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6話 『ポテチとコーラと遭難者』

「おーい!」


「晩飯拾ったぞぉー!」


「なんだってー……って、

人じゃねぇか!」


「やっぱりそうだよな。

とにかく運ぼう」


「いや、

どうやって?」


「なんか、

アカシックレコードってやつが、

教えてくれた」


「アカシックレコード?」


「うわっ、

なんか来た!」


「よし、

じゃあ運ぶぞ」


「だとしても、

道具が無いと運びにくいな」


「おーい。

意識ありますかぁー」


「……反応ないな」


「あっ、

そうだ」


そう言うと、

ポテチの袋を広げ始める。


すると、

袋はみるみる大きくなっていった。


「これで滑らせて運ぼうぜ」


「おぉー」


二人で、

重そうに身体を袋の上へ乗せる。


それぞれ腕を掴み、

ズルズルと引きずり始めた。


「……おっ、

結構楽だな」


「おう、

思ったよりいける」


そうして、

二人は拠点らしい場所まで運んでいった。


「涼しい所に置いとこう」


「そうだな……」


「起きるかな?」


「……まだ意識戻らないな」


「あっ」


「喉乾いてるんじゃない?

肌カッサカサ」


「それならさ、横向きにしようぜ」


「わかった。

水出来てるから、

持って来て」


「おう。

交換用の器もちょうだい」


そう言うと、

ペットボトルが、

さも当然のように二つへ割れる。


キャップ側だけが消え、

器の形になって残った。


「五個くらいな!」


器を受け取ると、

そのまま走っていく。 


「たっだいまー!

意識戻った?」


水を抱えながら聞く。


首を横へ振られ、

露骨に残念そうな顔をした。


「まずは、

口に水を含ませてみよう」


「わかった。

ポテチとコーラを流し込むのは、

駄目みたいだもんね」


そう言うと、

一滴ずつ慎重に口元へ運ぶ。


一滴ずつ運んでも、

渇きへ吸い込まれていくようだった。


潤うことなく、

消えていく。


「まだ、

口の中には入れるなよ」


その言葉に頷きながら、

ゆっくりと唇へ水を馴染ませていく。


「どう?」


「うーん、

ピクリともしない」


反応が無くても気にせず、

水を運んでいく。


「顔にも、

ちょっとかけてみるか」


鼻と口へ入らないよう気を付けながら、

少しずつ水を流す。


「うわっ、

水吸ってる」


思っていた以上に、

渇きが酷かった。


「このまま、

しばらく水かけてみよう」


「あくまでも、

慎重にな」


様子を見ながら、

肌を潤わせるように、

少しずつ水を馴染ませていく。


「次は、

また口に含ませよう」


一滴、

一滴、

ゆっくり入れていく。


「……喉が動かないな」


今度は、

額へ触れる。


首筋。


脇。


熱を確かめるように、

あちこちへ手を当てた。


「熱中症ではないな」


「そうだな。

自律神経刺激してみるか」


「冷たいコーラ出して」


そう言われると、

冷えたコーラを渡す。


パキッ。


プシュ――。


ゴクゴクゴク。


「おいおい……」


「かぁーっ、

うめぇ」


「嘘だろ?」


「いや、

冷えてるか確認したくて」


「びっくりするだろ。

貸せ、

俺も飲む」


そう言うと、

二人で一本を空にした。


「ふぅ、

うまい。

ていうか、

お前いきなり飲むなよ!」


「いやぁ、

一本しか出さなかったからさ。

飲む用かと」


「なんだそれ……」


「まあ、

気を取り直して。

ほら、

次五本」


「わかったよ」


そう言うと、

コーラを五本取り出す。


「仰向けにしよう」


体勢を変えさせ、

首元。


両脇。


足首へ、

それぞれ置いていく。


「熱中症の時と似てるけど、

あくまで刺激目的だからな。

様子はちゃんと見よう」


二人で、

じっと様子を見守った。


「ピクリともしないな」


「だな。

五本も出す必要なかったか」


首元だけ残し、

残りを外していく。


「もう一回横向きにして、

水入れよう」


「少し口に含ませたら、

俺らも休憩しようぜ。

そこまでヤバい感じでもないし」


「だな。」


「ただ、

水分不足なのは間違いないからな。」


焦らずやろう。


そんな空気のまま、

気の長い作業が続いていった。


「でもさ」


「ん?

