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俺だけが使えないアカシックレコード ~規格外のクラスメイトたちに命乞いして無人島を生き抜きます~  作者: クレハ コウヨウ


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44話 「カラオケちゃんその一」

曲が終わり、静けさを感じる。


出ていくタイミングとしてはいい状態だった。


女の子はちょうど休憩に入ったらしく、いつの間にかあるソファーに座る。


我々三人は明るく、正面に見えるであろう位置から近づき始める。


そろそろ気づくかも。そう思える距離まで行くと、不意に女の子は向きを変える。


「あれっ、正面じゃなくなった。」


想定外だったのか、ポテチがこちらを見る。


「仕方ない。もう一度正面まで行こう。」


三人で少し離れた場所まで移動し、改めて近づく。


これくらいならいいだろう。


そう思って近づこうとすると、今度は飲み物を取るために、また向きを変えた。


「タイミングが良くないな。」


「そうだな。まあ、もう一度だ。」


ポテチとコーラは、あまり気にせず場所を移動する。


「よし、今度こそだな!」

意気揚々とポテチが前に出る。


……やはり、向きを変えた。


「これ、気づかれてるよな?」


「気づいているな。」


「そうか、なら声をかけていいな。」


「ちょっと待て、ポテチ。話しかけるのか!」


「なんだよ。気づいたら声かけだろ? お前がそう言ったんじゃないか!」


「……。」


確かに……。そうだよな。


「気づいているなら、気を遣いすぎてもよくないかもな。」


「そうだろ! おーーい!」


大きく手を振って近づくポテチ。

それに続いて歩き始める。


普通に話せる距離まで近づいただろうか。


そう思ったタイミングで、女の子が小さく手を振り返してきた。


「よし、いいな?」

ポテチがこちらに確認するように言う。


「こんばんは。」


女の子は少し会釈した後、


「こんばんは。」

と返してくれる。


続いて、自分とコーラも挨拶をした。


この後どうするかと考えていると、こちらが何か言うより先に、


「どうぞ、座って。」

と、ソファーに座るよう勧めてくれた。


「では、失礼して。」

そう言いながら、座らせてもらう。


ポテチとコーラも礼を言いながら座るが、ポテチは座った瞬間からマイクとカラオケ台を交互に見始めた。


「ふふふっ。」


女の子が笑う。


「うちのポテチがすみません。」


女の子はさらに、口元に手を添えて笑った。


「ポテチが名前なの?」


「ああ、そうなんだ。俺の名前はポテチ。右にいるのがコーラ。左にいるのは遭難者って名前だ。」


「遭難者は仮だからな、仮の名前。」


お近づきの印にと、ポテチとコーラをそれぞれ出す。


「ポテチとコーラを出せるからこの名前なんだよ。」


とポテチが説明する。


女の子はポテチとコーラを口にするものの、あまり反応は良くなさそうだった。


あれ?おかしいなと思いながら、出したポテチをつまむ生産者のポテチ。


「うん、美味いな。」

と黙々と食べる。


「よかったら口直しに。」

女の子はチョコがかかった細長い棒のお菓子を取り出した。


「うん、美味い。ポテチと相性がいいな。」


……お前が堪能するなよ。

でも、この子。飲み物も出せるみたいだし、カラオケボックスが持って来た物なのかな。


どうやって彼女のことを聞くか迷ってはいたが、急に能力のことを聞くのも変だし、当たり障りのない所から聞くことにする。


「なんで夜の海岸で歌ってたの?」


「実は練習してて……。」


「そうなんだ、なんで練習してたんだ?」


今度はいつの間にか出して貰っているポップコーンを食べながら、ポテチが聞く。


「友達とカラオケに行く約束してて、それで今のままだと恥ずかしいから……。」


なるほど。夜の海岸での部分は答えてもらってはないが、なるほど。


「その友達ってこの無人島にいるの?」


「わからない。」


「そうか、その友達がこの無人島にいるか調べる方法はあるけど、調べてみる?無人島にいない可能性もあるけど。」


基本、グループは同じ場所に降り立っているようだから、おそらくは無人島には来てはいないだろう。


見る限りこの子は一人でも、アカシックレコードなしでも生きていけそうだけどね。


「うん、知っておきたい。」


「そんなことまでわかるんだな」

ポテチがメロンジュースを飲みながら感心する。


……流石にそれはおかしいだろうよ、ポテチ。

それはワザとなのか?と尋ねたかったが、スルーして女の子と話す。


「実は、無人島に持っていくならどれにする?ってことで知識を選んだんだけど……。」


「お前だけ使えないやつな。」

と、少しコーラがニヤつく。


「それを使ったらわかると思うんだ。アカシックレコードって言ったら使えるはず。」


「なんで、言いにくそうにしてんだ?」


……ポテチ、お前なかなか鋭いな。


「これだけ色々できる子だ。アカシックレコードがなくても充分生きていける。逆に、知識を得ることで不安が出たりしないかを気にしてるんだよ。余計なお世話なら怖いことなんだ。」


「薬にも毒にもなるってことだな。」


「ふーん。」


「それって、どんなことがわかるの?」


「俺もしりたい。」


興味津々にポテチとコーラを見る。


「色々できるぞ!」


「だからそれを知りたいんだよ。」


「基本としてはやりたいと思ったら身体が反応してくれるってやつかな。」

と、コーラが口を開く。


「聞こうとして考えたら知識が出たりするな。」


「ただ、自分が理解できないと認識できないこともある。」


「それってさ。実現補助の機能に関係してる?」


……前に認識できないって言ってたことがあって、気になってた。もしかしたら脳のパンク防止が働いてるのかもしれない。


「……ああ。それもあるみたいだな、簡潔化って側面もある。」


「映画も観れるぞ!」


「そうなのか?おおっ!俺とお前とで同じのを同時に見れるぞ。」


「おっ、どれどれ?」


急に2人で盛り上がり始める。


「こんなのはどうさ?」


「お前が観たがってたやつじゃん。」


「へえっー、こんな使い方もあるのか。」


「今度やってみようぜ!」


映画の話をしているのか、新しいアカシックレコードの使い方で興奮してるのかはよくわからない。

だが、完全に2人の世界が出来上がっているな。


それを見た女の子はウズウズとし始め……。


「なんか、楽しそう。」

だが、二人は気づかない。


「いいなあ……。」


2人を見る眼差しが変わっていく。


そしてついに……。


「あ……アカシックレコード!」


と飛び込むかのように叫ぶ。


そのまま、私も入れてとばかりにポテチとコーラの会話に加わった。


時折、笑顔や笑い声が出る。

少し興奮気味で、なのに穏やかで……。


使えない俺は、完全に蚊帳の外だった。



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