ」
「それ以前に入らねぇ。」
「なら蔦だけかあ。」
「それも時間がかかるからまた今度な。」
コーラは周囲を見渡しながら、
軽く手を振った。
「とにかく二つ探せ。」
「二つ?」
「水槽の両側に置くんだろ。」
「あっ。」
「一個だけだと片側だけ豪華になるぞ。」
「確かに。」
ポテチは素直に頷く。
「じゃあ対になるやつ探そう。」
「重さも忘れるなよ。」
「善処する。」
「それさっきも聞いた。」
森の中は静かで、
木漏れ日が気持ちいい。
今日はいい天気だな。
そんなことを思っていると、
拠点の近くから声が聞こえた。
「ちょうどいいのがあるぞー!」
駆け寄ると、
そこには少し大きめの木が二本並んでいた。
「運ぶ手間も少ないし、
上出来じゃないか。少しデカいけど。」
「その分水槽大きくしようぜ!」
コーラはペットボトルを使い、
手際よく木を掘り出していく。
「慎重に行くぞ。せーの。」
重いながらも2本の木を運ぶ。
「この辺かな」
ポテチが地面を削り、
水槽の位置を示す。
それに合わせて、
コーラが形を作っていく。
「よし、出来たぞ」
「どうだ?」
当初の予定より水槽はかなり大きくなった。
それでも、
コーラは満足そうだった。
気付けば、
ポテチの姿が見当たらない。
「……あいつ、またいねぇし」
いつものことだと思いながらも、
ポテチを探しに外に出る。
「そういえばあいつ、
座布団が欲しいって言ってたな」
座布団でも出来れば戻ってくるだろう。
そう思ったコーラは、
拠点へ戻った。
床へ手を加え、
座敷のような場所を二か所作る。
「ペットボトルを使ったやつと、
ダンボールで作ったやつは、
どっちを気に入るかな」
「おーい!」
外から声が聞こえる。
どうやら、
かなり待ちくたびれていたらしい。
「今行く」
外へ出ると、
ポテチの足元には草や葉、
見たこともない植物まで並べられていた。
「これで、
どっちがいい座布団作れるかやろうぜ!」
やはり、
座布団の材料だった。
「なんだお前、
まだ作ってなかったのかよ」
「目の前で華麗な座布団さばきを
お見せしようと思ってね」
「はっ。目の前でやったら、
俺のセンスに目を奪われるぞ」
「ペットボトル風情が!」
「ふっ。バカなお前に、
ここの使い方をお見せしよう」
コーラは、
こめかみをトントンと叩く。
「脳だ。」
「場所くらい知ってるわ!」
それから、
もくもくと作品作りは続き、
それぞれ納得のいく物が完成する。
「触ってみろよ」
まずはコーラが、
ポテチの作った座布団へ手を伸ばした。
「おっ……」
ツルツルとした感触なのに、
不思議と草の柔らかさも感じる。
色合いも悪くない。
直感で生きているだけに、
肌触りに合った色を選んだのかもしれない。
「やるじゃないか」
「だろ?」
「次は俺のだ」
今度はポテチが、
コーラの作った座布団へ腰を下ろす。
「なんだこれ」
「お?柔らかい。
触り心地もすごくいい」
低反発のような感触は、
どうやらポテチの心を掴んだらしい。
「なあ、これ俺に使わせてくれよ」
「いいぜ」
コーラはあっさり頷く。
「俺もそっち気に入ったしな」
「マジか」
「それに――」
「それに?」
「自分で使ったら、
気付かないうちに変化しても怖いからな」
「あー、確かにな」
二人は顔を見合わせる。
そして笑いながら、
作った座布団を交換した。
座布団を拠点へ持ち帰り、
それぞれ気に入った場所へ置く。
少しの間、完成した拠点を眺めたり、
座り心地を確かめたりしていた。
そんな時間を過ごしているうちに、
海水から水への変換を試みてから、
かなりの時間が経っていた。