どうした」


「なんで、

こいつあんな所で倒れてたんだ?」


「そーだなぁ……。」


「水分不足。 長時間移動。 疲労蓄積……」


「つまり?」


「遭難だな。」


「へぇー。そうなんだ」


気の抜けるような会話をしていると、

遭難者の身体が、

ようやくピクリと動いた。


「……今、

動いた?」


「ああ。

どうやらそうみたいだ」


移動に使った袋を広げ、

身体へ軽く被せる。


「首のコーラも、

もういらないな」


「とりあえず、

寝かせとこう」


様子を見ながら、

ポテチが口を開く。


「さっきの話だけどさ」


「おう、

いつのよ?」


「コーラの、

ゼロカロリーのやつ」


もう一命は取り留めた。


そう感じたのか、

二人の空気も少し緩み始めていた。


「ゼロカロリーなら、

手ベトつかないから、

風呂に出来るって話」


「あれ、

マジで出来るんだな!」


「そうだろ?

試してくれよ」


「…………」


二人同時に黙り込む。

そして、

視線が自然と、

ポテチ袋へ向いた。


「こいつで試すか」


「だな!」


どうやら、

決まったらしい。


「そろそろ、

また水回収するか。

今度は行って来てくれよ」


ポテチが、

コーラへ声をかける。


「わかった。

そろそろ日も落ちるだろうし、

頃合いだな」


「そういえば、

何ヶ所仕掛けたっけ?」


「八……。

いや、

九か十だったかな」


「おいおい。その倍は作ってるぞ!

だから二列にしようって、

言ったじゃん」


「そうだったっけ。

まあ、

とにかく頼むわ」


「一応言っとくけど、

そこにある水は飲むなよ。

出し過ぎたコーラ飲んどいてくれ」


「おう。

隣もまだ起きそうにないし、

ゆっくり飲んどくわ」


ポテチは、

言葉通りリラックスした様子で過ごし始める。


「なかなか起きないけど

喉は動いたみたいだし、

後は待つだけか」


だけど・・・」


と、倒れたまま、あまりの反応のなさに、 ついそわそわしてしまうようだ。


「こうも、動かないと、ちょっかいかけたくなるな。無理矢理起こしたら駄目なのはわかってるんだけど。」


外を見て、気を紛らす。


「遅いな」


実際はそんなに時間はたっていない。


気になって仕方がないだけのようだ。


「ただいま」


「おかえり!」

声が弾む。


さっきまで落ち着いたふりをしていたのが嘘みたいだった。


「遅かったな」


「まだそんなに経ってないでしょ……って、あれ?」


戻ってきた相手も、倒れたままの姿に気づく。

「まだ起きてないか。」


「喉は動いた。大丈夫そうだけど、

全く動かないから暇なんだよな。」


そう言いながらも、

視線はちらちらと倒れている方へ向いてしまう。


「……で?」


「で?」


「絶対、何かしようとしてた顔してる」


「してない」


即答だった。

しかし数秒後。


「ちょっとだけ、

ほっぺつつくくらいならセーフかなって、

やってないけどね。」


「アウト寄りだろ。」


「半分くらいセーフじゃない?」


誤魔化す様に話している間に

ぴくり、と指先が動いた。


「あ」


「お?」


二人同時に身を乗り出す。


今度は肩が小さく揺れ、ゆっくりと瞼が動いた。


2人の視線を感じながら、ついに目を覚ました。







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