↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが使えないアカシックレコード ~規格外のクラスメイトたちに命乞いして無人島を生き抜きます~  作者: クレハ コウヨウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/47

46話 「カラオケちゃんその三」

「おーい、どこまで行く気だぁ?」


何も言わずに移動を始めたコーラに、大声で確認する。


「とりあえず限界まで行ってくるわ。音楽は鳴らしといてくれよ!」


瞬く間に夜空へと消えて行く。

まるで筋斗雲にでも乗って行ったかのようだ。


「……行っちゃったね」


カラオケちゃんが、コーラが進んだ先を見上げながらつぶやく。


「いつものことだな」


「いつもならお前の方が動くんだけどな。」


動かない理由はわかっている。

カラオケの本体に興味を持ってかれているんだ。


「まあ、スピーカーの距離はコーラに任せて、俺達は歌ってようぜ。」


ほら、来た。

歌いたくてしょうがないだけだろ?

……ただ決め付けもよくない。一応聞いてみよう。


「歌うことがどんな実験になるんだい?」


「別に何もないけど?」

と、ポテチはキョトンとした顔で受け答える。


カラオケちゃんは、思わず“ぷっ”と吹き出すように笑い、口を押さえる。


「はいっ。一曲どうぞ。」


にこやかにタッチパネル式のリモコンをポテチに差し出す。


リモコンを受け取り、目を輝かせる。非常に興奮して嬉しそうだ。

こいつにしてみればずっとおあずけ状態だからこんなものか。

……さて、一曲と言われてるのに何曲一気に入れるかな?


絶対何曲も入れる。

そう予想していたが、なかなか選ばない。

“うーん、これもいいな”“これ好きなんだよな”と声を出しながら、楽しそうに選び続ける。


「うーん、悩むなぁ」

ここで腕を組み、考え始めるポテチ。


「俺、お前がサクッと何曲も入れると思ってたよ。」


「そんなことするわけないだろ!楽しく歌うのがカラオケ。一曲と言われたら一曲だろ!」


「おおっ、そうかすまんな。」


本気と言える真剣さは初めて見るかもしれない。

お前にとってカラオケってそんな立ち位置で、重要だったんだな。

だが、このままじゃ埒があかない。仕方ないので、提案してみる。


「じゃあさ、今、一番歌いたい曲はどれなんだ?」


「それが……、ドンドン出てくる。」


「最初に歌いたいって思ったやつは?」


「今はもうその気分じゃない。」


これ……本当に選びそうにないわ。

こんなとき、コーラならあいつが曲を選んでこれを歌えよってするんだろうな。


……だったらそう誘導するか。


「選べないのはわかったからさ、いつも最初に歌ってる曲にしてスッキリとしたら?」


「うーん、それも考えたんだけどさ……。」


「最初に歌う曲って名刺みたいなもんだろ?ノリと雰囲気もわかるし、そうしてみていいと思うぞ。」


「うん、いつも歌う曲。きいてみたい。」


悩むポテチに、カラオケちゃんが後押ししてくれる。


「わかった。そうする。」


決めたら、その後の行動は本当に早い。


瞬く間に曲を入れ、マイクを握る。

ポテチ袋を台代わりにして、片足を乗せて周りを見渡す。


「カラオケちゃん、ライトって出せる?」


「うん、出せるよ」


「なら、4つ頂戴」


4つのライトを出してもらうと、2つには色付きのポテチ袋を被せて紫色にし、ポテチに向ける。


残る2つは、いつの間にか作っていたミラーボールに当てた。


……マジこいつ、行動早いわ。


イントロが流れる。ポテチはすでに、すっかりステージの空気を作り上げていた。


「カッコいいぞー! ポテチー!」


右腕を振り上げ、リズムに合わせて何度か突き上げる。

口笛は吹けないからね……。


「まだ、歌ってないのに。」

と、カラオケちゃんが笑う。


鮮やかな紫色のライトと、

ミラーボールが特別感を演出していた。


この演出がカラオケちゃんには新鮮なのだろう。

カラオケボックスでは、こんなことにはまずならないし……。

だからこそ、歌が始まる前から盛り上がっている姿を見て、笑っているのかもしれない。


そして、いよいよ歌い始める直前。

「いくぞー!」

と、ポテチが叫ぶ。


ほぼ同時に後ろから、破裂音がこだまする。

……いつの間に仕込んだんだ?


ただ、雰囲気は確かに出ている。


歌い始めたポテチは先程までとは違い、

伸びやかに声を通す。


海岸に向けて歌うなんて、まずないだろう。


手拍子やかけ声なんて、歌い手の好みもあるから一旦大人しく座って聴くことにした。


カラオケちゃんはミラーボールに興味津々の様だ。

パーティールームとか割と大きめな部屋じゃないとないだろうし、見ることがあまりないのかもな。


すると、ポテチから目線を送られる。

見返すと、ポテチは指先をくいくいと動かしている。

カモンカモン……ね。


両腕を脇につけ、腰を振ってみる。


指は動き続ける。


今度は両腕を上げ、リズムに合わせて軽く前後に振ってみる。

まだまだ指は動き続け、盛り上げろと合図していた。


仕方ない。もうやけだ。

「ポテチー! いいぞー!」

試しに声を張り上げてみる。


すると、ポテチが満足そうにうなずいた。

……最初からそれを求めてたのか。


だったら耳に手を当てやがれ。


ついにサビに入ると、

「ポテチ君ー。」

と黄色い声援が飛び込んでくる。


リズムに合わせて腕を振るカラオケちゃんを見て、ポテチはとても嬉しそうだ。


とても嬉しそうだ!


俺の時と反応が違いすぎじゃないかよ。

そりゃ、そうだが、そりゃないぜ。


声援を送るのは一旦やめ、腕を振って盛り上がりを維持する。

雑音になりたくはないからね。


終始上機嫌のまま、曲が終わった。

最後にマイクを突き上げてポーズをつけるポテチ。


ここはもう叫んで大丈夫だろう。

「いいぞ!ポテチー!」


「サイコー!」

とカラオケちゃんも続く。


ひとしきり拍手と声援を受け取ると、拳を下ろし、こちらに一礼する。


ここでカラオケちゃんと二人で大きな拍手を送り、

ポテチは満足そうにうなずいた。


だが……あいつはマイクを手放さなかった。


それどころか、マイクを通して感想を聞いてくる。


……余韻に浸りすぎだろ。


「まあ、良かったんじゃないか?」


「おいおい、ちゃんと聴いていたか?海岸に広がる俺の美声を!」


「聴いていたさ。だがな?ここにコーラがいたら、ん?ああっ、次は俺の番か。って言うぞ。」


「あいつならそういう。」


「なんでここでコーラ君……。」


「ヘェー、クシュン!」


と、カラオケちゃんが発言したタイミングで、空からコーラのくしゃみが聞こえた。


こちらまで戻ってくると、コーラは開口一番。


「ステージ作ってんじゃねえよ、なんだあのミラーボールは?遠くからでも目立つわ!」


空からでもそう思うのなら、妥当なツッコミだな。

感想会は強制的に終わり、実験結果を聞くことになった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。