「なあ、
そろそろ水が出来たか確認しに行かないか?」
「ああ、そうだな。
行ってみるか」
空を見上げる。
太陽は高く昇り、
日差しも強い。
水の様子を確かめるには、
ちょうど良い時間帯だった。
砂浜の設置場所へ行くと、
袋の内側には大量の水滴が付いていた。
「おっ、思ったより出来てるな」
そのうちの一つを開けてみると、
器には五十ミリリットル以上の水が溜まっている。
「試しに飲んでいいか?」
「いいけど、ぬるいぞ。
喉が渇いてないならやめとけよ」
忠告するが、
ポテチは落ち着かない様子だ。
「わかったよ。全部飲むなよ。一口だけな」
待ってましたとばかりに、
ポテチは水を口へ運ぶ。
「味がしねえ。
しかもぬるい」
「そりゃそうだろ。
感動したけりゃ、水を冷やすか、
海水飲んでから飲めよ」
「わかった」
そう言うと、
ポテチは海水を汲みに行った。
「よし、もう一回」
海水を一口飲み、
続けて蒸留水を飲む。
だが、顔はずっとしかめっ面のままだった。
「結局しょっぱいまま」
「そりゃそうだろ」
「お前も飲んでみろよ!」
そう言って、
コーラへ海水を差し出す。
「いや、なんでそっちなんだよ」
「俺はした。
お前もやれよ」
「理不尽だな……」
仕方なく海水を飲み、
続けて蒸留水を口にする。
「……塩味しかしねぇ」
「だろ?」
なぜか得意げだった。
コーラは呆れながらため息をつく。
「水が出来ることは分かった。
まだ増えそうだから、
そのままにしておくぞ」
「おう」
このままでは、
ポテチが全部飲みかねない。
二人は実験成功ということにして、
水の回収を切り上げた。
海を眺めていると、
ポテチが口を開く。
「なあ、拠点作りって大体終わったよな?」
「ああ。お前があれでいいってんなら大丈夫だ」
「なら、海入らないか?
お前もまだ入ってないだろ?」
「そうだな。行くか」
二人は海へ向かった。
足がつかなくなる辺りまで泳ぎ、
島を見渡す。
「砂浜に岩場、拠点も見えるな。
ダンボールは目立たないけど」
「無人島って感じがするよな」
ポテチが明るく笑う。
「そうだな」
コーラも周囲を見渡した。
「そうだな。砂漠地帯とか、
見渡す限り森しかない場所だったら最悪だ」
「本当それ」
二人は笑い合う。
もっとも、
その中には笑う余裕すらない者もいたのだが、
二人は知るよしもない。
十分に島の周囲を確認した二人は、
砂浜へ戻った。
足についた砂も落ち、
一息つく。
それでもコーラは、
海水でべたつく肌が気になるようだった。
そんな様子を見て、
ポテチが思い出したように言う。
「そういや、
ゼロカロリーのコーラって
手がベトつかないらしいな」
「そうか」
コーラは少し考える。
「ならゼロカロリーのコーラで風呂作るか」
「は?」
「今ベタついてるし、
変わらないだろ」
「ははっ!
ばっかでぇー!」
ポテチは腹を抱えて笑う。
そんな時だった。
「……ん?」
どこからか、
音が聞こえた気がした。
「どうした?」
「いや、
今なんか聞こえなかったか?」
「そうか?」
「ちょっと見てくる」
「はいよー」
コーラは相変わらず、
肌のべたつきが気になるのか、
一緒には来なかった。
しばらくすると、
ポテチが慌ただしく戻ってきた。
「おーい!」
「どうした?」
「晩飯拾ったぞ!」
「は?」
そんな馬鹿な。
コーラは呆れながら後を追う。
ポテチに案内された先で、
その言葉の意味を理解した。
砂浜に一人、
少年が倒れていた。
見覚えのある制服。
間違いない。
クラスメイトだった。
しかも――。
かろうじて生きていた。




