41話 「何故か先出しされる」
タコの燻製の出来栄えが良かったので、かまどに戻り、魚の燻製も食べてみようということになった。
「しっかり焼けば、食べられるぞ。」
「なら、一度味見しようぜ。」
「魚の燻製か、どんな味がするんだろうな。」
網で焼き始めると、燻製の香りと魚を焼いた匂いがいい具合に混じり、食欲をそそる。
しばらくすると、表面から脂が滲み出してきた。
ジュッ、と脂が落ちるたびに、小さな炎が上がる。
「そろそろ食べれるな。」
それぞれが箸を持ち、魚を網に置いたままつまんで食べる。
すると、まず燻製の香りが広がる。
身は少し締まっているが、噛むと魚の脂がじわりと出てくる。
「うん、燻製って感じだな。」
黙々と食べていると、ふとスダチや大根おろしが欲しくなってきた。
「……なんでだ?」
自然と疑問が口から出る。
「何がだよ。いきなり。」
「いや、スダチとか大根おろしが欲しいなと思って。」
「充分美味いだろ。」
「そういうんじゃないんだよな。」
自分でも理由がよく分からない。
ただ、食べ進めるほどに、何かが足りない気がしてくる。
「……ああ、たぶん魚に水分が欲しいんだ。」
燻製にしたことで水分が抜け、身も締まっている。
そこに脂が加わるから、食べ慣れた方法が欲しくなったんだろう。
「なるほどな。」
「大根なら、今度探してみるか。」
そんな話をしながら、最後の身まで食べてしまった。
……プシュ……プシュ。
「たいぶ、音が変わったな。」
「確かに、回転もこんなに遅くなるんだな。」
「水分がなくなったら、いよいよ砂糖の出来上がりが見れるぞ。早速氷水を準備するぞ。」
コーラはそう言って、“ドン”とデカいシャリシャリのコーラを出す。
「氷水じゃなくて、コーラじゃないか。」
「本物の氷もあるけど、あっちの方が数が少ないからな、まあいいだろ。」
塩を混ぜて、温度を下げながら言う。
その上に新しい鍋を置いて、冷やす。
どうやら移し替える様だ。
そうしている間についに、鍋とヘラの回転が止まろうとしていた。
プシュ……プシュシュ……プププシュ……。
横に少ししか動けず、身悶える様に縦に動いてるかにも見える。
「よし、もういいだろう。」
コーラはいつものごとくペットボトルを器用に動かし、コーラ氷水にある鍋に移し替える。
「結構な量が残るな。」
トロミがありすぎて、鍋から全てを移せなそうだった。
「まあ、見てろよ。」
みるみる内に鍋が小さくなる。
勢いよく、新しい鍋に汁が落ちていく。
勢いがなくならない様にその都度鍋も更に縮んでいく。
「器用なもんだな。」
「なんとなくで出来るからな。」
移し替えが終わると、新しい鍋の中にミキサーの様な物が出現する。
この部分はポテチが作ったようだ。
その上に回る為の装置があるのだろう。
装置の横に回転ペダルがあった。
「早速回してくれ。」
2人からの視線を浴び、そうだよねと思いながら回転ペダルをぐるぐると回す。
「あんまり重くないな。」
「抵抗力を感じない様にこだわったからな。」
ポテチにも満足な出来栄えだったみたいだ。
「いいぞ、遭難者。どんどん冷えていってる。」
コーラ氷水が溶けたのだろう。
一度容器をかえて、新しい物を用意していた。
数分回していると、ポテチとコーラが反応する。
「そろそろだぞ。」
鍋が見える位置で回し続けた方がいいぞと言われ、顔を少し鍋に近づける。
……すると、
バキバキッバキ。
音と共に一瞬で塊が出現する。
「えっ、何これ。」
「臨界結晶成長ってやつだな。」
「臨界転移とも言うぞ。」
まあとにかくまだ回せとのことだったのでしばらく回すことにした。
「さて、そろそろ準備するか。圧縮機、濾過機と作ったから次は遠心分離機だな。」
サクッと、またドラム缶みたいなのが出現する。
下には受け皿がある。
「遭難者、もういいぞ。」
これ以上は固まらないらしく、いつもの様にペットボトルで鍋を移動させる。遠心分離機に全てを中に入れる。
今日はとてもよく見る回転ペダルもある。何故か今回は、海賊物でよく見る舵輪みたいな形だった。
「さあ、一気に回すぞ!」
3人で勢いよく回す。
しかし、中から音は聞こえない。
「これ、中はどうなっているんだ?」
あまりの静けさが気になり聞いてみる。
どうやら洗濯機の様になっているらしい。
ふと、下を見ると黒い液体が流れて来た。
「なんで黒いんだ?」
「うーん。反射がなくなったからだな。色が変わったわけじゃないぞ。」
「そうか。」
しばらく回すと液体は出なくなった。
ドラム缶から砂糖を取り出す。
出てきたのはほんのりクリーム色をした塊だった。
「真っ白ってわけではないんだな。」
「まあ、不純物が少し残ってるのと、ミネラルとかもあるからな。白くするならお湯に溶かしてもう一度だ。」
「長いな。」
「手間ではないぞ?」
と、コーラはニヤリと笑う。
するとポテチが、
「今からラム酒を作ります!」
と言う。
「呑むの?」
あまりに堂々とするので、自然と声が出た。
「あれば何かと便利。」
「作れるから作っておこうってな。」
……あ、これ実験したいだけだわ。
と、ここでポテチがチラリと横を見る。
「おい、おい。マジかよ!」
目線の先には樽があった。
どうりで、拠点の改造が多くなかったんだな。
こいつ、これを作ってやがった。
「更にこれもある。」
ペットボトルに入れた少し白い液体を見せられる。
「なんだこれは?」
「酵母。……になる前のやつだ。数日後にこの黒い液体、モラセスと混ぜます。」
なら、この樽は?
「今日は使いません。」
なら何故見せた?
「なら、さっきもう一度砂糖を溶かして煮詰めるって言うのが手間じゃないってのは?何か同時作業するからOK的な意味じゃ……。」
「ないな。」
なら何故手間じゃないと言った?
「まあ、お湯と混ぜて、溶かす。濾過をして、煮詰める。ギリギリで取り出して冷やすってのをもう一度するだけさ。」
「手間じゃねえか!」
「まあまあ、コーラでも飲んで落ち着けよ。」
キンキンに冷えたコーラはうまかった。
「確かに落ち着くな。」
「もう一度煮詰めて作った砂糖の方が質はいいし、残った液体もラム酒には出来るからぼちぼちやろうぜ。」
コーラはそう言うと、モラセスが入った受け皿をペットボトル状にして保管する。
「ポテチも食べてさ、一息ついて作業しようぜ。」
なんだかんだと動いていたのは確かだ。
少しだけゆっくりして、再度砂糖をお湯に溶かすことから始める。




