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俺だけが使えないアカシックレコード ~規格外のクラスメイトたちに命乞いして無人島を生き抜きます~  作者: クレハ コウヨウ


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37話 「お楽しみはかき氷」

「なあ、俺が使う浴槽ってこれだよな?」


目を開けると、アヒルちゃんが浮かんでいた。


「ああ、そうだぞ。」


「これおかしくないか?」


「おかしくないだろ。お前が寂しくない様に浮かせたアヒルちゃんだぞ!」

とポテチは言う。


「成鳥なんだが?」


「立派だろ?」


「すげえけど、嫌がらせ感が半端じゃない。」


普通はアヒルのヒナなはずだけどなと首をかしげつつ湯の中に入る。

背中を浴槽に預け、天を仰ぐ。

広がる青空を目にすると、思わず


「はあーーっ。」

と息が漏れる。


気がつくとアヒルを抱きかかえて、体全体を浮かせていた。


「なんだかんだで気に入ってるじゃん。」


「ああ、なんだかリラックスが出来るよ。」


身をゆだねて、全身が溶け込む感覚。

周りは青空が広がる。

強張った体がゆっくりとほどけていく。


アヒルちゃん。いい仕事するわ。


しばらく何も考えずにお湯につかる。

この空間・・・この雰囲気。

そして何より冷水で冷えた体が嘘のように温まる。

とても素晴らしい・・・。


数分間は目を閉じていただろうか。

浴槽が揺れた様な気がした。


気付かぬフリをして、目を閉じたまま桶に熱湯を汲み浴槽にたす。


“ふうっ”と息をつき、また背を委ねる。


今度は両側面から揺れを感じ始めた。


「水鉄砲で遊ぶなら2人だけでやってくれ。」


両手でお湯をすくい、顔を洗う。


「おい、遭難者。もっと反応しろよ。」


「嫌だよ。せっかくの風呂なんだから静かに入らせてくれ。」


揺れを気にすることなく、そのまま湯に浸かっていたが、何やらおかしな気配がした。


「何故回ってるんだ?」


どうやら浴槽を回せる仕様に変えていたらしい。

二箇所から水鉄砲の攻撃を受けることで、ゆっくりと動き始めていた。


それからどんどんと勢いを増していく。

時折、水鉄砲で熱湯を浴槽に送り込んでいる。


「熱湯を足すな!」


「ほらほら遭難者。回転が早くなるぞー。」


回転が増すたびに、体が温度と遠心力で暑くなっていく。


「のぼせる、のぼせる!」


たまらなくなって、勢いよく風呂から上がる。


「お前らなあ、もっとゆっくりさせろよ!」


「なんだ。もうあがるのか?」

「そうだぞ、お前が言う通りもっとゆっくりしとけよ。」


「湯から出ないといけない状態にしといてよくゆうよ。」


上体を後ろに逸らし、ノビをしていると、コーラからタオルらしき物を渡される。


ダンボールが素材の様だが、体に触れると面白い程に水を吸う。


「肌触りもいいし、めちゃくちゃ優れているな。」


「やっぱり気持ち良く風呂を出たいからな。使い心地を中心に作ってみた。」


確かにさっぱり感がある。

サンダルの様な物も渡され、風呂上がりには最適だった。


「さて、サトウキビはまだ完成してないけど、どうするポテチ?」


「使う分だけ取り出して、鍋に広げて一気に蒸発させてくれ。その間にこっちも準備する。」


コーラは湯を沸かしていたアルミ浴槽をどかし、空いた釜戸にアルミの鉄板をセットする。

そこへサトウキビの汁をコップ半分ほど流し込む。


ジュワァッ!と弾けるような快音とともに、猛烈な湯気が立ち上る。

両手にハンディファンを構えたコーラが、風を送りながら鉄板の上で汁が焦げ付かないよう、素早く手元をコントロールしていく。


ポテチは保冷しているボックスから氷の塊を取り出し、見たことがあるような機械に置く。


「なんか、かき氷機みたいだな。」


「その通り、かき氷機だ。まあ見てろよ。」


上部にあるペダルを回すと、ガリガリという特有の音はせず、サラサラキメの細かい氷が溢れ出てくる。


ダンボールとポテチ袋でなんでそんな高品質なものが出来上がるのか・・・。

もうそろそろ考えるのはやめた方がよさそうだ。


「一旦半分まで削ったぞ。そっちはどうだ。」


「今、冷やしてる。すぐにでもかけるから。」


シロップは2つに分けていて、充分に冷えた方を最初にかける。

その上にかき氷をさらに乗せて、よく見る形に仕上げる。


「よし、出来たな。後は各自まだ少し温かいシロップを追いがけして食べよう。」


まずは食べてみろよ。と言われ、スプーンですくう。

山盛りですくったはずなのに手ごたえとしての氷感がなく、なめらかで淡雪のようなきめ細かさで、食べる前から期待が膨らむ。


次にシロップをたらす。高濃度に煮詰められたそれは濃厚なキャラメルにも見え、明らかに特別感を放っている。

蜜を吸い込んでじんわりと黄金色に染まっていく光景は、それだけで息をのむほど美しかった。


早く食べろよ、という二人の視線に押され、一口、口に放り込む。


一瞬で溶ける食感と、強烈に残るキャラメル。

舌の上でトロリと解けた蜜から、大地の生命力を凝縮したような豊潤な香りが爆発し、鼻腔を抜けて脳髄にまで突き刺さる。


「うおっ! すげぇ。突き抜ける!」


風呂上がりの火照った身体に、冷たさと純粋な糖分が染み渡っていく。圧倒的な多幸感が、全身の細胞に呼び寄せられるようだった。


「ほうっ、そんなにかね。」


「確かにうまそうだ。」


2人もそれぞれ蜜をかけて、口に入れる。


すると2人とも手をとめた。


二人の反応など気にも留めず、ただ目の前のかき氷に夢中になっていた。


「ポテチ、これ凄い出来栄えだな。最高の削り方だよ! コーラもさ、2段構えの蜜が効いててめっちゃ美味いよ。」


そう言いながら2人を見ると、自分のかき氷はほとんど残っていなかったが、2人はほぼ手付かずだと気づく。


「どうした? 2人とも。」


よく見ると、目には涙が浮かんでいた。

動く気配もなさそうだった。


「・・・・・。えっと・・・代わりに食べようか?」


「大丈夫。食うよ!」


急ぐ様に食べ始めるポテチとコーラ。

何かを忘れようとしている様にも見えた。


「蜜・・・、かかってないぜ?」


無言で蜜をかけ、そのまま完食した。


逆に今度は自分の手が止まっていたせいで、氷が溶けかかっていたので、皿に口をつけて一気に流しこむ。


「あーっ、贅沢だな!」


立ち上がり、尻を2度パンパンと叩く。


「さあ、次はどうするか。」


「ああ、そうだな。」

とコーラは答える。


ポテチは少し考えて、

「ダンボールロボでも作るか!」

と提案をする。


「2人ともかき氷で冷えただろ?フリスビーでも作って運動でもしたら?」


「ダンボールロボでいいだろ。」


「そうだぞ、よしコーラ。手分けして作ろうぜ。」


サトウキビの汁を煮詰めながら、ダンボールロボを作ることになった。








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